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番外編、女房ステーキ

お肉は好きだ。

特にいいお肉は素敵だ。お肉は実に分かりやすい。

いいお肉は口に放り込むと幸福感をくれる。わかりやすく贅沢をしている気分になる。いや、わかりやすく贅沢をしているのだけれども。

お金をかけるという意味では、名前も読めない素敵な外国のコース料理なんかも食べようと思えば食べられるのだけれども、いまいち贅沢をしている気分がうすい。いや、美味しいのだけれども、わかりやすさという点で惜しい。

その点、やはりお肉は分かりやすくて、素敵だ。

***

行きつけのユニクロの裏手に、ステーキハウスがある。

若い頃はお金がなかったので、デートはおもに、「カフェ」か「うどん」だったわけだけども、歳を取ってそれなりにお金を持っていたとしてもステーキハウスに一緒に足を運ぶ友人もなく。

いや、1人で行くのもな−、と「ステーキハウス」に行くタイミングを逃し続けて35年が過ぎた。

とにかく、僕にとっては「ステーキハウス」という単語を冠した場所と言うだけで相当なエンタメ空間なわけで。

ユニクロに行くたびにあのステーキハウス素敵よね、とダジャレのようなコメントを残す日々だったわけだ。

で、僕は36歳になった。おめでとう僕。

36歳になった僕に妻はステーキハウスのお肉をごちそうしてくれた。

両面をサックリと焼いて、ミディアムレアに仕上げた15mmの厚みのある肉は、クオリティーの高いガムのように噛んだ分だけ肉汁を僕に返してくれた。

いやうまい、一生噛んでいたい。

あ、焦げる

あ、米が止まらない。

炭、思いのほか熱いなこれ。

最高のプレゼントだ。

最高のプレゼントだったよ、妻。

お肉が、ではなく、僕のコメントをちゃんと覚えていてくれたことがもうすでに最高のプレゼントであったわけだ。気が利いている。どんなモノにも代えがたい喜びだ。

もう何度も歌ってくれている娘のバースデーソングを聞きながら、ああ、悪くない人生だなと感じている。そういう日が一年に一度あるのは、実に心地がよい。

来年もそういう日を迎えられる自分でいようと、思う。

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