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ベネワンの買収劇を結婚物語にしてみた 

            第一章 ある娘
ある所にベネという娘がいました。彼女はまだ若く花で例えるならつぼみ。そのあどけなさが残る顔には好奇心いっぱいのキラキラした瞳がいつも輝いていました。性格も優しく穏やかで周りにいる人は誰もが彼女の事を好きになってしまいます。
ベネにはソナーという父親がいます。ソナーは町の名士で事業家です。事業は成功しておりソナーは資産家としても有名でした。ソナーの妻は若くして亡くなっておりソナーは男手ひとつでベネを育ててきました。父親の愛を一新に受けて育ってきたベネは思慮深く思いやりがあり魅力的な娘に育ちました。

可愛らしく優しい娘ベネ。たくさんのお婿さん候補がいそうですが、意外のもベネにプロポーズする若者は一人もいませんでした。なぜなら父親ソナーの許しが得られるとは思えなかったからです。仲睦まじい親子は町の人々には有名でソナーがベネを可愛がっている事は誰もが知っており微笑ましく思ってはいましたが、父親が可愛いベネを手放すとはとても思えませんでした。そしてベネも結婚する気はなく、ソナーもいつか嫁に出す日が来るとは考えていましたがそれはずっと先の事だと考えていました。
そんな穏やかに日々がずっと続くかと思われましたが、世界は変化しております。ソナーの事業は上手くいかなくなり資金繰りが苦しくなってきました。ソナーは何とかお金を工面しようと自分の屋敷まで抵当にいれますが事業の見通しはたちません。
「何とかならないだろうか…」ソナーは苦悩します。

          第2章 最初の求婚者
ムスリーという若者がいます。彼は若い起業家でした。ムスリーは時代の流れを読むのが得意で彼が起こす事業は次々と成功します。財産も順調に増えていきました。そんな若き気鋭のムスリー。実は密かにベネに恋心を抱いていました。随分前からベネに一目惚れしておりチャンスがあればプロポーズしたいと思っていました。ムスリーは自信がありました。イケメンで頭も良く仕事も上手くいっている自分がベネが自分を知ったら必ず好きになるだろうと思っていたので、父親のソナーが許してくれさえすれば結婚できると思っていました。しかしソナーのベネへの溺愛っぷりは有名です。プロポーズしてもソナーから反対されるでしょう。どうしたものかと悶々としている時にソナーの事業が上手くいっていない事を耳にします。
「これはチャンスが来たぞ」とムスリーは興奮します。

季節は晩秋。ムスリーはソナーにベネを妻に迎えたい、とプロポーズを申し出ます。
ムスリーは結納金1400億円、またお互いの事業の合同経営などを条件として提示します。
ソナーとベネは最初こそ戸惑いますが、ムスリーの好感が持てる対応、人柄の誠実さ、などに惹かれプロポーズを前向きに考えるようになります。
「ソナーさん、今後は義理の息子となるだけでなく、互いの事業を協力させて発展させ合っていきましょう」
「ムスリーさん、色々とありがとう。娘の気持ちを確かめて前向きに考えさせて下さい。」

ムスリーが帰り家の中で2人だけとなった父と娘はこんな会話を交わします。
「お父様、ムスリーさん素敵ね。あの人だったらお嫁に行ってもいいいかも」
「娘よ。ワシもあの若者が気に入った。あの男なら大事なお前を嫁に出せる」
はっきりと承諾の返事は出していませんが親子の気持ちは「ムスリーで決まり!」とほとんど固まっていました。
ムスリーが好青年だったのはもちろんですが、彼が出した結婚の条件も大変魅力的だった事は言うまでもありません。

そんな頃、町ではある噂が飛び回っていました。
「とうとうベネが結婚するみたいだぞ」
「よく父親が許したものだな。仕事が上手くいっていないとは聞いていたが…信じられない」
「聞けば結納金の額がケタ違いだったみたいよ。あんな可愛いベネだもの、私ら一般人の金額とは桁違いなんだろうさ!羨ましい~」

         第3章 第一保

町の人達が好き勝手に話している中、一人の中年紳士がじっと耳をそばだてていました。
「そうかあの堅物ソナーが娘の結婚を考え始めたのか。まさかの資金繰りのため…?ちょっと調べてみよう」
この中年紳士の名は「第一保」と言います。古くからの家業を継いでおり経営は安定しています。身内には華族出身もおり自他共に認める生まれながらのセレブです。保もベネに好意を持っており結婚したいと思っていました。保の周りにも名家出身の美しいお嫁さん候補は幾人おりますが、そのような女性たちに魅力を感じずずっと独身でした。ある時、ベネの存在を知りたちまち好きになってしまいます。ベネは可愛いだけでなく見る人を何か夢中にさせてしまう不思議な魅力があったからです。あの娘には不可能も可能にさせてしまう活力に満ちたパワーがある、と保は直感しており何とか自分のものにしたいと考えていました。
そんな時に、父親ソナーの事業不振、ベネの結婚話を聞きこれを逃す手はないと思いたちます。
こうと決めたらすぐ動くのが第一保です。だてに老舗企業を経営している分けではありません。ベネにプロポーズした青年ムスリーを徹底的に調べ結婚の条件も把握します。のんびりしているとベネが結婚してしまいます。惚れた女性を何とか自分のものにしたい第一保。寝る間も惜しみ、「プロポーズ大作戦」を部下と供に計画します。打ち出した戦略は、ムスリーのそれを大きく上回るものでした。
結納金2900億(ムスリーの2倍)。ベネはもちろん、高齢のソナーの面倒は全て引き受け一生不自由な暮らしはさせない、という約束を提示します。保の部下には、なぜベネのためにそこまでするのか?と疑問の声を上げる者も出てきました。それほど電撃的な提案だったからです。保はこう返します。
「ベネにはこの結納金以上の価値があるからだ。我々の家業は今の所は堅調だがこの先は不透明だ。現に一部事業で赤字が出ている。また第一家の人間は温室育ちで強い者がいない。新しい血が必要なんだ。ベネには輝きがある。美しい輝きが。俺はそれが何としても欲しい。ベネの新しい血は俺達に莫大な利益をもたらしてくれる。それに比べたら結納金の額なぞたかが知れている」
保は力強く言い放ちます。ゆるぎないその眼差しを見て部下は納得します。

       第4章 ジリジリ…

ムスリーがプロポーズをして1週間も経たないうちに保はベネに正式にプロポーズします。あの脅威の結婚条件をお土産にして。
ソナー、ベネ親子は困惑します。最初、ムスリーがプロポーズして親子もムスリーでほぼ決めていました。間を開けずに今度は第一保が現れ、ムスリーより遥かに良い条件でプロポーズしてきました。
父ソナーは悩みます。
「お金だけで言ったら第一君が高額だ。しかし、ムスリー君の方が先に来たしなあ。」

こちらはムスリー。
「とんだ事になった。新たなライバル登場とは…!第一保、巨大な一族だ、資金力で僕に勝ち目はない。すでに借金をしてベネの結納金を捻出したのだ。これ以上は値を上げられない…」
そう。ムスリーはやり手の企業家ですがさすがに1600億円を自前で用意する事は出来ませんでした。銀行から融資を頼み結納金の1600億円を準備したのです。ムスリーは優秀な経営者でこれからも企業利益を上げていく事は分かっていたので銀行も融資したのですが、これ以上は無理だったのですね。

         第5章 価値をもたらす人

結果、ソナーとベネは第一保を選びました。
選んだ理由は…
結納金の額がムスリーより高額だった事はもちろんですがもう一つ重要な事があります。それは、第一保がベネの可能性を見出していた事です。
「ベネには他の女性にはない唯一の価値があるのです。私ならベネの良さを理解し可能性を広げる事ができます。ベネが傍にいたら私は何でもできるでしょう」
第一保がソナーとベネに話した事です。この言葉はムスリーから聞けませんでした。ソナーは
「第一保くんは娘をよく理解している。あの子には黄金の価値がある。その事は父親である私も気づいていた。しかし年老いたワシには力がない…。が第一保くんならば、ベネの価値をさらに引き延ばし多くの富を周りにもたらしてくれるだろう。周囲の人間がみな幸せになるような絶大な富だ」
父ソナーの言葉を聞きベネはこう言います。
「お父様、最初はムスリーさんにお嫁に行くつもりでした。でも第一保さんにあって私も気持ちが変わりました。第一さんに会った時から自分でも驚くほどの力が沸き上がるのを感じます。今の自分よりもっと成長してみんなを幸せにできる気がしてなりません。私、頑張ります。お父様やみんなの期待を裏切らず世の中に貢献します!」

こうして、ベネと第一保は結婚する事になりました。
最初の立候補者ムスリーは潔いよく諦め、ベネと第一保の結婚を祝福しましたとさ。  終わり。

2023.11月にエムスリーがベネフィット・ワンを買収すると発表しました。が
同年の12月に第一生命が横入りしてエムスリーをやぶり親会社パソナの合意を得る事になります。
パソナがエムスリーでなく第一生命を買収先に選んだのは、「より利益をもたらしてくれる」理由だからです。
第一生命は大手保険会社ですが国内市場の成長が乏しいので新しい保険サービスを検討しているそうです。福利代行ベネワンのサービスと合わせて事業拡大を進めていく予定との事。買収額よりもはるかに上回る利益を見込めるからエムスリーから奪い取った事が分かります。
私は投資はしてませんでしたが、この買収劇によりベネワンの価値がとても大きい事が分かりました。

長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。






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