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【アートの記録_0026】

前置きを長く書く癖があるのですが、自分で振り返るときにも不便なので、先に書くことを書きます。今回はあいトレ、豊田会場で観たトモトシの「Dig Your Dreams.」について記録します。

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いろいろな場所でビエンナーレやトリエンナーレをやっているけど、気づけば今回で3度目のあいちトリエンナーレ訪問なので、もう9年もあいちとご縁があるわけで。毎回名古屋市内のメイン会場以外の会場もあって、豊橋とか岡崎とか、あいトレきっかけで初上陸する土地もあるのが楽しいのです。世の中には理由がないと行かない場所のほうが多いですからね。

知ってはいるけど、初めて土を踏んだ「豊田」の地。豊田といえば、ジャパンを代表する大企業「TOYOTA」のおひざ元。初めてのマイカーはトヨタのヴィッツだし、海外に旅行に行ったときに町の運転手さんに「トヨタの車はよく走る!ナイス!」と褒められると我がごとのようにうれしくなったりするので、豊田とトヨタにはいい印象がありました。

今回のあいトレでの豊田会場の展示はどれも魅力的だったし、豊田独自の取り組みで盛り上げようという熱も伝わってきて、「ようし!今日は一日豊田に時間を割こう!」という気持ちになりました。

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まあ、もともとそのつもりで乗り込んだのですが、心響かなかったら急いで名古屋に戻って他をめぐるつもりでした。だって時間がないし観たいものがたくさんあるんですから。結果、スタンプラリーもフルコンプ。順番間違えて景品交換所に戻るのは断念しましたが、プロセスが楽しいのでいいんです。

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豊田市駅の高架下にいくつか会場がありまして、その中の一つがトモトシの「Dig Your Dreams.」でした。

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高架下が発掘現場になっているんです。あいトレ展示会場にするため元ラーメン屋跡地を工事していたら、遺跡が出てきた。アーティストの力だけで整頓するのは難しいし、出てきたのは豊田市ゆかりのものらしい…。市民の力を借りて、この発掘自体をアートとしてしまおう。そんなストーリーで展開するインスタレーションです。

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実際に、市民に参加してもらって発掘作業を行い、ライブ中継風に収録。その映像を会場で流しています。トモトシさんは映像に本人として出演していて、出土と発掘自体について取材を受けています。取材レポーターが発掘の様子を「子どもたちが発見したこのかけらは、、、土器かもしれませんね!先生に鑑定してもらいましょう!」「なんとトヨタ車のエンブレムです!」みたいなことを実況するんですね。本当はすごく時間がかかるし、何も起こらない時間が長いのですが、実況があるとそれが面白くなる。たいていのことは実況すると面白くなるのだなあと関心しました。

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出土品は復元されて、恭しく展示されています。赤があざやかな彩文土器です。穀物貯蔵用ですかね。

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おっと、こちらはさらに古そうだ。直火で煮炊きするタイプの土器でしょうか。焦げ跡も確認できますね。

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なんと子ども用乗用玩具も出土されました!高級車です!この漆黒の輝くボディは…LEXUSです‼

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貴重な歴史的資料も展示されていますし、重要な遺跡ですから、立ち入ったり壊したりしないように防犯カメラが設置してあるんですね。その映像もライブで流れています。もうお気づきかもしれませんが、俯瞰で見ると、発掘現場がトヨタのエンブレム型になっているんです。

トモトシさんがやりたかったことは「トヨタの街でありながら、トヨタの形跡が見えにくい豊田市の中心部にトヨタの広告を出現させる」ことであり、「豊田市民が遺跡としてのトヨタの広告を発見する」シーンを作り出すことだったそうです。1か月かけて彫ったという遺跡のエンブレムはトヨタ本社に向いていて、出土品は作家がトヨタマーク入りの土器を作って焼いて割って埋めたものだというのですよ。準備の手間が凄い。この本気のセットがあるからこそ、発掘参加者はもちろん、観る人がトヨタと豊田について改めて考えることができたわけで。そういった空間を作るアーティストの力に感動したのでした。

豊田会場の作品は豊田という土地ならではの映像作品が多くて、見応えがありました。映像作品は写真も撮れないし、記録が難しいのだけれど、改めて記録にトライしてみます。


【トモトシ】コンセプチュアル・アーティスト。「都市の不完全性」に着目し、絶妙なバランス感覚で映像、写真、インスタレーションを制作。街に潜む「すき間」を見つけ出し、社会における暗黙のルールを破るようなアクションを加えていく作品を得意とする。https://aichitriennale.jp/artwork/T01.html

オフィシャルサイト:http://tomotosi.com/

路上でお金に「千葉産」「故郷の娘さんからもらった1000円札」などとストーリーと値札をつけて販売する「フルーツのようにお金を売る」という作品も好きなんですよね~。記号そのものであるお金はストーリーの影響を受けづらい気がするけど、お金の概念が変わりつつある今、お金にもストーリーが重要になってくる時代がくるかも。もしトモトシさんが新宿南口の路上でお金を売ってたら、私はいくらのお札やコインをいくらだったら買うんだろう。遭遇してみたい。

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1000日チャレンジのみなさんはもう100日のチャレンジに成功しているそうですが、私は25%の進捗率です。もうね、マイペースで行こうと思います。下書きラインナップは結構あるんですけど、なかなか形にならないんですよね。思い切りが悪いのかもしれません。

そんな数ある下書きからトモトシさんの作品を、なぜ今日記録するかというと、昨晩、「自作自演バースデーパーティ」というインスタレーションと呼んでもいいくらいゴージャスなイベントを体験してきたからなのです。

取り立てて華やかでない企業の会社員生活を長年やってきており、派手な演出ときめ細やかなホスピタリティ、そんな手の込んだエンターテイメントを仕事以外で提供してくれる知人や友人は両手で数えられるくらいしか出会えていないのですが、この1か月で2回も体験してしまいましたよ。

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元レタスクラブ編集長の卒業イベント「松田紀子ショー」、万人に愛されるエンタメおじさん福田さんの誕生日イベント「F-nation」。どちらもきっかけは主役の本人なのですが、本人にかかわる人を巻込んで、その人たちをイベントのコンテンツやプログラムにしていってしまうんです。このイベントのために結成されたバンドやダンサーがいたり、グッズや冊子ができていたり。それぞれその道のプロが参加していてクオリティが高いから、その世界観にしっかり没入できるのですよ。もうね、ZINなんて取材も写真もデザインも本気過ぎて震えます。

節目の時に、今までの自分を振り返るだけでなく、関わってきた人たちを繋げて、繋げた人たち自身にも何らかのきっかけを提供する。そんなすごいアーティストが身近にいて、その脇を固めるプロが大勢いるという現場を体験できたのは本当に幸せだなあと思ったのでした。

アクションを起こすことで何かが生まれる、なんてことは頭ではわかってるんだけど、なかなか実践できない自分がいます。そもそもアクションを起こしたいかどうかは別な問題だけど、一つのアクションがさまざまな人にハッピーな気持ちや新しい発見や考えるきっかけを作ることを体で感じることができたのがよかったな、と思っています。トモトシさんの作品と通じる体験でした。面白かった~。





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