古い物件には味がある

3年前、賃貸物件を探していた時に不思議な間取りの3DKの物件を見つけた。
正確な造りは覚えていないけど、ダイニングキッチンに隣接する形で3つ部屋が繋がっていたように思う。
駅からは遠いし、交通の点に関しても周囲の環境に関しても「ここは無理だな」と感じていた。
けれど、物件を眺めること自体は楽しいので彼に「見て」と携帯を差し出した。(この時はまだ夫と籍を入れていなかった)

私たちはとにかくお互い荷物が多い。
ゲーマーでフィギュア収集が好きな夫と、コスプレイヤー(休止している方が多いが)でぬいぐるみと服が好きな私。
この時点で、二人の間に収集癖というか、仮に物が少ない状態で入居してもあっという間に部屋が狭くなっていく想像は容易にできる。
そんなわけで、家賃と交通の便の他、部屋数や広さも十分必要になる。だから、はじめからその物件は視野に入れていなかったのだけど、彼の悲鳴のような台詞のお陰で私は思わず噴き出してしまった。

「えー、やだ!そんな家庭内別居みたいな部屋!」

私が提案したのは真ん中の部屋を物置か寝室にして、両サイドを自分達の部屋にしたらどうかというものだった。
お互いがそれぞれ好きなことに集中するのは目に見えていたから。
でも、彼はそれを家庭内別居と呼んだ。たった一つ真ん中に部屋を隔てているだけで。
私はそれがおかしくて仕方なくて、暫く笑い続けていた。
この人、ちゃんと私のこと好きなんだなと思った。

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