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「死ぬじゅんび」できてますか? 初めて死にかけてみて気づいたこと

 「死ぬじゅんび」というイベントを企画したのは、敢えての決断でした。

死という大抵の人ならあまり向き合いたくない、けれども必ずしも誰もが迎える運命にあるものと、少しだけ近づいてみる時間があってもいいのでは。

私は今年の3月にスキーをしていて転んで、クモ膜下出血と脳しんとうを起こしました。事故直前から2日間の記憶がすっかりありません。初めて「死」を間近に意識しました。

そんな自分だからこそ提供できるコンテンツを。伝えたいのは、「死を考えるということは、あらためて生きることを考えるきっかけになる」ということです。

自分自身がこれからの人生をさらに心地よく生きるためにできることはたくさんあって、それは“死”をベースに考えることもできます

イベント当日は、クラウドファンディングサービスの中の人がお金で困らない世の中を目指すという話をしたり、60歳の東大生が「自分の余命を知る方法」をプレゼンしたり、保険の専門家が知らないと損な保険の話をしたり、弁護士が遺言書の書き方を解説したり、葬儀屋さんが“自分らしい葬儀”をするコツを話したり、最後はみんなで「ちょっと死んでみよう」ワークショップをやったり盛りだくさんでした。

ご来場できなかった方にもさまざまな角度から生と死を見つめる機会になればと思い、noteという形でイベントレポートをお届けします。

まずは私、でんみちこの挨拶と、「死に触れてみて気づいたこと」について話します。

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みなさま、本日はお集まりいただきありがとうございます。

私が死ぬ前に食べたいと思っているのは、恵比寿酒家の元さんのしゅうまいです。コリコリ、ジュワッと。

みんなにもこの味を生きているうちに味わってほしいと思って、今日はの元さんにお越しいただきしゅうまいを出していただきました。の元さんのお店で出るご飯はすべて美味しいのでみんなぜひ食べに行ってください。笑

私が今日お伝えたいのは、とにかく、元気になりましたということです。

事故直前からの記憶がすっかりないので、今年の冬もまたスキーをしたいなと思っているくらいです。後遺症も特にありません。

本当に回復できてよかったと思っていますし、何より支えてくれたみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。みんなに直接快気祝を渡したいという思いが自分の中からも湧き上がってきたので開催を決めました。

今回の会のきっかけは、300人から支援いただいたpolcaでした。想定よりも多い人数の方々から多額の支援をいただいて、ずっとなにかお返しできたらと思っていました。

私はこれまで死に至るほどの毒を持つマダニに刺されたり、薬でアナフィラキシーになったり、魚介類でなんども食中毒になったりなど、小さなことだけども下手したら死んでしまう…!という機会が何度かありました。

もともと死が割と身近であったせいか、そんなに怖いと思ったことはありませんでした。いつ死んでも後悔しない人生を送るを生きるモットーにしていたくらいでした。

でも、実際に死にかけて初めに思ったのは、「全然死ぬ準備できてなかった!」でした。

なので意識が戻って病室で最初にしたのは、エンディングノートについて調べることでした。自分が死ぬ時も、親や周囲との最期の時も綺麗に気持ちよく過ごしたい、そんな気持ちが今日のイベント企画につながりました。

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今回、事故後に入院してから退院し、自宅療養をしている期間の気持ちをグラフにしてみて気づきましたが、事故直後の3月よりも今のほうが状態がいいと感じているので、結果的には怪我をしてよかったと思っています。

本当にそう思えるくらいたくさんの体験と気づきを得られたのです。

入院時はまだぽわーんとしていて、怪我をしちゃったし、会社をちょっと休まなきゃいけないのかな、くらいの軽い感じでした。でも、その後退院して自宅療養をしている方が辛かったです。

脳の状態が悪いのを人に理解してもらうのがとてもむずかしくて、外から見える自分と本当の自分が感じている感覚のギャップ。きちんと伝えることを大切にしてきた自分だからこそ真面目にやろうとしすぎていたかな、と今では思います。もっとてきとうでいいのに。

あと、「絶望」という感情も初めて経験しました。目が正常に機能しなくて、3Dで見えるものがさらに3Dに見える9D(←勝手に呼んでる)に見える期間が長く続き、もしかして私はこのまま一生目が悪いまま障害者として過ごすことになるのかな?なんて考えたりしていました。

顔の傷は1週間で治ったのに、脳はとにかくとても治りが遅くて時間がかかったので、とても不安で、時折絶望的な気分になるような、気持ちのやり場のない毎日でした。

そんな中、気づいたこともありました。

死に触れてみて、気づいたこと4つ

1. 仕事以外のコミュニティの重要性

家族とか趣味のコミュニティとか、みなさんにもあるかとおもいます。私は出版社が運営するとあるコミュニティに所属していたので、自宅以外に行ける場所があること、そして信頼できる人がいることが心の救いになりました。何気ない話ができること、それがとても気の休まる時間でした。

また、自分で作ったオンラインサロンの「でんこラボ」の存在もとても大きかったです。

オンラインでつながっているので遠く離れた地の病院からもアクセスができ、心理的安全性を大切にする、好きなことを話していいコミュニティとして運営しようと立ち上げたのですが、まさかそこに自分が救われることになるとは。自分が生きていることを喜んでくれる人がいて、やさしく見守ってくれていることが、本当にありがたかったです。

仕事場以外になんでも話せる場があるのは、働けなくなった時にはとてもいいなと思いました。

2. 仕事は”しなきゃいけない”もの?

国民の義務でもあるから、働かなきゃいけないのは十分にわかっているんだけど、でも正直"働かなければいけないもの"でもないと気づきました。

働けない状況になった時、自分の中に占めていた仕事の割合が大きすぎて、働いていない自分が情けなくて、成果を出せない自分がとにかくもどかしくて発狂しそうなほど悔しかったです。

でもたくさん考えて、働くことが正義であることを手放してみたら、一気に心が休まった気がします。

できない、働けない、そんなときもあるし、そういうときには仕事から離れてもいいんだ、それを支える制度も作られていて、社会とはこんなにやさしく作られているのか、と。

3. 休むってなんだ?

休むということを真剣に考えたことがなかったので、なにをしたら自分を休ませることができるのか、はじめのうちはよくわからなかったです。

でも、いろいろ無駄だと思うものを削ぎ落として、ものを捨てたり、SNSをやめたり、情報を遮断したりして、自分の中から湧き上がってくるものがなんだろうと純粋に自分と向きあってみたら、自分は生きてるだけでいいんだと思えるようになりました。

毎朝、明治神宮を1時間、自分と対話しながら歩くとあっという間に時間が過ぎていきます。緑に包まれている時間が幸せだなぁと感じたし、なにより自分の場所を見つけた感じがあってうれしかったです。

最近は一緒に散歩する仲間もいてとても楽しいです。みなさん一緒に散歩しましょ。

4. お金は自分に合わせてコントロールできる

お金を稼ぐことが大事だし、お金が自分の価値のバロメーターだと思っていたけど、そこに固執しなくてもいいなぁと考えが変わりました。

いろいろ削ぎ落としたくてモノを買うことを控えたり、衝動買いをやめました。「2日たっても欲しかったら買ってよい」というルールを実行してみたら、9割のものは欲しくなくなりました

もしかしたらこれまで衝動でしか買う判断をしていなかったのかも。お金とも静かに向き合ったら、最低限心地よく過ごすことのできるのに必要な金額がわかりました。今はそんなにお金を稼ぐことを優先していません。お金に惑わされることなく、自分らしくいられる状態を保つことを大切にしています。

最近とった自分アンケートで、昔から私を知っている人たちからは

・エネルギーにみちあふれた頃とちょっとちがうね
・気張らず、いい具合に力が抜けている

とかご意見をいただいています。不思議な感覚です。

いま、以前よりも身軽で、力んでいない自分がいて、それが心地がいいです。いい時間を過ごせたからかもしれません。私にとってこの5ヶ月は大きなトランジションの時間になりました

死に触れて、これまでの日常とは違う環境になった時に切り替えることができたことでとても貴重でかけがえのない時間を得られたと思います。新しい自分と歩いていきます。

今日はこの後も、生と死を考えるコンテンツが続きます。みなさまに良い気づきの時間となりますように。

次回は、私がとても救われたクラウドファンディングサービス「polca」について、事業部長の山田和樹さんが語ります。お金とコミュニケーションをなめらかにするというお話です。

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あと、今日のイベントはみんなに協力してもらっていて、音楽はDJカッシー、受付はmotanin、料理チームは恵比寿の酒家の元の野元さんがしゅうまい、Oisix時代の同僚の柴本さんがお味噌汁、でんこラボのふじもっちゃんが炊飯担当で準備してくれました。

遺影撮影はプロカメラマン本田さんと、メイクの広報仲間の石尾さんチーム。登壇いただくみなさまも尊敬する、素晴らしい仲間たち。

みんなが協力して作れていることを本当にうれしく思っています。

このnoteでの連載の編集ライターチームは若山さんと鳴海さん、来れないけどサポートしてくれるのは縁側ちゃんこと成瀬さんです。写真撮影はブロガーのT@kaさん。

みなさま、本当にありがとうございます。
では、死ぬじゅんび、してまいりましょう。

<文:でんみちこ 写真:T@ka


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