「校則」についてー廃止が困難なものもある

最近、厳しすぎる校則について批判の声があります。

たしかに、やりすぎと思えるものもあります。
でも、全部校則をなくせばいいというわけではないと思っています。
教員のリソースが限られていたり、
多様な子供が来る以上はある程度は統一した基準が必要。
ただ、行き過ぎてはいけないけども。

今回はなぜ校則を現状で廃止できていないかについて書きたいと思います。
現状を理解できていなければ、廃止を進めることも難しいので。

すべての校則をなくすのは現状難しい

特に中学校や教育困難高校ではすべての校則をなくすことは難しいと考えます。
たとえば、制服をなくして私服にした場合、
*貧しい家庭などの子供への配慮
*服によっていじめが起こるリスク
*明らかに学校に適さない服を着てくる人が想定される(露出が激しいものや短ランなど)
などの問題が上がります。

服によるいじめというのは、
*リーダー格の〇〇と同じ服を着てきただろ→リーダー格のグループの逆鱗に触れていじめ
*ダサい服やボロい服を着てきた生徒に対するいじめ
*先輩による1年生の服への自主規制。反した生徒へのシバキアゲ
(僕らの時代でも、靴下が自由だった学校で「1年は白の靴下しかダメ」といったような自主規制があり、反すると先輩に目を付けられるという某学習教材の読者欄投稿があり、廃止すればそういうことが起こりうる)
などがあげられます。

女子がズボンを選べるなどのリベラルなデザインにした学校ですら、制服の廃止は検討したものの断念されています。

また、靴下ですら自由化した場合同様の問題が考えられます。
せいぜい黒や無地を認める程度でしょうか。

靴の場合は盗難のリスクが上がります。
筆者の出身中学校では入学する少し前に当時ブームだった高級スニーカーが盗まれたため、高い靴は禁止でした。

ただ、下着は派手過ぎなければ自由でいいと思うけど。

アメリカで校則が緩いのは、「罰則」があるから

髪型の校則の話で、よく比較対象に挙げられるのはアメリカです。
確かにアメリカはそういうところは自由。
でも、
*周囲に迷惑をかける問題行動を起こした生徒に対する罰則あり(一定期間の別室での指導など)
*学校によっては校内に警察が常駐している場合もあり、悪質なものは警察に突き出すことに躊躇がない
*改善が見られない問題児はやめさせることができる(不良専門校のようなところがあるらしい)
※州によっても異なる

という条件のもとに実現していることは無視できない。
問題行動を起こしても(義務教育では)学校をやめさせることができず、
警察に簡単に突き出せるわけでもない日本とは同列に見ることができない。
悪いことをしたら、最悪やめさせることができるという担保の元で校則を少なくできている。

(そのアメリカでもリュック禁止の校則がある学校もあるって話題になってたけど)

進学校で校則が緩いことが多いのは生徒の頭がいいから

校則が緩い進学校は多い。
これは基本的に頭のいい生徒を自由にさせても、
悪に走るような生徒が少ないから。
(いないわけではない。髪型、服装の乱れ→悪い組織に勧誘される→下級生を殺すという事件が90年代前半の地方の進学校であった)

普通の公立中学や教育困難高校でそれをやったら
授業が成り立たなくなりかねない。

校則を厳しくする理由で、「近隣住人の目」というのもありますすが、
進学校はすでに高評価を得ているのでそれも気にする必要がない。
名門校の生徒の染髪は許されても、教育困難校でそれはまずいのだ。
(特に就職を重点に置いた高校では企業からの目も気にする必要がある)

教育困難校の場合、あまりにも不良っぽい恰好をしていると外部の悪い組織からの勧誘やターゲットにされることがありうるので、それを危惧している面もあると思う。
外国人に見える場合は金髪でも不良とは思われないので、日本人のみ髪色を制限されるのも理由があったりもする。

校則の緩い中高一貫校出身者の中には勘違いしている人もいるけど。
進学校の緩い校則が成り立つのは、
入試で選抜されるレベルの学力、中学から私立に行かせられるだけの家庭環境を備えているからである。
それ以外の理由はあまりないし、そうでない学校にその論理を持ち込むことはできない。

服装等に関してもそもそも学費の高い学校を自分の意思で選んで受験しているので、私立なら貧富の差に配慮する必要もないし。

話が通じない保護者や生徒がいることを前提としなければいけない公立中

公立中学の場合は、来るものを拒否できない。
話が通じないレベルの保護者や生徒がいることを前提にしなければいけない。

普通の公立中学や教育困難校には
いわゆる無敵の人や(程度の差こそあれ)ネグレクト親もいる。
それを現状の教員の人数やキャパシティで成り立たせるには縛らざるを得ないのではないかな。授業が成立しなくなるし。

もちろん、廃止に成功した中学校もマスコミで報道されていました。
ただ、校長が努力したという面が大きい。
その学校も校長が変わった場合方針が維持できるとは限らないのではないかな。
(某自由な方針で取り上げられた公立小も、校長が変わったことで旧来に戻ったという説もあるし)

まとめ

*行き過ぎた不良などを放校ないしは警察送り等にできない現状では、ある程度の校則は(改善できる部分はあるものの)必要悪
(それが可能なアメリカとはそこが違う)
*生徒の質が担保され、退学処分にもできる私立中高一貫では校則はなくせる

ホワイトカラーになったような人たちが校則廃止を叫ぶときにどうしても足りない視点がそれである。
彼らの視界に入らない不良に対処する必要があるのが現場の実情。
逆に、制御困難な生徒がいない学校で校則をなくすのは比較的容易。

不良系とまじめな子供を同じ屋根の下で教育することで割りを食うのが後者なのが現状ともいえますね。
校則面以外でも。だから東京では中間層以上には公立中学が嫌われているのでは。

ただし、健康を害するタイプの校則はNGだと思う。
詳しくは別の記事で書く予定です。

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