3月の雪

ついこの間年が明けたばかりだったのに、気付けば3月ももう中旬だ。
時間が過ぎるのは早い。
冬なんて、あっという間に過ぎ去ってしまう。

できることなら、ずっとこのままがいい。
寒いのは好きではないけど、暑いのよりは何倍もマシだ。
太陽に照らされていると、逃げ場がないような、何かを急かされているような気持ちになる。

反対に、月や星を見るととてもほっとする。
冬の澄んだ夜空は、どんな時も私を包み込んでくれる。

季節が巡るのは当たり前なのに、いつまでたっても慣れない。
冬の終わりは、いつも感傷的になってしまう。

春が苦手なのは、花粉症だからというだけではない。
動物も植物も眠りから目覚めて、そこかしこに生命力が溢れている。
人間には出会いや別れがあり、人生をアップデートする季節だ。

みんな忙しそうで、とてもキラキラしている。


昔、小学校で持久走大会があった。足の遅かった私は一人で最下位になるのが嫌で、その時期が近付くと友達に「頑張ってついていくから、一緒に走ってくれる?」と約束を取り付けていた。

最初は喋りながら一緒に走っていたはずなのに、だんだん歩幅を合わせるのがキツくなってきて、気付いた時にはもう誰の姿も見えなくなってしまった。

本当はあの時も、頭では分かっていたのだ。大事なのは順位よりも前に進むことだ、と。どんなに頑張っても足の速い人には追い付けないことも、私には私のペースがあることも。
それでも、寂しくて、心細くて、誰かの姿を見ることで安心したかった。

私は今、ちゃんと走れているだろうか。誰の姿も見えなくても、前に進むことを放棄してはいないだろうか。


先週末、雪が降った。もう冬は終わったと思っていたのに。
規則的に降りしきる粒を眺めていると、次第に心が落ち着いていくのが分かった。

3月半ばの雪は、春の訪れに焦る私に、深呼吸する余裕を与えてくれた。

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