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ビジュアルアナリティクスのプロセスについて

Ordeal2でVisual Best Practiceについて学びましたので、自分なりの解釈を交えてまとめてみます。
教材となっているKTさんの動画では基本的にDatasaberを目指す人向けにTableauでのデータの表現方法が対象となっていますが、言われていることは人に何かを伝える表現をするときに普遍的に重要なことが多く含まれていると思います。
Tableauに限らず資料でグラフや表を作るときにも、適用できる考え方やテクニックが多くあり、これらについて社内勉強会でも紹介させていただきました。
今回はVisual Best Practiceの中でも前半のビジュアルアナリティクスのプロセスについてを対象とします。

そもそもなぜデータをビジュアル化する必要があるか


それは人の脳の仕組みや特徴を知ると理解できます。
人は目にしたものの数が少なければ瞬時に数量を把握できるけど、数が多くなると数えないと理解できないという特徴があるそうです。
数えないと理解できなくなる閾値は個人差やシチェーションにもよりますが、7±2くらいと言われているそうです。

3個なら一瞬で理解できる
たくさんあると数えないと理解できない

また、ランダムな数字の羅列の中から特定の数字を見つけるゲームをしました。下記の図で数字の5がいくつあるか数えてください。

単色だと見つけづらい
色をつける(色相)とみつけやすい

このプロセスを分解すると、上段の色なしの場合、黒い文字の中で5を探しながら、1個2個3個…というように今いくつめかを記憶しておく必要があります。
一方で下段の色付きは5に色がついていることがわかっているので、赤い文字だけ見ればよい。他の文字は除外しているので脳の負担が軽い。
これも脳の仕組みの特徴だと思います。

このようにビジュアライズは誰もが素早く正確に物事を理解できる方法、だから積極的に使いましょう。
なぜデータをビジュアル化する必要があるかという最初の問いに対しては、
様々な手法で視覚的効果を使いながらデータをみんなが平等に理解できる表現が求められるから、そしてそれが有効だからということに行き着きます。

ビジュアルアナリティクスのプロセス

ビジュアルアナリティクスのサイクル


ビジュアルアナリティクスのサイクル(Tableau Blueprint ヘルプより)
  1. タスク

  2. データ取得

  3. ビジュアルマッピング(視覚化)

  4. データ閲覧

  5. インサイトを得る

  6. アクション・共有

の流れで行われます。
最初のタスクというのはデータ分析には必ず目的があるので、その目的を果たすために行うべきこと
例えば、
Webサイトのアクセス数を増やしたい
売上を上げたい
コストを下げたい
などの目的に対して、何をすべきかを考えることから始まります。

また、中央の人から出ている矢印は、常に行ったり来たりやり直し、反復しないとインサイトにたどり着けないことを示しています。そして、それを手軽に行うツールとしてBIツールがあります。

データ分析は手段、それ自体はタスクではない

データ分析という手段を目的化しないこと。
ただ、(これは実体験に基づくものですが)実際のプロジェクトでは、規模の大きい案件などではデータの取得だけで一つのプロジェクトになりえるのが実情です。データ分析を実施できるようにするために、データの加工や整形をしたり、データを溜めておくストレージを作ったり、自動化の処理を作成したりするなど、関わるステークホルダーもタスクも多岐にわたります。
しかし、上述の通りデータ分析自体は目的ではなく、そのデータを使って売上を上げたり会員を増やすなどがゴールのはずです。関係者で常に意識し合いながらプロジェクトを進めていく必要があると感じます。
そして、視覚化も同じことがいえます。手間を掛けずに簡単にできないと、それが目的化してしまうことを注意しましょう。

記憶とプロセス

記憶には3種類あります。

Sensory Memory(感覚記憶)
反射みたいなもの。瞬時の反応。あまり人によって差がない。一瞬目に入って、すぐに忘れるもの。通りすがりの人の顔とかもそれにあたる。

Short-Term Memory(短期記憶)
今脳で考えているもの。ただし、たくさんは覚えられない。

Long-Term Memory(長期記憶)
記憶として定着している過去の想い出など。

ビジュアルアナリティクスではSensory MemoryとShort-Term Memoryという2種類の記憶をそれぞれの特性を活かしてどのくらい有効に活用できるかがポイントです。

人は忘れる生き物です。
それを改めて実感させられるゲームとして、二桁の掛け算を暗算で行いました。

暗算が得意な人はできるかもしれませんが、普通はめんどくさいものです。
なぜめんどくさいか?
それは筆算のプロセスを頭に記憶しておかなくてはいけないからです。
二桁同士の掛け算となると、1個1個の計算は簡単でも、組み合わせで覚えなくてはならないものが増えてきます。
1度計算した結果を覚えておく必要があり、それがShort-Term Memoryの容量をくってしまいます。
なので、時間がかかったり、間違えたりすることにつながってきます。

一方で筆算であれば、計算のプロセスを紙に書く(外部に出力して短期記憶の容量をあける)ことで次の計算に集中できます。

データビジュアライゼーションも同じことが言えます。
データを見て瞬時に分かる状態にしておく
そのことで考えることに集中できる
今回で言えば今やっている計算に集中できる

「人は忘れる生き物」というメカニズムを理解すると、
適切なビジュアライゼーション、ビジュアルマッピングに繋がります。

これらの特性を活かして、考えることに集中するためのビジュアライゼーションがどういうものかをTableauで実演してみました。

カテゴリ/サブカテゴリと地域の利益クロス集計表

↑はカテゴリ/サブカテゴリと地域の利益クロス集計表です。
「電話機の九州での利益はいくら」のようにピンポイントで知りたい値を調べるときに適した表現です。
ただ、利益なので中にはマイナスの値もあります。この中からマイナスの値を探すのは上記のランダムな数字の羅列から特定の値を探すときと同様にめんどくさいのですが、色相を使うと一目瞭然となります。


利益がマイナスの値を赤文字で表示

これによりテーブルはほとんどのエリアで赤字、北海道はすべてのサブカテゴリが赤字だと不安になるかもしれません。しかし、よく見ると北海道の赤字額は他の赤字額より値が小さいです。大小を視覚で判断するためのビジュアライゼーションとして、長さや色を使ってみます。

売上を棒グラフ、利益を色で示したグラフ

売上を棒グラフで示して、利益を色で示しました。長さと色の濃淡で直感的に判断できるようになりました。正確な数字ではなく、全体的な傾向を把握するにはこのような表現が適していることがわかります。

記憶とプロセスの力を十分に発揮するためには、Sensory Memoryを有効に使うことで、Short-Term Memoryを有意義な考察に使うことができるようになります。
読まなくていいものを読ませない(見てわかるようにする)
覚えなくていいものを覚えさせないことによって
より深い考察に脳の力を使えるようにしましょう。

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