友達の結婚式②

そして冷えた体で迎えた朝。僕のスペック「どんな時間まで飲んでても朝6時半に起きれる」が発動した。起きた瞬間に何かを思いついたかのようにシャキッと立ち上がり、目的もなくコンビニに歩き始めた。1人とは思えないほどの独り言を話しながら。そして自分の朝食と友人に目覚ましのお茶を買って帰った。勿論、お礼は言って貰えなかった。勝手にしたことなので嘆くことはしない。ここで一筋縄ではいかないのが私だ。歯磨きを買うのを忘れていた。なんてことだ。小さな子供なら泣いてしまうレベルの口臭だ。ADHD特有の物忘れが友の門出の日まで現れるとは。背を丸めながら本来は必要なかったコンビニと寮の往復を歩いた。寮に戻ると体に異変が起きた。うんこが漏れそうだ。2023年は通算21度の排便を失敗した(手帳に記録していました)。今年は半分以下に抑える予定なのでこんなところで、それも友の門出の日に漏らしてたまるかという漢の最後の意地でトイレまで駆け上がった。パッと世界が真っ白になった。成功したのか失敗したのか、一瞬分からなかった。便器を覗き込んで少し後に自身のパンツを見た。パンツにはシミひとつなかった。勝った。俺は勝ったのだと確信した。今日の乾杯の音頭は絶対に成功するなとビジョンが見えた。1人だけの闘いに勝利し、何も知らぬ結婚式に参加する友人の輪に入った。もう2度とこの人生では降りることがないかもしれない駅、池上から今日、日本で1番の幸せが溢れている場所へと向かった。会場の近くに着くと身体の大きな漢たちが連なっていた。僕はハッとした。そうだ、本日の主役は学生時代にアメフトに打ち込んでいたのだと。(※ちなみに私はアカペラサークルに馴染めなさすぎてめちゃ太った奴に嫌がらせを受けて辞めました)自信のみなぎる表情とテンプレートのようなツーブロックが僕を萎縮させた。しかしながら表情は優しい方ばかりで少し肩を撫で下ろした。会場に早く着きすぎた為、会場周りをじっくり見たいと乳輪番長が騒ぎ出した。「見てみ!綺麗景色やで!」すごくピュアな表情だが、目は出会った頃から全く変わらない真っ赤な血走った目であった。そんなこんなで乳輪番長の歩く先に着いていくことを続けていたら開始の時刻に。少し遅れて「チーター」という男が来た。サッカー元日本代表の長谷部とラッドウィンプスの野田洋次郎を足して2で割った後に良いところを削ぎ落としたような風貌をしている男だ。「おっす」とさっと上げた左手の薬指にはキラリと光る指輪が付いていた。不快なほどに白い歯。成功者の香りがした。「チーター」というあだ名の由来は少し悲しいもので、中学生時代に話は遡る。互いに筋肉を自慢し合うという男子校特有の遊びをしていた時に、上半身裸になるシーンが現れた。その時にその場にいた4名ほどがパッと服を脱いだ。その時にみな他人の身体を舐め回すように見た。そして自分の方が筋肉がある、ないに一喜一憂した。しかしながら、チーター以外の3人にはモヤモヤが残った。「チーターの乳首下すぎひんかな?」そうなのだ。チーターは乳首が常人の腹の部分にあるのだ。何を隠そう「チーター」の由来は「乳首下」→「チタ」→「チーター」という流れである。命名したのは私と友人である。嫌なあだ名を付けた代償にチーターから今まで受けたことないほどの暴力を受けたのを今でも昨日のように思い出す。長々と「チーター」という漢の説明をしたが、この結婚式当日、彼は殆ど言葉を発さなかった。それも彼の魅力である。 そしていよいよ式が始まったのだ。

友達の結婚式②終わり、まだ続くよ。

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