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もやもやもやもや

もやもやする。とてももやもやする。
ジレンマに陥って、また自分が分からなくなりそうで。

どうして私はこんなに一筋縄でいかないんだろう。

わがままで、頑固で、面倒くさい。
自分のことながら、呆れてしまう。


昨日はバイトの面接に行った。

毎日の日課になっている求人検索をしていて目に入った、車で20分くらいの所にある老舗の本屋さん。

時給は最低賃金ギリギリでだいぶ安いけど、『シフトの融通がきく』『週3からOK』『9時から17時の間で4~5時間の勤務』と、条件が(Wワークを考える私にとって)とてもいい。

そしてなにより応募の決め手となったのが、『本だけでなくCDも取り扱っている』ということだった。

前職で接客がトラウマになり、できることならもう二度とやりたくないと思いながら辞めた。でも、もしまた自ら接客をやりたいと思うことがあるなら、募集されている仕事の中に"好き"で"面白そう"なポイントを見つけられたときだろうなと思っていた。CD販売はまさにそれだ。


約束の時間になり、お店の人に声をかけると従業員専用の部屋に通された。
机と椅子がぽつんと置かれていて、売り場でにぎやかな音楽が流れているとは思えないほど静まり返っていた。

「これを書いてお待ちください」

紙とペンを渡される。紙には"契約書"と書かれていた。

まだなにも話していないのに、もう契約…?と少し不安を感じたが、契約書とは書いてあるものの面接の参考に使うのかもしれないと思い、とりあえず言われたとおり書くことにした。

5分ほどして、ようやく店長が現れた。
「よろしくお願いします」と挨拶を交わし、椅子に座りなおす。

「では、書いてもらったものを見ながらいくつか質問させていただきます」
店長の手元には、いま書いた"契約書"と、部屋に入る前に渡した履歴書が広げられている。

「まずは"申込書"の方ですね。勤務できる時間が9時~17時となっていますが、これはどうしてですか?」

「募集されていた時間をそのまま書いてしまいました…」

「夜は無理ですか?」

夜!? と聞き返してしまいそうになり、慌てて言葉を飲み込む。

募集されていた時間は9時~17時だったし、時間がオーバーすることも書かれていなかったし、他の時間帯の募集もなかったはず…と、求人情報に書かれていた条件を思い浮かべながら、
「19時くらいまででしたら大丈夫です」と答えた。

「そうですか。では、朝はどうですか?」

早起きは大の苦手だ。

「朝…9時より早いということでしょうか…」

「そうですね。一番早い日で6時半なんですけど」

ろ、ろくじはん………!?
前の仕事で稀にあった7時からの日でさえ、死ぬほどキツかったのに。

「……8時…とかでしたら、なんとか……」

モゴモゴと答えたが、正直8時でもキツいことに変わりはない。
たかが1時間、されど1時間。
朝食・支度・通勤時間を逆算しても、9時からであれば起きるのがそれほど苦にはならないが、1時間早まるだけで全然違う。9時がまさにベストなのだ。
それに私はもう完全に9時のつもりで応募してしまっている。

あぁ、朝は苦手なので無理です。って言えたらどんなにラクだろう。
私はいつもこういう時に"NO"と言えない。

だんだん自分のテンションが下がっていくのが分かった。

「履歴書を見ると、色々なお仕事をされている印象を受けたんですが、将来のことはどのように考えていますか?」

…あ、やっと中身に触れてもらえた。

私は、地元では少しばかり名の知れた高校に入ったが、転校して通信制の高校を卒業した。
特別に誇れる職歴や資格があるわけでもない。
正社員として長く勤めていたこともない。

今までにそんな私を雇ってくれた会社の採用理由は、熱意や人間性に興味を持ってくれたというのが大半だった。

書面の経歴やステータスがダメでも、自分がどういう人間か、気持ちや考えを話すことで興味を持ってもらえたら、不利になっているであろうこの状況を挽回できるかもしれない。

そう思った私は、文章を書いていること・今は趣味程度にしかなっていないけど、いずれはそれで生活したいと思っていることを話した。

「なるほど。…では、もし採用させていただいても、ここをメインにという考えではないんですね。分かりました」

………しまった。完全に間違えたああああ。

先方が聞きたかったのは、将来なにがしたいとかそんなんじゃなくて、この店の社員になって働いていく気があるかどうかだったんだ。うわーーー。

最後までこっぱずかしさと変な気まずさを引きずったまま、面接はあっけなく終わった。


事前に徹夜して考えておいた『志望の動機(履歴書に書ききれなかった分)』や『自分の長所と短所』、『どんな本を読むか・どんな音楽を聴くか』『最近読んだ本・最近聴いた音楽』などは一切聞かれることはなかった。

そういえば、一番重要なはずの『どんな仕事をするのか』すらも教えてもらえてないな。
最後に「なにか質問はありますか?」と言われたときに真っ先に聞くべきだったのに、その時にはもう私の中で"ここで働くのは無理だ"と感じていたのかもしれない。

今回はきっと不採用だろうし、その前に私から辞退しようと思う。

面接している人はたくさんいるって言っていたから、きっとお店側からしたら雇うのは私じゃなくてもいい。
朝も夜も出られて社員を目指したい人が、他にいるはずだ。

私も、ここじゃなくてもいいと思ってしまっている。

求人情報に載っていた条件が全てではなかったように、私も履歴書に書いたことが全てではなかった。


家に帰ってから少し落ち込んだ。

まだ全然割り切れてないんだなあ、って我ながらガッカリした。

お金がなければ生きていけない。
お金を手に入れるには、働くしかない。

なのに、どうしてこんなに働くことに前向きになれないんだろう。
「どこでもいいや」「なんでもいいや」って思えないんだろう。

選り好みなんてしている場合ではない。
偉そうに選り分けられる立場でもない。

だけど、だけど。

生きるために働くなら、仕事すらも生きるモチベーションにしたいと思ってしまう。

なんてわがままで、頑固で、面倒くさい人間なんだ。


1マス進んでは1マス戻って、今の私はスタート地点で足踏みしているだけだ。

一体いつになったらもう1マス進むことが出来るのだろう。

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