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日本サッカーが『進んでいる道』と『極めるべきやり方』

※順に読み進めていただきたいため、見出しをつけておらず読みづらいかもしれませんが、最後まで読んでいただけるとありがたいです。


テレビゲームには2種類のレベルアップ方法がある。

それは、ゲーム内のキャラクターレベルを上げるか、それを操作するプレイヤーレベルを上げるか。

ウイイレやFIFAに代表されるようなサッカーゲームでは、選手能力を上げたり能力の高い選手を集めたり強いチームを使うという行為がキャラクターレベルの向上に当たり、そのゲームでの強いやり方を考えたりその動きを実行するための練習をしたりする行為がプレイヤーレベルの向上に当たる。

もちろんプレイヤーレベルトップクラスの人がキャラクターレベル最強のチームを使うことが最強への道だとは思う。

では、
ゲーム内最強のチームを使うプレイヤーレベル素人(1〜2ヶ月プレー)

ゲーム内最弱のチームを使うプレイヤーレベル世界トップクラス
を戦わせた場合、果たしてどちらが勝つだろうか?


ここで現実のサッカーの話にリンクさせてみる。

サッカーゲームのキャラクターレベル的な部分、すなわち各選手の、キック精度、ドリブルのボールコントロール力、運動能力、特性(プレーの癖?)、などは現実サッカーにおいてもわかりやすいと思う。

こういう選手をたくさん育てたり集めたりというレベルアップ方法も想像しやすいはず。


ではサッカーゲームのプレイヤーレベル的な部分は現実サッカーでは何になるのか。

例えば、パス能力が高いキャラでも、どこにパスするかを間違えたりパスをするまでに迷ったりしてしまえば、相手に奪われやすくなってしまう。
例えば、毎回左サイドから突破されて決定機を作られているのに、そこをケアしなければ失点の確率が高くなってしまう。
例えば、1点差で勝っている試合での最後のロスタイムに油断して失点してしまえば勝ちを逃してしまう。

つまりプレイヤーレベルが高い人はここを間違えないから強い。
これを現実サッカーで言うなら、試合で起きている状況を正確に把握して、「なんのために、いつ、どこで、だれが、なにを、どのようにやるか」を判断する的確さと、それを実行する際のメンタルコントロール力の高さがプレイヤーレベルと言える。

選手個人としての状況把握と判断とメンタルのレベルもあるし、チーム単位での状況把握と判断とメンタルのレベルもある。
実際の試合に勝つためのレベルアップであれば、1人だけを操作するゲームとは違うので、個人とチームの両方のレベルアップが必要だ。

(と言ってはきたものの、パス精度一つとってもそこには、キック精度などのキャラクターレベル的な要素もあるし、プレッシャーの中でどこを狙うかなどのプレイヤーレベル的な要素もあるので、はっきりとは分けられないが、そこはとりあえず置いておいてほしい)



さて、では日本サッカーという単位では、キャラクターレベルとプレイヤーレベルのどちらのレベルアップに力を入れているだろうか。

日本の育成の集大成である日本代表の試合を見る限り、日本ではキャラクターレベルを上げる方向の育成戦略をメインとしていると考えている。
多くの日本代表戦では「自分達のキャラクターレベルが高ければ勝てる」という戦術でプレーされているように見えるからだ。
「前線で収まるから形にこだわらずまず縦に出す」
「相手のボールを動かすスピードより速く走れるから追いかけ回す」
そういうキャラクターレベルを前提としたプレーが散見する。
おそらく日本代表選手のほとんどは、自分がドリブルで抜ければ、当たりで勝てれば、最後まで走り続けられれば、という方向で自身のレベルアップを図ると思う。

各年代の育成カテゴリーにおいても、キャラクターレベルの向上を目指したトレーニングがメインで、指導者も選手も保護者もプレイヤーレベルよりもキャラクターレベルに多くの関心を持っていると感じる。
SNSでも「キャラクターレベルの上げ方」「このキャラクターレベルはすごい」というアプローチの方がバズるはず。

数年前の育成の結果である"現"日本代表も今の育成年代も、同じ方針とは言わないまでも、同じ価値観で指導されている。
そう、日本サッカーはキャラクターレベルの向上という道を進んでいる。



少し話は変わって自分の話。
筆者は普段、小学生を相手にプレイヤーレベルの向上をメインに指導している。
キャラクターレベルは上げないの?と思うかもしれないが、プレイヤーレベルを上げて行く過程でキャラクターレベルも勝手に上がって行く、という考えだ。(もちろんそこに全くアプローチしないわけではないが)

「ではなぜそんな考えに至ったのか?」に答えるとなると「様々な知識と経験を得てきた結果」となってしまい、その様々な知識と経験の詳細を説明すると長くなってしまうので、ちょっと違う言い方で。
例えば。試合ではプレイヤーレベルとキャラクターレベルの両方の向上が期待できると思うが、ではダッシュやドリブルの技をひたすら反復するようなキャラクターレベルにフォーカスした練習で、プレイヤーレベルの向上は期待できるだろうか?
例えば。ロナウジーニョ、メッシ、ブスケツ、Cロナウド、セルヒオラモス、ポグバ、ノイアー、などなどサッカー界でトップクラスのキャラクターレベルの選手達は、キャラクターレベルの向上をメインとした指導で育ったのだろうか?

こんな例でなんとなく考えをわかっていただければ幸いだ。

ゲーム内最強のチームを使うプレイヤーレベル素人(1〜2ヶ月プレー)

ゲーム内最弱のチームを使うプレイヤーレベル世界トップクラス
を戦わせた場合、果たしてどちらが勝つだろうか?

そして前述したこの質問。筆者としては後者を支持する。
ゲームをやったことがある人ならわかっていただけるのではないか。

またキャラクターレベルにはある程度の限界があるとも思っている。
ゲームとは違うのでMAX99までというようなことは無いが、例えば「正確に蹴る」には上限があるだろうし、走る速さや身長などの身体的な能力も上限があるだろう。

それに比べてプレイヤーレベルの部分では限界などほぼ無いと考える。
サッカーでは試合で同じ状況になることはまず無い。相手のキャラクターレベルも毎回違うし、そんな選手達22人+ボール1個の動きは無限とも言える。
「その無限とも言える全ての状況で最適解を出し続けられる」というのが上限に当たるだろうが、そこに辿り着くことはキャラクターレベルの上限以上に不可能だ。ゴールが見えない。

また、指導という面においてだが、キャラクターレベルの向上に固執してそこにしか価値を見出せない環境を作り出してしまうことで、プレイヤーレベルは高いがキャラクターレベルが低い、というような選手がどんなに勝利に貢献していても指導者はおろか仲間にも評価されずに自信を失っていく、そんな現場を何度も見たことがある。

そして、例えばゲームで、最強のキャラクターを使って勝負するより、いろいろと足りていないキャラクターをやりくりして勝負する方が、楽しかったりしないだろうか?
筆者はそのやりくりが楽しいと思うタイプだし、絶対的な強キャラの定義が難しくそれを用意しづらいサッカーというスポーツの面白さの一つが、そのやりくりだと捉えている。
「相手よりも圧倒的に強いキャラクターを揃えて勝ちました」のようにキャラクターレベルのみで勝敗が決まるようでは何も面白さを感じない。
もちろん、やりくりしながら強いキャラクターを揃えていく過程は面白いが。

これらの考えから、筆者としてはプレイヤーレベルの向上をメインとした指導をお勧めしたい。
とはいえ

プレイヤーレベルトップクラスの人がキャラクターレベル最強のチームを使うことが最強への道

は間違いないので、プレイヤーレベルだけを見ることが無いようにもしたいが。



と、お勧めしてみたものの、こんな筆者と同じような価値観を持った人は日本サッカー界ではおそらく少数派。
なぜならキャラクターレベルばかりに注視する文化が根付いているから。
保護者だけでなく多くの指導者もキャラクターレベルについてばかり言及し、選手達は自ずとキャラクターレベルばかりに価値を見出すようになる。
そうやって育った選手達が保護者や指導者になれば、またキャラクターレベルこそが重要という認識がねずみ講のように拡散されていく。
すでに日本で確立されたこのループを今更断ち切ることはとても難しい。

そんなところから思ったことがある。

これからの日本サッカーは、
『プレイヤーレベルの向上を犠牲にしてでも、キャラクターレベルで他国を圧倒するレベルに達することで、W杯優勝を果たす』
という方針こそが、あるべき姿なのでは無いかと。

キャラクターレベルの向上こそが、日本が極めるべきやり方なのだと、現状の文化から考えた。
プレイヤーレベル重視は多分この国にはなじまない。

そして他国ではプレイヤーレベルの向上に力を入れていると感じる情報が多い。
そんな他国と同じことをしていては強豪国に一日の長がある。
だったら日本は日本の価値観にあった独自路線を突っ走れば良い。


キャラクターレベルにはある程度の限界がある

などと言ったものの、その限界まで極めた、ゲーム内で全ての項目が99に査定されるような選手などいなかったはず。
自分で勝ち方を見つけられるような先天的にプレイヤーレベルに優れた選手達に、そのキャラクラーレベルを極める指導が合わさったときには、最強のキャラクターが完成するかも知れない。

方針をそれと決めたら、あとは、ずっとキャラクターレベル重視なのに今だにロナウジーニョの1人も生み出せていない指導方法を見直して、ぶっちぎるしかない。

誰にも当り負けずトップクラスの速度で90分動き続けられる身体、バランスと反応に優れてどんな状態でもスムーズに体を動かせる神経、ハイスピードの中でも思い通り自由自在にトラップやドリブルができるボールコントロール力、数十メートル先でも1mm単位で狙って速いボールを蹴れるキック

そんな能力さえあればプレイヤーレベルが低くても十分に勝てるだろう。

そこを目指す方針でどうだろうか。
これならきっと日本の多くの指導者、保護者、選手のイメージに合うだろうし、理解もしやすいので、取り組みやすいのではないだろうか。



筆者がそのやり方に傾倒することはないが、日本サッカーはもうそれで良いのかも知れない。
そんなことを思った代表ウィーク。


終わり

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