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エピソード6:S-ICD適応検査

転院
 4月16日、遂に転院となりました。心肺停止で搬送されてから36日が過ぎていました。病院が手配してくれた救急車で転院しました。一応まだ除細動器を埋め込んでいないし、いつまた心室細動を起こすか分からない為、万全を期すとの事で、救急搬送扱いで転院させて頂きました。理由としてはそれだけでなく、恐らくコロナ禍の影響もあったのでしょう。病院から病院に救急搬送される分にはコロナに感染している可能性も無くなりますからね。転院先からの条件でもあったと思います。
なにはともあれ、心肺蘇生して頂いた病院からS-ICDを埋め込む手術してくれる病院に転院出来ました。最初に入院した病院も小さい病院ではないのですが、お医者さんが不足しており現在ICDやペースメーカーの埋め込み手術は出来ないそうです。(看護師さんが言うには少し前まではやっていたみたいです。)

ICDとS-ICDの違いについて
これに関しては、いずれまた詳しく記事ににするか動画にしたいと思っています。ここでは簡単に説明しておきます。
まず体内埋め込み型除細動器は2種類あり、心臓埋め込み型除細動器(ICD)と皮下埋め込み型除細動器(S-ICD)があります。

ICD:心臓埋め込み型除細動器
概要:本体を右肩甲骨辺りに埋め込みリードを静脈から心臓へ留意される。
メリット:本体が小さい、ペーシング機能付き
デメリット:心臓内部にリードを挿す為、心臓穿孔やリード感染等の重大な合併症のリスクがある。一度埋め込んだリードの除去が困難。

S-ICD:皮下埋め込み型除細動器
概要:右脇腹に本体を埋め込み、そこから胸骨・鳩尾の辺りにリードを固定する。
メリット:リードは皮下に埋め込むだけなので、手術による合併症が格段に少ない。
デメリット:本体が大きい。必然的に傷跡も大きくなる。ペーシング機能はなし。

めっっっっちゃ簡単に言うとこんな感じです。ICDはカテーテル室での手術になります。S-ICDは手術室にて全身麻酔による外科手術となります。またどちらの除細動器も5~10年で電池交換が必要になり、再び手術が必要になります。もちろんその度に合併症のリスクを負う事となります。

手術前にネットで浅く調べた私の正直な感想
ICD:心臓に直接リード入れるとか怖い。局所麻酔だから痛そう。合併症も怖い・・・。
S-ICD:主治医の先生も簡単な手術だって言ってたし、やるならこっちの方が良い。傷が大きくなったとしても、その辺は男だしそんなに気にしなくていいはず。
そんな感じでした。

主治医の先生曰く、「基本的にはS-ICDだけど、実際どっちを入れるかは転院先で決めてもらう」といわれ送り出されました。
その時点、何となく、変な不安があったんです。その不安は現実のものとなりました。

S-ICD適応試験
転院をして、まずは担当してくれる主治医の先生から色々な説明をされました。ICDとS-ICDの説明を頂きました。両システムの違いや手術におけるリスクの説明ですね。その他行動制限(もちろん棟フリー)やコロナ関係の話(面会禁止とか)の話も看護師さんから受けました。
先生も最初はS-ICDを入れる前提で話を進めてきましたし、私もそのつもりで聞いていました。今日にでも適応試験をやって、週明けすぐに手術を行いましょうとの話でした。ICDはリスクも大きいし、これから先10年おきに電池交換手術をする事を考えたら、34歳という年齢でICD(心臓埋め込み型除細動器)を埋め込むのは現実的ではないと言われました。S-ICDの埋め込み手術自体は難しいものではないし、全身麻酔をして寝てる間に1,2時間で終わるからと頼もしいお言葉もありました。

その後病室を案内され、さっそく適応試験を行いました。

適応試験は簡単に言えば心電図を測り、S-ICD本体がちゃんと心臓の電気信号を拾ってくれるかのテストです。S-ICDのメーカーである「bostonscientific社」の人も立ち合いの元、試験が始まりました。

そして飛び交う、「えっ、不適合じゃん・・・」「プライマリもセカンダリもダメじゃん・・・」「ダブルカウント・・・」「ダメだ不適合・・・」という不穏すぎるヒソヒソ声。ヒソヒソしてても2m位しか離れてないから全聞こえなんですが。
物凄い怪訝な顔をして話し合う先生達。「これが5,60歳位だったら諦めてICD入れるけど・・・」「とりあえず本人に決めてもらう?」という声が聞こえ、遂に先生から告げられる絶望の試験結果。
「大変申し上げ辛いのですが、S-ICDの結果は不適合となりました。残る選択肢は心臓に直接埋め込む除細動器しかありませんので、そちらの手術をする事に同意して頂けますか?」

ああ・・・。なんかそんな気がしたんだよなー。いっつもそう、人生の大事な場面は大体悪い方をひいちゃうんだよなー。

その後、妻を交え先生とお話し。
・S-ICD適応試験はオール不適合
・S-ICDは不適切作動(誤作動)する可能性がある
・残る除細動器は心臓に直接埋め込むタイプのみ(最初の説明で心臓に埋め込むタイプのリスクをたっぷり聞いた)
・何も入れないという選択肢もある。もちろんその場合、次に心室細動が起きた場合、かなりの確率で死亡または重篤な状態に陥る。
・試験結果は不適応でもS-ICDを入れる事は出来るが、不適切作動に関しては責任を持てない。
・S-ICDを入れた後でやっぱり不適切作動するからICDに変えるという事も可能だが、当然S-ICD摘出手術も行わなければならないし、保険の適用も難しくなる。
・週明けまでにどうするかを決めてほしい。

ショックでしたね。土日はすっかり凹んで食事も喉を通りませんでした。本当なら月曜日に手術してその1週間後には退院できるはずでしたから。手術は延期だし、心臓に直接リードを通すし、局所麻酔だから痛そうだし。
でも悩んだところで、現実問題として選択肢は結局1つなのです。S-ICDがダメなんだから、ICDを入れる以外か何も入れないかなのです。何も入れなかったら次は死ぬ可能性が高いのだから、ICDを入れるしかないのです。覚悟を決めるしかないんです。ほぼ寝られずに土日を過ごしました。何もする気が起きなかったですね。2ヶ月近い入院生活で既に気が滅入っていたのも加わり、そもそもICD埋込み手術も失敗するんじゃないかと考え始めました。リードが心臓を突き破って大量出血からの帰らぬ人になるんじゃないかとか、そんな事ばっかり考えてましたね。

しかし妻の励ましもあり、何とか月曜日までに覚悟を決めて「ICDを埋め込んで下さい!」と先生に伝えようと思っていました。
そして月曜日、朝から先生に呼ばれたのですが、何故か呼ばれたのは説明室ではなく「トレッドミル室」
先生から「Mさん(私)の心電図結果をアメリカのbostonscientific本社に送って確認してもらったら、この心電図なら誤作動の可能性は低いかもしれないって返事が来たから、このトレッドミル検査をしてみて結果次第ではS-ICDで大丈夫かも知れないです。」

えっ、何この名医。適応試験したのが金曜日の夕方で、今日まだ月曜日の朝よ。仕事早すぎるでしょ。土日の間にアメリカの本社に確認取ってんの、凄くない?
そして金曜日にもいたbostonscientific社の方も立ち合いの元、トレッドミル検査。またもや不適合の声が飛び交っていたが、「この不適合は大丈夫なんでしょ?」との先生の確認に「大丈夫です」との返事が。

簡単に説明しますと、私の心電図に「心室性期外収縮(PVC)」と言われる不整脈が発生している為、これをS-ICD本体が危険と判断し電気ショックを発してしまう可能性があるので「不適合」という判断をされました。しかし「心室性期外収縮」は誰にでも発生している可能性のある不整脈であり、その9割方は治療の必要ない危険度の低い不整脈である、と。さらにS-ICD適応試験の際に使用される判定機よりも実際に体内に埋め込むS-ICD本体の方が、精度がかなり高く「心室性期外収縮」を正確に見極められるので、誤作動の可能性は限りなく低いものである。
 
 午後から妻と共に改めて先生からお話が。上記のような返事をアメリカの本社研究室から頂いたので、S-ICDを埋め込む事が出来ます。話が二転三転して申し訳ないと言ってくれました。いえいえとんでもないです。感謝感謝です。他の病院だったらそのままICD入れられていたかもしれないです。この先生で良かったです。

そんなこんなで怒涛の3日間を過ごし、結局S-ICDを埋め込む事が正式に決定しました。しかしこの日予定だった手術は延期になっていた為1週間ほど手術が伸びました。

次回はいよいよS-ICDの埋め込み手術になります。
長々と入院日記を書いてしまいましたが、そろそろ終わりが見えてきました。次回も宜しくお願い致します。


続き→→→【エピソード7:S-ICD埋め込み手術】

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