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『ドラえもん』のノビジュース

『ドラえもん』で「味わい深さ」を語ることはたくさんあるんですが、とりあえずは「ノビジュース」のについて、直接的に語りたいと思います。

単行本20巻に「へやいっぱいの大ドラやき」というお話がありまして、ドラえもんが「水からドラやきを合成する菌」を研究・開発しようとします。「イキアタリバッタリサイキンメーカー」という機械を使って388種類の菌を作るのですが、すべて失敗。

イキアタリバッタリサイキンメーカー
藤子・F・不二雄『ドラえもん』20「へやいっぱいの大ドラやき」より抜粋


のび太が引き継いでイキアタリバッタリで新しい菌を開発していき、どれも「ろくなのがない」という結果かと思いきや、あるシャーレの中に木の葉が菌によって水みたいに溶けたものがありました。のび太がなめてみると甘くて「うまい‼」かったのです。のび太はこれを「ノビジュース」と名付けて売り出そうと思いつきます。
以下にそのあたりを掲示いたします。

藤子・F・不二雄『ドラえもん』20「へやいっぱいの大ドラやき」より抜粋

ドラヤ菌からパラレル未来を感じる

結局、偶然できてしまった「ドラヤ菌」という菌によってのび太のノビジュース販売展開構想はうやむやで終わります。
少し余談なんですが、「ドラヤ菌」というのは、ドラえもんの弁によれば「空気があるかぎり無限に大きくなり、ついには地球をおしつぶすおそろしい菌」とのことでした。事なきは得ましたが、ドラえもんはこの菌の存在を知っていながら「水からドラやき」の開発を目指して菌の研究をするわけで、やっぱりことがドラやきのこととなると、あのいつも理性的なドラえもんをいとも簡単にマッドな感じにさせてしまうわけです。
 ちなみにこのドラえもんの発言なんですが、「地球をおしつぶすおそろしい菌」とのことなんですけども、「地球をおしつぶすといわれるおそろしい菌」という言い方をしなかったことがとても気になります。予測ではなくて結果? こわい。「ドラヤ菌によって膨れ上がったドラやきが地球をおしつぶしたことが(どこかの)未来にあった」ともとれます。パラレル未来の話です。
 人間の科学力はどこまで進むかわかりませんけども、ドラやきによって文明が滅亡するような未来は選択したくありませんね。

これこそ味のない味=ノビジュース

さて、ノビジュースです。
ノビジュースの味については以下のように議論されております。

以前、川崎市藤子・F・不二雄ミュージアムにて「ノビジュース」が公式商品としてカフェのメニューにあったらしいです。でもそれが、つまりグリーンスムージーテイストであったので、ファンのあいだで議論になったと。
菌が発酵させてできてるから発酵飲料だとか、炭酸系ではないか、とかいろんな意見が散見されました。非常に面白い議論でありました。

僕はといえば、子供のころにこの話を読んで、ノビジュースがすごく美味しそうで、「飲みたい、飲みたい、飲みたいッ!」となって、穴が開くほど熟読するうちに、頭の中で味を想像できるようになりました。それは発酵飲料のような味ではなく、炭酸でもありませんでした。
まあ、こんなの人の自由なんですけども、僕が想像した味は理屈ではなくてですね、今までに味わったことのない味で、つまり葉っぱ系の味はしないわけです。コーラにとって替わるような、深みのある甘さと爽やかさを併せ持っており、それでいてほんのわずかなとろみがあり、のど越しがややまったりしつつも、鼻から抜ける清々しい味覚も含めて鮮烈な味でした。なんと表現してよいかわからず、いずれチャンスがあればこれを実現したいと思いました。できませんでしたけど。
ロッテのガムで「ミントブルーガム」というのがあったんですが、ちょっとだけ近い気はしました。

この味は何度も何度も繰り返し思い返しては味わったので、今でもはっきりと憶えています。そして、今の今まで現実に味わえない味です。

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