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【勝負とは】 『しくじり先生 那須川天心 世界一のボクサーメイウェザーを舐めていたらボコボコにされちゃった先生』を見て

2018年12月31日に行われた、那須川 天心 vs フロイド メイウェザー の試合について、天心本人がしくじったことをTVで告白。
そんな番組を見ての感想。


メイウェザーは試合に対していろんなことを仕掛けてきたとのこと。
ちなみに天心とメイウェザーとは、キックボクシングとボクシング、5階級の体格差、と、競技も体重も全然違うので、どのような条件で戦うかは重要なポイントとなる。


【メイウェザーが仕掛けてきたこと】

「俺は別に試合しなくても良いんだぜ」の立場を利用してくる。

①試合をやる契約書まで交わしていたのに、SNSで「試合やるなんて言ってない」と言う
→対等ではないと言う立場をハッキリさせ(印象付ける)、条件を要求しやすい状態を作ってくる。

②(メイウェザーが仕掛けたかどうかわからないが)ボクシングルールに決まる
→天心は「どんなルールでもやります」と言ってしまう。立場の差が出てるし、勝負への向き合い方の差が出たとも言える。これに対して番組内では「かっこいい」振る舞いとなってしまっているが、勝負なのに勝つために貪欲にならずにわざわざ相手に有利な条件を飲むことは「かっこいい」のか。

③試合1週間前に「キックしたら1発罰金5億円」と言う
→相手がやってきそうなことに先手を打つとともに、金額でプレッシャーもかける。人生をかけて身につけてきた習慣で「うわっ、クセで蹴っちゃった」ということすら許さないこのプレッシャーは、相手の動きにストレスを与える上でとても効果的。

④試合が迫った頃に「足でフェイントしたりジャンプしたら罰金5億円」と言う
→実際に天心がこれをやろうとして練習していたとのことだが、これも先手を打たれる。このタイミングを狙っているのかわからないが、契約時に最初から言うのではなく、相手がルールの隙をついて対策したであろうこのタイミングで言うことがとても効果的。

⑤計量で「俺はもう量っといたから」と言って体重計に乗らない
→体重の差はボクシングにおいて重要な要素(重い方が強い)なのに、その情報を相手に与えないばかりか、体重を調整するための余計なストレスも無しで試合に臨める状態にした。

⑥試合直前に銀座で買い物をして大遅刻
→ここでも立場の違いを見せつける。早めに会場に入って最高の状態にしようとする天心に対して、さらなるストレスを与える。今までのメイウェザーの振る舞いでストレスが相当な状態の天心にとっては既に「最高の状態」など無かったであろうが、そこに追い打ちをかける形になった。

⑦メイウェザー陣営が「バンテージの下に凶器を仕込んでいる可能性があるから巻き直せ」と言って巻き直させる
→もう試合だと言う時に、巻くのに40分以上かかるバンテージを巻き直させ、慌てて試合に向かわせて、ベストなメンタルを準備する猶予も与えない。この時「巻き直しを拒否はしたが受け入れてもらえなかった」と天心は言っていたが、それも立場の違いを利用された形となる。

⑧試合開始直後、ノーガード&ヘラヘラ顔でおちょくる
→イライラがMAXの状態の天心に対して、更に精神状態を悪くするような行為をする。天心は「頭が真っ白になって元々考えていたゲームプランを無視してペース配分無視のラッシュを仕掛けた」と言っているので、とても効果があった行動となる。

そして天心の良いパンチが当たったことで本気の姿を出したメイウェザーが天心を1ラウンドでKOする。
その本気のメイウェザーは天心に恐怖心を抱かせたとのこと。


【勝負とは】

メイウェザーがどこまで狙って事を進めていたのかはわからないが、メイウェザーは勝負事で最強の『ルールを作る側』に立っていた。
天心サイドはそのルールの中でどうするかを考えることしか出来ない。
しかもルールはどんどん追加変更される。
もし天心がこの試合に勝ったとしても、試合後にいろんなルールを言い出されて、良くて無効試合、最悪罰金もありで天心の反則負けにされていたかも知れない、と思える。
子供のカースト上位が自分が不利になった途端に遊びのルールを急に変えてくるかのように。

天心が相手を舐めていた、と言うより、メイウェザーに比べて勝負というものに対して何も考えていなかった、と言わざるを得ない。
相手や試合じゃなくて勝負というものに。
ただそれは、天心が悪かったと言うより、天心がおそらく苦手としているであろうリング外の出来事において、有利になるようなルールはまだしも対等なルールを引き出せなかった天心のチームの問題だったかもしれない。

天心は最初の「立場の違い」という最強のパンチで既にKOされている状態だったと言える。
そのパンチの対策をせずに挑んだ試合が、勝つつもりの無い記念試合というのであれば、今回のルールで試合を受けたことも納得。
だが、天心は絶対に試合に勝ちたかったと思う。
勝負事なのか、そうじゃないのか、それによってするべき振る舞いは変わる。
自分がかっこいいと思う振る舞いを極めたり、自分が満足する内容を求めたりするのも良いが、勝ちたいのであれば、それらが勝ちを求める行為になっているのかどうかを塾考することはとても重要だと思う。
今回の試合が「良い試合をしたい」ではなく「試合に勝ちたい」というものであったのなら、「不利な条件でも挑む」という思考ではなく「試合をいかに有利な状態で始めるか」という思考が必要だった。

そして勝ちたかったら「どんな勝負をしているのか」を真剣に考えなくてはならない。
何を持ってして「勝ち」とするか、ここも重要だ。
目の前の試合で勝ちという判定をもらえれば「勝ち」なのか、はたまた、より多くのファンを獲得した方が「勝ち」なのか。
メイウェザーはより儲けた方が「勝ち」の勝負を天心とは関係の無いところでやっていたのかもしれない。
そのために、ある程度有名な選手との試合での圧倒的な勝利が必要だったというだけで、勝負の方法や試合の内容へのこだわりなど持ち合わせていなかったのでは無いだろうか。
つまりメイウェザーにとって「試合」は「勝負」の一部に過ぎなかったということ。
メイウェザーは試合のルールで戦っているのではなく、もっと大きなルールで戦っていたので、試合のルールなんかはいくらでも変更する。
天心はひたむきに試合について最大限ベストを尽くそうとしたとは思うが、メイウェザーはそれだけで戦える相手では無かった。
多くの人の美学には反するかも知れないが、勝負事とはこういうものだと思うし、私の価値観ではメイウェザーの方が真剣に勝負をしていたなと思う。


終わり

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