26【認知症】グループホーム入所に向けて④
入所当日。
両親を車で迎えに行った。
母はどこまで理解しているのか…
施設に到着し荷物を搬入。
自分の持ち物をどんどん運び込まれる
母はどう感じているのか…
お茶をいただき、少し落ち着くまで
職員さんと雑談を交わす。
前日入所された女性が
私たちの様子をにこりともせず
眺めている。
あの女性は、いったいどんな
気持ちで私たちを眺めているのだろう。
母が少し落ち着いたので、父と私は
「ちょっと手続きしてくるね。」と
母に伝え別室で入所の手続きをした。
入所の説明を聞き大量の書類にサインした。
1時間近く母から離れていたのか…
母のところに戻ると、
「お父さん!」
半泣きになっている母が叫ぶ。
「私はどこにいるのか訳が分からんよ。
もうここから飛び降りようかと思った!」
と想像もしていなかった事を言った。
そこは施設の1階なのだけれど
そんなことは母にはどうでもよく
とにかく死にたくなる程
不安でしかたなかったと言うことで、
その悲壮な顔をみた私は
心を握り潰される程苦しくなった。
「何でよ~。
ただ書類を書きに行ってただけやよ。」
冷静を装って説明した。
「お父さんが検査入院するから、その間
お母さんはここでお世話になっててと
言ったやろ。」
今までに何度も説明をしてきたけれど
当然忘れてしまっている。
とにかく同じことを繰り返すしかない。
説明した瞬間は理解でき納得もできるので、記憶が残っているその間に
「検査する病院にお父さんを送ってくるからお母さんはここでお世話になっててね。
みんな親切にしてくれるから大丈夫!
じゃあね。」
あっさりと声を掛け施設を出た。
車の中で、
「お父さん良く頑張ったよ。
お母さんを幸せにする為に施設に入れるん
だから心配いらんよ!」
と父に声を掛けた。
「もう無理やったから。
怒ってばっかりでかわいそうやった。」
父が言った。
父を送り届け帰宅する車の中。
自分の感情がどんな状態なのか理解できない。
これが最善だと思いすすめてきたのに
満足感でも安堵の気持ちでも無く
かと言って後悔でも無く…
人の人生を自分の考えと行動で決定し
動かした重責がのしかかってくる。
甘くもしょっぱくもない涙が溢れてきた。
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