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「こんな女に誰がした」:戦後の「ガード下」の街娼たちの思いを歌った「星の流れに」

関口宏さんが聞き手となって、保阪正康さんに近現代史を解説してもらう、BS-TBS「関口宏のもう一度!近現代史」。関口さんが司会をつとめる長寿番組「サンデーモーニング」の印象が強く、保守系の方は敬遠するかもしれませんが、丁寧に近現代史を解説しているよい番組だと思います。とても勉強になるので、ずっと集中しているわけではないのですが、仕事しながら流していることも多い番組です。知っているところは流してみるわけですが、ときに「お!」と思うような発見があります。現在は、明治大正昭和と進んできて、戦後に入りました。

昭和22年に入ったところで、出てきたのが、ガード下の街娼の話。ガード下で、街娼をやる「しかなかった」女性たちのことを歌ってヒットしたのが、菊池章子「星の流れに」だと紹介されています。


調べてみると、いろいろな歌手がのちにカバーしていて、たしかに「こんな女に誰がした」というフレーズは、私もなんとなく記憶にあります。ただ「星の流れに身を占って」という間接的な表現では、私には意味がわからなかったようです。すべて歌詞を確認すると、
「飢えて今頃 妹はどこに  一目逢いたい お母さん」というところで、「飢えて」生きわかれた妹のことがでてます。どうもこの曲の元になったのは、満洲から引き揚げてきた女性の新聞への投書だったようです。

曲名も当初は「こんな女に誰がした」でしたが、GHQによって「星の流れに」に変えさせられたという経緯があったようです。なるほど狙い通り、何を歌っているのかがわかりにくくなっています(「こんな女に誰がした」でも、ちょっと私にはわからなかったかもしれませんが)。でも当時の人々には十分意味が伝わったのでしょう。レコード会社の予想に反してヒットしたのだそうです。背景を理解してきいてみると、今も十分心に響きます。戦争の悲劇は、戦後も続き、特に女性や子どもたちに、大きな傷跡を残したことがわかります。ただ一方で、「パンパン歌謡なんて歌えない」と、オファーを受けた淡谷のり子さんが拒否したというエピソードからも、こうした女性たちが強い差別にさらされたということもうかがえます。

探してみると、この歌を含めた「女性と戦争」をテーマにした論文も見つかりました。読んでみたいと思います。

番組の中では、ガード下の女性たちの声を拾った、NHKラジオの「街頭録音」1947/4/22放送「ガード下の娘たち」が大きな反響をよんだということも紹介されています。

以下の記事では、放送内容が紹介されています。

音源アーカイブは公開されていませんが、NHK放送文化研究所から「『録音構成』の発生」という論文の中で、この番組のことが書かれています。

追記:NHK放送史のサイトで、「街頭録音」の音源が少し紹介されていました。「らくちょうのお時」と思われる女性は、街娼をしている女性の多くは「中流家庭以上の子が多」く、戦災者が多いというわけではないと答えています。


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