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【旅行記】福井周遊 vol.2 2022.09

舞鶴線を乗り通してきた乗客のうち大半は東舞鶴駅で降車するようだが、3割程度は小浜線に乗り換えていたように思う。島式ホームでの対面乗り換えであるが、停車位置は小浜線の方がやや敦賀寄りに停車しており、舞鶴線からの乗り換え客はホーム敦賀方へと群れを成して移動していく。

小浜線も2両編成でありながらなかなかの乗車率で、クロスシートは窓際通路側ともに埋まっているほどの状況であった。しかし、高浜町の中心駅である若狭高浜駅で一定数が降車し、窓側席のみが埋まる程度に緩和された。

125系連結部
この直後車内は多くの乗客で賑わった

若狭本郷駅ではICOCA利用の降車客がおり、精算に手間取るかと思われたが、幸いにも若狭本郷が業務委託駅であり、地元住民のスタッフがホーム上に出てきたため、運転士はスタッフに対応を任せてすぐに発車した。

小浜以東では、窓際にもちらほらと空きが見られるようになった。東小浜駅のすぐそばの小学校では運動会が催されていたようで、観客が列車に手を振ってくれた。

若狭湾を望む

気山駅は美方高校の最寄駅であるため、休日にも関わらず、制服の高校生が5名ほど乗車してきた。そしてその次の美浜駅では多くの乗車があり、立ち客も多くなってきた。彼らは敦賀駅に向かう客のようである。

小浜駅以東から第四種踏切が増えたのか、警笛吹鳴が多くなった。ただかなり長い間吹鳴するため、警笛の空気が足りないのか1,2秒鳴った後床下からプシューという空気が抜ける音と共に警笛が鳴り止む現象が見られた。

粟野駅から列車は山間部を超え、敦賀市街地に向け駆け降りていくように疾走する。遠く向こうには敦賀の市街地が見られ、そこからさらに向こうには若狭湾の日本海を望むことが出来る。嶺南と呼ばれるこの地域は、海岸線が複雑に入り組んだリアス式海岸が特徴的であるが、この若狭湾沿いの海岸には、原子力発電所が4施設もあることは有名である。強固な地盤と若狭湾の海水から得られる大量の冷却水が原子力発電に適していたこと、また嶺南地域が原子力発電所の建設に理解を示したことから、建設が進められた。実際、これまで小浜線が通ってきた沿線自治体でも、電源三法交付金を基に経済的な発展を享受しており、沿線道路や周辺の公共施設には綺麗な建物が多かった。2011年の東日本大震災以降、原子力発電の世論は厳しくなっているが、大飯、高浜、美浜の3原発は2022年時点で運転を再開している。

そして、嶺南地域を語る上で敦賀市の歴史にも触れないわけにはいかない。敦賀市は古くより鉄道の街として栄え、かつては今庄や柳ヶ瀬など交通の難所を近くに持つ地域であったがゆえ、鉄道運行の重要拠点として栄えた。また、敦賀港からはロシアなど大陸方面への船も発着しており、海外との玄関としても栄えた歴史を持つ。敦賀港からの鉄道貨物輸送を担っていた敦賀港線は廃線され、大陸方面への海路も今は無くなってしまったが、現在でも北海道方面へのフェリーが出ており、知る人ぞ知る隠れた移動手段としての機能を残している。そしてまた近い将来、北陸新幹線の延伸で暫定終着駅となることで、また鉄道の要衝としての役割を担うことになるのである。

私を乗せた小さな125系は、突如現れた巨大な高架橋を右手に見ながら、新たな鉄道の要衝となるであろう町の玄関口へと滑り込むのであった。

巨大な新幹線高架を抱える敦賀駅
北陸新幹線の延伸開業に向け工事も終盤に差し掛かっている


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