shinyam

編集者、プランナー。小難しい本とNetflixと仏像とゲーム実況が好き。最近は古代日本…

shinyam

編集者、プランナー。小難しい本とNetflixと仏像とゲーム実況が好き。最近は古代日本がブーム。折口信夫/岡野弘彦/高橋睦郎/丸谷才一/本居宣長/安藤礼二/藤原定家/松岡正剛にハマり中。アニメ、漫画、サブカルも好きです。

マガジン

  • 編集力を学ぶマガジン

    世界中の編集の方法を集めていきます。

最近の記事

コロナへの恨みを抱く前に、石牟礼道子に学びたい

コロナが猛威を振るう中、「コロナに打ち勝とう!」という言葉をよく耳にする。 人類の敗因は?勝つための方法は?これは戦争だ! 勝ち負けの論理で、世界が動いていくのが、とてもつらく、とても不自然な気がしてしまう。もちろん亡くなった方もいるし、現在苦しんでいる人もいる。ぼくもコロナのせいで、叔父の葬式のために帰省できなかった。 多くの人が、傷つき、悲しみ、向けられない恨みをコロナに向ける。 でも、 コロナ悪!絶滅させろ!勝て! という「言葉」には違和感を覚えてしまう。こ

    • 高橋源一郎|古典と響き合う「方丈記」翻訳力

      「モバイル・ハウス・ダイアリーズ」と書かれたら、チェ・ゲバラの日記『モーターサイクル・ダイアリーズ 』を思い浮かべてしまい、どこか外国の日記文学かと思ってしまう。しかし、これは高橋源一郎が『方丈記』に付した読み仮名だ。 国語の授業で“方丈記”という文字を見て以来、ほとんどの人は“ほうじょうき”とひとつづきに暗記するだろう。その意味を考えようとはなかなかしない。“つれづれぐさ”や“げんじものがたり”や“こきんわかしゅう”と同じように音が耳に残る。まさかそれが「モバイルハウス」

      • 藤原定家|和歌のイノベーション「本歌取り」

        いま一番のバズワードは「イノベーション」だろう。もはや言われすぎて手垢まみれになっている。それほどまでに古い伝統を打ち破り、どうやって新しいものを生み出すのか、が平成から令和への最大の関心事になっている。 ビジネスでも教育現場でもスポーツでも、イノベーションを起こして、既存の枠組みを乗り越えることが叫ばれているのだ。 でも、それは現代に限ったことではない、いつの時代でも伝統や慣習に飽き飽きして、イノベーターや変わり者、アウトサイダーたちが新しい常識をつくり出す。 それは

        • デルフォイの神託の合意形成機能〜意味なんてなくていい!

          なんでもかんでも「民主主義」でいいのか、というのは誰しも一度は思うことかもしれない。多数決で決まったことが「正解」かというと、決してそんなことはないからだ。 じゃあ昔はどうしていたのだろう。人類の歴史では民主主義以前のほうがめちゃくちゃ長い。先人と言えばギリシア人。ギリシアの合意形成を探ってみると、「デルフォイの神託」がその機能を果たしていた。 デルフォイの神託ギリシア時代には「デルフォイの神託」というものがあった。デルフォイはギリシアの首都アテネから西北へ120キロメー

        コロナへの恨みを抱く前に、石牟礼道子に学びたい

        • 高橋源一郎|古典と響き合う「方丈記」翻訳力

        • 藤原定家|和歌のイノベーション「本歌取り」

        • デルフォイの神託の合意形成機能〜意味なんてなくていい!

        マガジン

        • 編集力を学ぶマガジン
          5本

        記事

          日本版バカロレアの哲学試験をつくってみる?(後編)

          前回、フランスのバカロレアの哲学教科について説明しました。 概念リストや著作者リストなど、教育省にしっかりと学ぶべきリストがまとめられていました。では、それを見習って日本版を作ってみましょう。 フランスと同様に(1)概念リスト、(2)著作者リスト、(3)指標リストに分けて考えてみます。 (1)「概念リスト」を用意する 日本の哲学や思想において重要な概念とはどういうものがあるのでしょうか。ぼくの前職のボスである日本文化研究者の松岡正剛の『日本という方法』や『連塾本』には以

          日本版バカロレアの哲学試験をつくってみる?(後編)

          カルチャーエディターへの道!

          2018年10月31日、8年間勤務した会社を退職しました。 これまでいろいろと転職活動をする中で、たくさんの企業の人と自分のやってきた仕事の話をしました。転職そのものというよりも、「いままで自分がやってきたことはなんだろう」という振り返りが目的で、カジュアル面談と称して、人事の人や声をかけてくださる人と話しまくり、いまさらながら、ここ半年ほど「自分探し」的なことをやっていました。 そんな中、あるウェブメディアの企業の人に「カルチャーエディターって知ってる?」と聞かれました

          カルチャーエディターへの道!

          ユクスキュル|実験が斬新すぎる件

          みんなの必読書・ユクスキュル! 「環世界(Umwelt)」という考え方を生み出した生物学者ですね。 なんとなく名前は知ってても、なかなか原著は読めていなかったりするので、今日はユクスキュルの『生物から見た世界』をご紹介します。 1.ユクスキュルって誰?まずはユクスキュルについて、こんな人です。 ヤーコプ・ヨハン・バロン・フォン・ユクスキュル(Jakob Johann Baron von Uexküll、1864年9月8日(ケブラステ) - 1944年7月25日(カプリ島

          ユクスキュル|実験が斬新すぎる件

          仏像にはUXの秘密が詰まっている

          先日、京都の東寺に行って、初めて「立体曼荼羅」を見て、仏像にハマってしまいました。空海が曼荼羅の世界を「立体=仏像」で作り上げたものですが、その圧倒的な迫力に、まさに仏教アベンジャーズばりの凄さがありました。「世界よ、これが仏像だ」です。 そんな仏像に興味をもって、いろんな本を読み始めたなかで、仏像づくりの秘密がすごすぎるので、ここで紹介したいと思います。仏像にはたくさんのUX(ユーザーエクスペリエンス)が詰まっていました。 参考文献はこちら。『仏像とお寺の解剖図鑑』です

          仏像にはUXの秘密が詰まっている

          日本版バカロレアの哲学試験をつくってみる?(前編)

          2020年、日本のセンター試験が変わり、学習指導要領も変わります。試験が変わるということは、「学び」自体が変化します。 詰め込み型、選択肢型、暗記型だったセンター試験はどのようになるのでしょうか。今日は、「もしも日本がバカロレアみたいな試験をつくったら」を考えてみたいと思います。 1.バカロレア=月桂樹の実フランスの教育制度の特徴で、よく注目されるのはリセ(高等学校)最終学年における「哲学教育」と、バカロレア(大学入学資格試験)における「哲学試験」です。文系、理系を関係な

          日本版バカロレアの哲学試験をつくってみる?(前編)

          インターネットはもう一度つくれるのか? ―レディプレイヤー1とGDPR

           映画「レディプレイヤー1」が大人気だ。内容に賛否はあるようだが、VR世界をIMAXで体験することに関しては、とてつもない映像世界を体感できる。  あらすじはこうだ。  2045年、環境汚染や気候変動、政治の機能不全により世界は荒廃していた。その為スラム街で暮らさざるを得ない状況に陥った地球上の人類の多くは「OASIS」と呼ばれる仮想現実の世界に現実逃避し入り浸っていた。  このOASISは、天才エンジニアのジェームズ・ハリデーが生み出し、世界規模のVR世界として拡大してい

          インターネットはもう一度つくれるのか? ―レディプレイヤー1とGDPR

          いとうせいこう|小説と随筆の境界はどこにあるのか?『小説禁止令に賛同する』

          随筆(エッセイ)というのは、フランスの哲学者・モンテーニュが生み出した方法です。小説でなく、詩や歌でもない、型にはまらない形式を「エッセイ」と呼びます。エッセイとは何かは、なかなか定義できないのではないか、と作家の丸谷才一は言っていますし、「定義に挑戦するものだ」という批評家もいます。 それまでは、韻文のルールに則ったり、文学の起承転結などの形式を意識しなければ、文章を書けませんでした。そういう窮屈さに困り果てたフランス人のモンテーニュが、なんとか自分の本音を吐き出すために

          いとうせいこう|小説と随筆の境界はどこにあるのか?『小説禁止令に賛同する』

          皮肉たっぷりな上田秋成の『雨月物語』

          上田秋成の名作『雨月物語』。怨霊やお化けや魔王が出るというのは知っているけれど、どんな話なのかはよく知らなかったので、『雨月物語の世界』を読んでみることにした。ただのホラー小説なのか、探求してみる。 ◆9篇の怪異小説そもそも雨月物語は、上田秋成によって安永5年(1776年)に刊行された読本(よみほん)のこと。日本や中国の古典を模した怪異小説9篇から成っている。以下、9篇の概略である。 □ 白峯(しらみね) 僧侶・西行が崇徳上皇の亡霊と論争する話。保元の乱がメインテーマ。

          皮肉たっぷりな上田秋成の『雨月物語』

          プラトンは夢を見たのか?史実を書いたのか?ーー『先史学者プラトン』より

          文筆家の山本貴光さんが訳書『先史学者プラトン』(朝日出版社)を出版されたということで、買わずにはいられず、さっそくゲット。どんな知的冒険が待っているのか、恐る恐る本を開いてみた。 すると、國分功一郎さんが序文を書かれていて、一気に引き込まれてしまった。「考古学と哲学」という序文だ。 ◆考古学は哲学をアップデートできるか?かつては、人類学・民族学が哲学を根本から変えたことがあった。レヴィ=ストロースの登場である。それは「構造主義者」を生み出し、さらに、デリダやドゥルーズのよ

          プラトンは夢を見たのか?史実を書いたのか?ーー『先史学者プラトン』より

          ユヴァル・ノア・ハラリ|人類が「想像」するようになった日――『サピエンス全史』より

          最近は、VRとかARとかで、「リアリティ」が広がりつつある。仮想なのか拡張なのかはともかく、現実が広がっているのだ。では「バーチャル」と「リアル」の境界線はどこにあるのだろうか? ネットはバーチャル?会社はリアル?ゲームはバーチャル?スポーツはリアル?じゃあ、ネットでの出会いはバーチャル?法人はリアルな存在? もはや境界線はあいまいになってきている。そもそも、ネットによってバーチャルが肥大し、初音ミクのライブには人が集まり、テニスの王子様の舞台は「2.5次元」として享受され

          ユヴァル・ノア・ハラリ|人類が「想像」するようになった日――『サピエンス全史』より

          『昭和天皇物語』は深読みすると止まらないマンガだった

           マンガ『昭和天皇物語』(能條純一)が「緊急大増刷」らしい。2019年4月の天皇退位を前に、一種の"天皇ブーム"なのかもしれない。武田鉄矢が「ワイドナショー」で激推ししていたことで読んだ人も多いらしい。  なかなか「日本にとって天皇とは何か」なんて考えることも少ないので、そんなブームに便乗して、1巻を読んでみたら、とてつもなく面白かった。しかも、いろんなことにつながりそうだったので、noteで深読みしてみることにした。 ◆ 昭和天皇とマッカーサー 本書のイントロは、日本が

          『昭和天皇物語』は深読みすると止まらないマンガだった