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人類の進化にいざなわれる

 2002年9月、サミットが終わってヨハネスブルグから富山に帰った翌日は敬老の日の祝日だった。富山の街中の本屋にブラリとはいると、NHKブックスの新刊で西原克成著「内臓が生みだす心」が、僕を待っていた(かのように目に入ってきた)。迷わず買って帰り、その日のうちに読み終えた。書棚の本が命や意思をもっているのか、神様がそうさせるのか、僕は本に呼ばれたことが何度かあるが、この時もそうだった。

 西原先生は、進化の流れを単細胞生物までさかのぼって、単細胞生物から魚、魚から両生類、両生類から爬虫類、爬虫類から哺乳類という超ダイナミックな進化の流れとしてとらえ、そのなかにヒトを位置づけた。それが実に新鮮だった。僕はこの本のおかげで、ヒトの進化について考えるようになった。

 水曜日の夜、富山駅近くの喫茶ズッケ―ロで事前セミナーに関わったメンバーが集まっていた。僕は、11月に開かれる事後セミナーの講師に西原先生を推薦した。というのも、ヨハネスブルグまで行ってサミットに参加しても、地球環境問題の解決策は何も出なかったことに僕は悩み、西原先生の本に出会って、結局のところ、人間が人間になる前の生命記憶を活性化させて自分たちの行動を正すしかないと思ったからだ。翌々日の金曜日の朝、僕は、東京・六本木の西原研究所に飛び込んで西原先生に講師をお願いした。

 こうして11月9日に富山県八尾町の大長谷にある村上山荘で「いのちの記憶」ワークショップが開催された。西原克成先生は「生命記憶と生命エネルギー」という講演をしてくださった。内容をひと言でいうなら、「ヒトの体細胞は、5億年の生命進化を記憶している。進化の道筋を理解し、生命エネルギーを活性化すると、さらなる進化が生まれる。」という希望に満ちたものだった。

 僕が富山での仕事を終えて東京に戻ってからも、西原先生の新著が出るたびに、読書会「鷹揚の会」(1992年にパリで始まりロンドン、99年から東京)に来ていただき、みんなで先生の本を読んだ。そして、西原先生が読書会で口にした「ネオテニーは進化の袋小路」という言葉が気になり、はてな人力検索エンジンで質問をした。

 
ネオテニー(幼形成熟)は、進化の袋小路だといいます。人類の未来も、袋小路で、希望がないということでしょうか。ネオテニーと人類の未来を結びつけて論じているHPを紹介してください。(2005/05/29)

  
 ここで、島泰三先生の「はだかの起原」(2004年木楽舎、2018年講談社学術文庫)を紹介してもらい、すぐに池袋のジュンク堂で買って読んだ。その内容に衝撃を受け、何度も何度も繰り返し読んだ。一度ですべてを理解することはできず、参考文献を読み、鷹揚の会でも取り上げ、上野動物園にハダカデバネズミまで見に行き飼育係と話もさせてもらった。この本に書いてある知識を自分の中に取り込もうと必死だった。
  
 この本が私の人生を変えた。そして、人類の未来を変えるのもこの本かもしれない。

 (トップ画像は、2002年11月、雪の大長谷で「生命記憶と生命エネルギー」の講演中の西原克成博士。筆者は右から2人目でノートをとっている)

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