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お名前バッチは"かおりちゃん"

個展会場が浅草にあって、今年は何度も浅草に通いました。
浅草はオリンピックのために二、三年くらい前からいろいろなお店がきれいになったりしていて、なかなかモダンなおしゃれさが生まれ始めておりました。
「これは海外の方たちがいらっしゃったときに楽しいだろうなぁ」
なんて思っていたのに、
2021年のオリンピックイヤーにはコロナの影響でシャッターが降りている場所が増えてしまっていました。
昨年末にギャラリーに打ち合わせに行った時よりもさらに閉店しているお店が増えたような気がします。
なんだか悲しくなって雷門から浅草寺まで歩く足が途中で止まってしまいました。

缶バッチ

ふと開いているお店を見ると、懐かしい”ネーム缶バッチ”がまだ販売されているのが目に入りました。

その昔、まだ私がすごく小さかったころ、祖父と観光地へお出かけしていたらこの缶バッチが売っていました。
人はどうして"お名前○○"があると自分の名前をさがしてしまうのでしょう?
私も勿論探してしまいます。
「しおりちゃんはあるかな~?」
幼い私も端から端まで探しましたとも。
姉のはみつかったので、私のも見つかったら祖父が買ってくれると言ってくれました。

しおり、、、しおり、、、、、、し、、、、お、、、、、、、、し、、、

今でこそしおりちゃんって名前の子が増えましたけど、私の子供時代はあまりいなかったのです。

しおり、、、しおり、、、さおり、、、、、かおり、、、、、、、

ありません。
どこを探してもありませんでした。
「さおり」や「かおり」はあるのに、「しおり」はありません。
なんだかハブられたような気分。ガッカリです。
せっかく祖父が買ってくれるというのに、です。
何度往復してもありません。

残念がる私に祖父は
「これでもいいか?」
と手渡してきました。

”かおりちゃん”

なんでやねん!

心の中でぎゃふんと叫びましたよ。
ぎゃふんってこういう時に叫ぶんですね。
ないからってなんでかおりちゃんやねん!
誰やねん、いらんねーーーーん!

でも祖父はニコニコ。
関西人の私も、さすがにたまに会う静岡人の祖父に大きな声でツッコミを入れることはできません。
割と空気の読める子なんです、しおりちゃんは。

「う、、、、うん。」

そういって買ってもらった”かおりちゃん”
大人になって家を出るその日まで
宝物入れ(マキシムドパリの赤い箱)にそっと入れておりました。
ええ、もちろん一度もつけることはなく、
しかし最高の思い出と共にひっそりとね。

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