中学生から勉強の本質を学んだ日

私は英語専門の個人塾でアルバイトをしている。個別指導型で、補習目的の子もいれば、大学受験のために難解な読解の攻略術を習得しに来る子もいる。

その日は私が教室運営をする日で、事務をしつつ授業の内容を盗み聞きしていたのだが、ある中学生の宣言が聞こえて、私は耳を疑ってしまった。

「先生。今日から授業始まる前の雑談を英語でやります。」

生徒から講師に授業の提案をしているのも初めて見たし、しかもその内容が中学生の学習進度をはるかに超えたものだったから驚いた。このチャレンジ精神、すごくないですか?

後で聞いた話だが、その生徒は英検の面接を控えていて、会話の練習をしたかったという理由があったようだ。
けれども、けれどもだ。
自分の弱点を認識→成長するために必要なことを模索→実行に移す
という一連の流れを、自発的にできる学生は果たしてどれほどいるだろうか。特に「教室さえ行けば講師が授業を先導してくれる」塾という環境で。

自分と比べるのも失礼な位だが、私が中学生の頃は塾では完全にお客さん状態だった。与えられた課題をこなせばよいとしか感じておらず(それだけで点数が取れていたこともあるが)、授業をより良くする提案なんて考えたこともなかったと思う。

受験に合格する上では私とこの中学生の差は可視化されにくいと思う。どんな方法を取ったにしろ、合格点にさえ達してさえいればどちらも合格できるのだから。
けれども、点数化されないこういった志こそが勉強の本質なのではないか。そう感じた。

その生徒が優秀なことは担当の講師から聞いていたのだが、その秘訣はこの自主性の高さによるものかもしれない。担当の講師も「おーいいね!」と賛同しつつ、What did you do today?とすかさず質問し、主導権を握りなおしていた。2人ともプロフェッショナルだ。まだわからない単語が多いみたいだったけど、文の構造はしっかりしていて、このまま続ければ絶対合格できると思う。さらなる高みを目指して頑張ってほしいなぁ。

私が学習塾でのアルバイトを好きな理由の一つに、こういった生徒の成長を近くで見守れることがある。色んな生徒たちがいて、色んな悩みを抱えているけれど、一生懸命努力して大きくなっていく。その過程で、生徒たちが私には想像もできない「答え」を出す瞬間がある。その成長に、ほんの少しでも私が貢献できているだけでたまらなく嬉しくなるのだ。だから、ずっとバイトを続けたくなる。

高校生の頃はブラックな労働環境で身を粉にして働く先生たちをどうしても理解できなかったのだけど、今なら共感できる気がする。実は大学でも教育社会学のゼミに所属しているほどには教育に関心がある。それでも、教師になりたいとは、やっぱり思えないけれども。(労働環境本当に改善して…)


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