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『エスパー魔美』のエスカルゴ

漫画で物語を語るとき、藤子・F・不二雄先生の作品は「まとまり」の最高峰と思います。落語を研究されており、物語の導入からの展開、オチに至るまでの流れがとても端的で、起承転結に集約されたな見事な配分に惚れ惚れしてしまいます。すべての作品が展開の教科書のようです。

しかしここでは「展開」の話は関係ありません。

「エスパー魔美」という作品の中で、魔美たち家族が銀座のメキシムという最高級フランス料理店へ出かけるエピソードがあります。非常にお高いお店です。メニューブックがありますので以下に掲載します。

藤子・F・不二雄大全集「エスパー魔美」3巻152㌻

このように、高い店ですので、魔美たち家族もそのあと当分フリカケだけで生活する覚悟でした。
おそらくコース料理を注文したと思うのですが、そこで「エスカルゴ ブルゴーニュ風」が出てくるわけです。

藤子・F・不二雄大全集「エスパー魔美」3巻153㌻

エスカルゴのブルゴーニュ風というのがどういう料理かというのをネットで調べますと、フランス産のエスカルゴをチキンブイヨンやブランデー・玉葱とともに数時間煮込み、殻に詰めたもので、ガーリックの効いたバターが美味しさの秘訣とあります。めちゃくちゃ美味しそうです。たまりません。

藤子・F・不二雄大全集「エスパー魔美」3巻153㌻

エスカルゴトングで殻をはさんでミニフォークで身をほじって食べるようです。魔美が高価さに緊張して震えながら不器用そうに器具を使って音を立ててしまっています。おそらくこの所作のリアルな描写も、「美味しそう」という感慨・共感に大きな役割を担っていると思います。

子供のころにこれを読んで「エスカルゴが食べたいッ!」ってなって、どうしたらエスカルゴを食べられるのか、何日も思いを巡らせました。強く憧れました。「エスカルゴ」というよくわからない未知の料理の耳ざわり。このコマを何度見つめたことか。
梅雨になって、道ばたの垣根にカタツムリが這っているのを目にしたとき、電撃を食らったような気がしました。アルキメデスがお風呂で浮力の原理を発見したときに「エウレカ!」と叫んだと言いますが、まさしくあのときは「エウレカッ!」です。その衝撃といったらなかったですよ。梅雨時なんてそこら中がカタツムリなわけですからね。食べようと思ったら食べれるわけです。しかし「コレを食うのか…?」です。
いまだにエスカルゴ食べたことありません。サイゼリヤ行ったら食べれるみたいですけど、わざわざ注文する気になれないんです。カタツムリですもんね。
そういや最近はもうカタツムリもあまり目にしなくなりました。数が減っているのか目が行かなくなっているのか。大人になったということでしょうか。

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