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介護の現場にクズが多いのは何故?

もう13年程介護業界にいる私が会ってきた
「クズ」を紹介しようと思います。
嘘つき君

コイツはだいたい泥棒とセットです。
昔の人はよく知っていたのですね、
嘘つきは泥棒の始まり。

その嘘つき君と会うのは私が何の介護の資格も無く、全くのド素人時代の特別養護老人ホームでした。

多少ぼんやりしている以外は人当たりも良く、結婚していて奥様の両親と住んでいる30代でした。
笑いながら自身の息子さんに重度の障害がある事を話す以外は、特に特徴はありませんでした。ブサイクでもなかった。

それなのに全女子社員からは蛇蝎の如く嫌われているのです。

私は元々現場職人でニッチな仕事を男だけでしていて
(女性だらけの職場で気の利かない男がストレスの捌け口になってる)としかその時は思いませんでした。

ある日、両脚を糖尿の為に切断されている利用者様が入浴されました。
嘘つき君が脱衣に入っていました。

特養では大勢の利用者様を入浴させる必要があるので、入浴、脱衣と着衣、看護師、と分かれて作業を行う所が多いと思います。

つまり多くの目があるのです。

そんな中で不注意により嘘つき君は利用者様を車椅子で転倒させてしまいました。

脚が無い分バランス的に重心の比重が上と後ろになり安く、更に自走式の車椅子は車軸が身体に近い為に独りバックドロップ状態の危険があります。
その為に取外し可能な転倒防止のフックが後部にあり、普段なら有り得ない事故でした。

後頭部からおびただしい出血があったものの看護師さんが的確に処置してくれました。

何故事故が起こったのか?

近くに居た嘘つき君に皆が聞きます、
「勝手にコケた」と答えます。
ならば転倒防止のフックが何故付いてないのか?
その利用者様を脱衣場に連れてきたのは嘘つき君です。
嘘つき君は「知らない」の一点張りです。

後からわかった事ですが嘘つき君が利用者様の車椅子から普通のフック無しに移乗しているのをパートの方が見ていました。

嘘つき君は脚のない分軽いその利用者様を面白がって持ち上げていたそうです。

最初は利用者様も喜ばれたかも知れません、それが社交辞令でも(介護してもらっている)との気持ちで口の端を持ち上げたのかも知れません。

しかし嘘つき君はアホなのでフックの無い車椅子に移乗し前輪を少し持ち上げ速めに脱衣場へ連れて行ったとの事でした。

私は下っ端だったので事故がどう処理されたかわかりませんが、嘘つき君は退職する事になりました。

「それでも嘘つき君は何でそんなに嫌われてるんですか?」と何と無しに聞いてみたら、

「…嘘つき君と夜勤したら財布のお金が消えるのよ」とベテランのおばちゃんがため息をついた。

夜勤は2人体制で施錠されたロッカーもあるが鍵を持ち歩くのを嫌がる人も多い。
服のボタン等でも利用者様の皮膚剥離の原因になるので、時計やアクセサリー、果てはポケットの中にボールペンや硬いものを持たない人もいる。
そこまで密着しないと自身の腰が持たない等理由はよく分かる。

利用者様の体重が重くても介護者に加算など無い。彼女らは必死でボディメカニクスを勉強し介助を行っているのだ。

自身の腰を守る事は生活を守り、ひいては我が子を護るのだ。

しかし
被害に遭っているだろうおばちゃんは言った。

「嘘つき君もね〜大変なのよ、息子さん脊椎カリエスでやっと装具つけて歩ける様になったって言ってたわ~奥様も自分せいだと精神病んでしまって働けないって聞いたわ〜」

私はおばちゃんを尊敬した。

そのうちヘルパー2級の免許をとりに行く事になり、教習を受ける。いい歳こいてもやってみると勉強は面白かった。事、重心に関しては重量物をワイヤーで釣っていた経験が役に立った。
人生わからない。

当時の厚生労働省の官僚が示した高齢者介護のプランが(自宅で介護)だったので座学は在宅ヘルパー寄りの講習だった。
2050年ごろから収束を速める事業に金を出す銀行は減って行くだろうし、どんなに募集しても介護者は来ない。
高齢者も「施設入りたい」何て言わない。
「自分の家で死にたい」と認知症が悪化してから施設に入れられる。

習った介護の理想(自己決定)など虚しい。

認知症が悪化する前に言った「家で死にたい」は自己決定かも知れないが認知症が悪化すれば自己決定なんかできるはずも無い。
官僚のオレンジプランは2回失敗したといえる。

介護者の手厚い介護で特養の利用者様は長生きし、なるべく出費を抑えて親を比較的安い特養に入れたいキーパーソンはギリギリまでヘルパーを使うかして介護離職に繋がってしまったりする。最近は認知症を扱う施設が増えているが重度の認知症に加え、精神疾患も重なっており、もっと早く専門医に診てもらうべきだったケースが多い。

もう何処でもいいから空いてる部屋ないの?と家族はなり少しお高くても入所を決定する。
その差額は(払わされた気持ち)となって心にぶら下がり親を施設に入れた罪悪感と合わさり、施設職員への不信感と昇華するのだ。

元々、弱者を介護する人は優しい。さっきのおばちゃんの様に愛に溢れている。

利用者家族のプレッシャー、過酷な現場、精神患者に呑まれる者、変則的な勤務時間、職員同士のイザコザや安い賃金、そういうものを乗り越えて
優しく笑顔で「大丈夫?」って言える人が強い人なんだろうと少し思う。

それで嘘つき君の末路何だが結果を言うと刑事事件になりました。

嘘つき君はその後デイサービスに就職し私を電話で誘います。
「俺出世したからマヨさん来たら?」

特養で働くのが嫌になってきていた私はデイサービスに就職した。
介護が嫌になったのではなくて工場の様に認知症の人を扱うのに疑問が出てきたので、介護というものの現場の確信が欲しかったのかもと今は思います。

嘘つき君はやっぱり嘘つき君でした。
彼は下っ端で仕事ができずアホでした。
やっぱり女性全員に嫌われてました。
頑張る方向が違うのに全力なんで
(アホのバタフライ)と呼ばれていました。
当然デイサービスの利用者様は認知症でない方も居られ激怒して帰られる事もありました。

嘘つき君は裏方にまわり私がレクリエーションをする事が多くなりました。

幼稚園の様な事はせずにホワイトボードを使って
「〜やかと言う言葉をできるだけ考えよう!」
的な頭を使うレクリエーションを午前中、身体を使ったゲームを午後に回想法を軸に行いました。

そんな中で嘘つき君は送迎をする事が多かったのですが、私がたまたま介護度2の軽い認知症の方を玄関まで送ると謎のメモがありました。
そこには〝嘘つき君に5万貸す〟とヨレヨレの字で書いてあり、伺うと
「何かしらね?忘れたわ」と笑われた。

帰って施設長に伝えると「やっぱり…」と頭を抱えました。

色々な利用者様が居ます。ある女性は長年食堂を経営されておられたが、銀行に騙されたので信用しないとお腹に300万巻いて来られます。
だけど認知症なので男性社員には
「2〜3枚あげるわよ」と渡して来るのです。
もちろん同居していなくても家族やケアマネは知ってるので数えて返します。
嘘つき君が入浴介助すると何枚か足りなくなるとの事でした。

最終、施設に軽トラで来た電気屋さんがTVを据え付けている間に車にあった50万が無い!と事件になり御用となりました。

嘘つき君はその全てをパチスロで費やしていたそうです。
人の温情に胡座をかきとうとう犯罪者となった。

確かに心情的には同情出来る所もある。自分のせいで先天性な障害を息子に負わしてしまったと考えて精神を病んだ奥様は、メイクも出来なくなっておられ眉毛がおかしかった。
同居の自分の両親も働けず持ち家だったが生活に困窮していた。
何よりその家に帰りたくなくパチスロを拠り所にしてしまったのだろう。

しかし息子の障害は嘘つき君のせいかも知れないのに心壊れた奥様から逃げたのには変わりない。
因果応報だ。

再就職時に嘘つき君情報が包括や横の繋がりでわかっていても雇用して現場の負担を軽くしないと、離職に繋がると経営陣は考える。


介護の現場にクズが多いのは職員が優しくてクズを許すか、反対のヤンキーみたいなヤツが残るか人員不足で嘘つき君でも入れるし、女性をまとめるのは大変だからだ。マウントや揚げ足を取り合う姿を毎日見るとウンザリする。少し意見を言えば〝マヨさん怖いから一緒に仕事したくない〟となり、長は2人(派閥)が言えば「皆言ってる」と思考停止する。関わりたくないのだ。

新人はこの状態でいち早くボス猿を見つけてその庇護に入らないといけない。そして
「あの人にこう教えられましたけどボス猿さんのやり方が正しいですね」と敵を作りボス猿の機嫌を伺うのだ。

介護に正解は無いと私は思う。
今日出来ても明日はわからない、どっちも対応する人員は無く正直薬で抑制しなければ転倒を防げない事もある。
虐待防止の観点からはダメだが、なら他の人の転倒リスクはどうするの?
と状態は変動し続ける。

介護しようと思う気持ちは同じなのに少しの失敗ややり方にケチをつけて(絶対にこうしろ!)的な教え方ではみんな辞めますし業務と介助をしながら新人教育出来る人は凄い。
それで凄い人はもっとマシな所にスカウトされ辞めていく。
そして残るのは…。

これが令和6年の介護現場です。

加算は見越され故に報酬は低い。なのに何故か介護福祉士へのハードルは上がっている。
最早試験が利権と化しており誰かの財布を潤すのだろう。介護従事者は減り、高齢者は長生きし重症者が増える事で現場の負担は増え、終末期の介護でその責任に耐えられなくなったりもする。

(何でまだやってるのだろう)と考える事もある。
1つわかっているのは認知症の最後に残るものがその人の確信なんだという思い。

猫が大好きで末期がんだったおばあちゃんはムーンフェイスでパンパンになった顔で野良猫とニコニコ喋っていた。
亡くなる前に私に1年分の雑誌(猫の気持ち)をくれた。「記事は1年繰り返しやから」と言って。
自分の事を映画監督と思い込んでいるおじいちゃんは「マネージャーに言ったらアカンで」と色紙にサラサラサインしてくれた。
生活保護なのに。

人は面白い。こんだけ書いたけど介護に転職お願いいたしますw



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