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断面ハノイ/第4回『ホーチミンの桃色カフェ』

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真っ赤っかのインテリアが美しいカフェです。
Webをいろいろ見てたらInstaの広告に突然出てきました。AIちゃんが選んでくれたんでしょう。
Google Mapを使えば家から1,500km離れた路地裏の古いビルの3階にあるカフェにも迷わずに行くことができます。まったくもって前世紀には想像もしなかった便利な世の中になりました。

ここはドンコイ通りの脇道沿いの古い建物の中にあります。所謂改造カフェです。ホーチミンにはこの種の店がたくさんあります。
古い木の階段を上っていきますがビルの3階なのに階高は5階分くらいあります。ひーひー。ビルによっては有料エレベーターがありますが、ここはありません。

暗い廊下を進むと突き当りにこの店の入口の真っ赤なリボンがライトアップされているのが見え、オヂサンが来るような店じゃないことに気付きます。
そこを何も考えずにするりと入ると壁は全部真っ赤。

オドロキつつ奥を見ると窓際は吹き抜けになっていて一気に満員電車から降りたような開放感が得られます。
天井は大きなアールがMezzanineに人を誘うように立ち上がっていて、階段を上ると意外と広い客席スペースが広がっています。
この流れるような空間の連続感はなかなか見事です。

広さは昔の団地の2DKくらいで、違うのは窓際の一皮以外を全部Mezzanineにしていることです。2DKの中に3LDKの間取り、みたいな。
Mezzanineは床が増えるからいいこと尽くめ、かというとそんなことはなく、天井が上下ともせいぜい2mちょっとになるので、普通なら窮屈な感じになります。2段ベッドの寝台列車みたいな。
それをいかにキモチよく見せるかがデザイナーの腕の見せ所です。ここは入ってまずビックリさせるという仕掛けです。ただそれだけじゃありません。

壁の色をよく見るとキッチンを取り囲んでいるおむすび型の穴が開いた壁はややピンクがかっています。この壁はまっすぐじゃなく微妙に曲がっています。
床はレンガなので壁と同系、トイレとMezzanineの床は白っぽいテラゾーです。
家具は真っ赤っかと濃い紫が混在しています。窓際の席の丸テーブルがなぜか真っ白で、造り付けのキッチンカウンターとアール天井も白です。
赤と白を組み合わせることでコントラストを際立たせ、赤がより真っ赤っかに見えます。

とはいえこの空間の面白さは真っ赤っかの色ではなく、天井、Mezzanine、キッチン壁の組み合わせが作り出す立体的空間です。
窓に向かって一気に曲がり落ちる天井をMezzanineから見ると視線を下の方に誘導して、窓の外の緑を見やすくしています。平らな天井だったら正面の壁にぶつかってあえなく下に落ちます。

席は吹き抜け部分にわずか2テーブル4席、階段下の壁沿いにも2テーブル4席、Mezzanineには16席くらいだったかな。あと入口を入ってすぐのところにアルコーブ状のカップル席があります。
この狭さでは十分とれています。家賃とか、気になるところです。老後にこういうカフェをやってみたい、って言うか既に老後か。いや死ぬまで現役なんでそのうち、、

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