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本当のオンリーワン

プルシェンコに憧れを抱く、黒髪サラサラヘアーの少年。

ジュニアの選手をチェックしていなかった自分は2010年秋、シニアに上がってきた時にスポーツニュースを介して彼を始めて知った。

「細長い体型は遠心力に負担がかからないから、ジャンプで回転しやすそうだなぁ。」

当時ふと自分の頭に浮かんだ何気ない第一印象。まさかこれが後に前人未到の4回転半に挑む世界初の人になるなんて、思いもよらなかった。

その時代は小柄でゴツゴツとしたスポーティな日本人選手が国を代表し、世界のトップたちと競い合っていた。

それだけに彼の体型は印象的で、その細さでは世界大会の前に日本代表枠に入るのすら苦労するだろうと勝手に心配していた。

ジュニアからシニアに上がると、演技時間が30秒増える。(フィギュアスケートはルール変更が頻繁に行われるので、あくまでも当時の話として。)シニア1年目の2010-2011シーズングランプリシリーズでは、彼の演技の内容よりも、後半に入って明らかにバテてつらそうだった記憶の方が強く残っている。

しかし、シーズンが一つ新しくなる度に持久力面を克服していき、その分難易度の高いジャンプや芸術性の高いステップを磨き上げる余裕を作り、2014年にアジア人初のオリンピックチャンピオンに輝いた。



それ以降も続く彼の輝かしい戦績とは裏腹に、自分にとって2018-2019シーズン以降の彼は、なんだか怖いという印象に変化していた。

なぜかと言うと、憧れのプルシェンコですら叶わなかった2大会連続オリンピックチャンピオンという偉業を成し遂げた後もなお彼が新しいこと、難しいことに挑戦し続けるモチベーションがどこから来ているのか、素人の自分には全く理解ができなかったからだ。

現役全盛期のプルシェンコを彷彿とさせる芸術性の高さと狂気の融合が異世界のレベルに到達していたのもこの頃だ。
(もっと前からだよ!と思う人もいるだろうが)

頻繁に怪我をするようになったのもこの頃。しかし怪我で試合を欠場するも、復帰戦で見事にメダルを獲る。

フィギュアスケートに限らず、怪我をして復帰しても、以前ほどの成績が出せないアスリートは幾多と見てきたが、彼は一体どう言う手術を受けたらそんなに最強になって帰ってこられるのか。

復帰戦を観るたびに、彼への謎は増していくばかりだった。


近年では、欠場して戦いの場に姿を現さない間の不透明感と、復帰して相変わらずプーさんに寄り添う姿や戦い終えた後の日本人らしい、丁寧で周囲を気遣う数々のエピソードとのギャップで、彼は本当のオンリーワンの存在なんだと思い知らされている。


東北、日本中、世界中にも、彼を支持し応援し続ける人が沢山いる。

プロのアスリートとなった後も、彼がどんな感情を抱かせてくれるのか、本当に楽しみだ。




テレビで遠目に見て細い身体に見えるので前半は特に細い細いと連呼してしまったが、実際は嘘みたいに筋骨隆々なのも彼の謎の一つだ。

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