あなたがつくる本気が見たい

中学生のとき、「ハリウッド女優になりたい」と言って両親をどん引きさせたことがある。

意外だねと言われるけれど、わたしはとにかく目立ちたい人だった。

この世に生まれ落ちたからには、できるだけ多くの人に自分の存在を知ってもらい、良い影響を与えることができなければ、わたしが生きている意味はないと思っていた。

元を辿れば今の仕事だって、その延長上での選択だ。

周囲からも「どうせなら有名になれ」と言ってもらえていたし、どうやったら有名になれるか、ということにずっと縛られ続けていたような気がする。自分で書いてて恥ずかしいけど。

でもずっと、「これってなんか違う」とも思っていた。

で、なんで違ってたのかやっと気づいた。

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「より多くの人に良い影響を与えたい」
これはまぁ、合ってる。

=「わたしが有名にならなきゃ」
これがちょっと、なんていうか、阿呆だ。

自分一人が有名になって影響を与えられる母数なんて、たかが知れてる。

そうじゃなくて、自分が何かお手伝いすることで有名になれる(他者に良い影響を与えられる)人を増やすことができれば、もっと意味があるんじゃないだろうか。

そもそもわたしは「個」として有名になることに、性格上ぜんぜん向いていない。

そんな、本来ならすぐに辿り着いたであろう答えを、最近になってやっと見つけた。

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去年から小さなメディアの編集担当をまるっと任せられるようになって、「ライターさんたちの自己肯定感とモチベーションを上げれば、良いコンテンツが生まれやすくなる」という仮説を立ててみた。

(ちなみにこれは、わたしがめちゃくちゃ怖い編集者さんとお仕事した時に何も書けなくなった原体験から来ている)

現時点でこれは良い線いってると思っていて、当初は未経験だったライターさんたちの実力はめきめき上がっている。もちろん本人の努力もある。すごい。

そして、自分自身がライターのお仕事をもらう時に「この編集者さんすごいなぁ」と思う人はだいたい、書き手の自己肯定感とモチベーションを上げるのが本当に上手なのだ。

なんかこれってすごくいいと思う。
だってみんなしあわせだもん。

そしてもうひとつ、
今年になって、今まで自分のキャリアとして想像もしていなかった「ライター講座の先生」案件がいくつか飛び込んできた。

件の「自分一人で有名に?問題」に終止符が打たれたのは、このありがたい出来事が大きいかもと思っている。

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「ライターになりたい」と思っている人の背中を押して、その人たちが世間に良い記事を届けられるようになるって、なんて素敵なんだろう。

これって、いくら自分が頑張って良い記事を書いても絶対に出せない価値だ。

自分が、人が何かを生み出す時の支えになれたらすごいかもしれない。

そしてそれは、自分のアウトプットすらもより良いものにアップデートしてくれるような、栄養のある経験になりそうだ。

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ということで、これからは「その人の能力をスパークさせられる存在」というのがひとつの目標になりそう。

これってもはや相手がライターさんじゃなくても同じで、最近は「音楽作ってる人にめちゃめちゃ気合の入った文章を書いてもらいたい」熱があったりする。

そういう「独自の美学や哲学を持ってるけど公に文章にしていない人たち」が安心してアウトプットするための立ち位置ってめっちゃたのしそう。

直近ではこれまで通りメディアの編集者としてそういうことをやっていきたいけど、将来的には特にこだわらずに、空間とかプロダクトとか、なんでも良い気がする。

あらゆるジャンルのクリエイターが本気になれる環境を編集してみたい。

そういう経験ができてからの自分は、いったいどんな文章を書くようになるんだろう?というところにもわくわくする。

「あなたが本気でつくった世界を見せて。そんで一緒にみんなに届けよう」
ってスタンスで、支えながら自分でもアウトプットするくらいのバランスがわたしにはちょうどいいかも。

そんなことを最近は思っている。

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