高付加価値路線を考える

「農作物も高付加価値化して、高く売れば勝負できるのでは」という相談が企業から。私は「やってみる価値はあります。ただ、農作物は原料。高付加価値化した鉄が大した量売れず、鉄の大部分はボリュームゾーンに売るしかないように、食料も原料だからボリュームゾーンを狙わざるを得ないんです」

高付加価値路線は、売り先が限定される。お金持ちの胃袋は小さい。高付加価値路線で行く農家がひしめき合い、すぐ脱落してしまう。中間層が分厚くあった時代なら、たまのぜいたくで購入するということが一定の確率で起きるので、高付加価値路線はそれなりの成功をおさめた。だが。

近所の高付加価値路線のスーパーが、激安店に衣替えしたかと思ったら、チェーン店が軒並み激安店に衣替え。それまで店内が閑散としていたが、激安店に変わったとたん、お客さんが賑わうお店に。どうやら、経済的にゆとりのある層が非常に薄くなり、低所得者層が分厚くなり始めている。

高所得者層が薄くなり、低所得者層が分厚くなっていることが、高級スーパーの客の少なさと低価格スーパーの繁昌ぶりからうかがえる。農産物は今後、国民のボリュームゾーンが低所得者層にうつる限り、安値販売を余儀なくされてしまう。農家が稼げるようになるには、分厚い中間層が必要。

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