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日記 不可思議とは 2023.10.22

日記 2023.10.22
朝 岸上先生の法話を聞きに行く。すごい法話を聞いた。人間の深さというものを考えさせられる。
夜 読書会。今日も考えさせられた。
今日読んだ、
宮城顗先生の本『”このことひとつ”という歩み 唯信鈔に聞く』の中に忘れたくない文章があったのでメモしておきたい。


「無碍光」ということも、単に仏のうえの徳ではなくて、「衆生のうえに無碍の歩みを成就していく名なのだ」と、そういう意味が押さえされているということになります。
 『五会法事讃』の言葉のうえから言えば、「尊号そのものが十方世界に普く、流行する」と、それだけの意味ですが、それを親鸞聖人は、十方世界に普く流行するというのを、大小の聖人、善悪の凡夫皆共に、とこう押えされるわけです。その一切の存在は、大涅槃にいたる。その大涅槃の徳を大涅槃にいたった相を、不可思議光とか無碍光と、そういう言葉でたたえられている。そのように押さえられてくるかと思います。
 つまり、不可思議光の不可思議というのは、超自然のことを言っているわけではないですね。世にもめずらしい、考えられないようなことが実現したというようなことは、不可思議ではないのです。ここで言われる不可思議というのは、あたりまえにしていることに、不可思議を感じることです。端的に言えば、念仏において自分の存在の不可思議を知るのでしょう。
 鈴木章子さんの詩の中に、
今  
私が
主人が
子供達が
この茶の間で
しゃべり
笑っている
何千回とくり返された情景が
今 不思議で
あしたにでも
壊れてしまいそうで
だきしめたくなります(『癌告知のあとで』七七頁、探求社)
というのがあります。そういう、あることの不可思議さです。一番端的には、私が私としてあるということ、そのことに無限の不可思議を感じる。
 いうならば回心ということは、思いもかけない自分に出遇うということなのでしょう。思いもかけないような自分というものの誕生。自分は努力して何か思いもかけない、想像もできなかった人間になったというのではなくて、あたりまえにしていたことのなかに、あたりまえにしていたことの不思議さですね。ものあることの不可思議さです。無限の深み、無限の広がりを感じるのです。
 不可思議光仏とか無碍光仏とか、名号というと、何か仏の徳をたたえるもの、何か向こうにおられる仏だけの徳のように思うのですが、そうではないのです。つまり仏徳というのは、私のうえに不可思議を開く、不可思議なる世界を開くはたらきなのです。それを不可思議光仏と言うのでしょう。私のうえに不可思議なる世界を開くはたらきが、不可思議光仏です。私のうえに無碍なる歩みを成就するはたらきが、無碍光仏です。そういう意味が、この「十方世界普流行」の言葉に対する釈のつけ方のうえに感じるのです。
 『唯信鈔文意』において、この『五会法事讃』の言葉をとおして、親鸞聖人がそこに大きな展開を開いていかれているということがあります。今の、「十方世界普流行」という一句においても、偈文そのものから言えば、「その尊号が十方に、普く行きわたる」というだけのことです。そこに親鸞聖人は、
 大小の聖人、善悪の凡夫、みなともに、自力の智慧をもっては、大涅槃にいたることなければ、(聖典五四八頁)
という言葉を出してきておられるということが注意されるわけです。

宮城顗『このことひとつということ』
159-162頁

宮城先生、それから今日読書会に参加していた先生から教えられたのは、親鸞において不可思議というのは、あたりまえにしていることに不可思議を感じることであると。端的に言えば、念仏において自分の存在の不可思議を知るのであると。先生は、不思議に出会うというのは、私が「思議」(頭で考えてばっかり・思いの中で生きている)であると分かることだと言われた。そして、そのことに気づいたとき、そもそも、存在していること自体が思議を超えた存在、不可思議だとわかることなのだと。自分の存在に不可思議を感じられることが非常に大切なのである。私が私としてあることの無限の不思議を感じていく。それが宗教の場なのであろう。
これは、今日朝の法話で教えてもらった、安田理深先生の言葉にも通じるものである。

「自分だけ苦しみが無くなる、ということが宗教の問題ではない。苦しみを共にすると言うことが宗教の解脱なのです。安楽ということは、苦しみが無くなることではない。苦しみを共同する。共に苦しむという、そこにもう苦悩はないのです。そして、それが真に苦悩しておることなのです。
 問題が無くなることが信仰ではなく、問題に堪えていくのが信仰です。問題に堪える自己ですね。「現前の境遇に落在せるもの」(清沢満之)は、そういう意味がありますね。」

安田理深『信仰的実存』








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