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【BIM/3DCAD】展開図を比べてみた

3DCADやBIMソフトが普及してきたため、建物の各情報や立体的な整合性を設計段階のモデルそのもので見て確認できるようになってきていますが、今も現場レベルでは2D図面の出力が必須です。

3DやBIMはデータを適切に入力できれば、多種多様な情報を広く横断的に確認できるため、設計者にとっては非常に便利です。しかし、施工者、特に専門工事を行う各業者の視点に立てば、そもそもBIMソフトを持っていないし、その業者だけに必要な情報だけを見られれば十分という、相反する需要があります。

BIMモデルから2D図面を切り出す必要がある

設計用のBIMモデルに情報を継ぎ足していく形で詳細度を上げていき、完璧な一つのモデルにまとめて管理する考え方がありますが、各専門工事業者まで一定の習熟度で同じBIMを扱えるようにしていくのは難しく、またBIMソフトも高額です。ほとんどの場合には設計段階で作成した3Dモデルから2D図面に置き換えて図渡しし、その結果を受けて設計側でモデリングしていくというフローになりがちだと思います。

今回は内装業者が見るための展開図を出力する方法をRhinoceros、Revit、ARCHICADで比較してみました。
展開図は量が多くて手間がかかるため、各ソフトでのハンドリングや図面化までのフローをざっくり押さえて、どのソフトで作図するのが楽なのか、それぞれの特徴を見てみました。

Rhinocerosの場合

Rhinocerosで作成した展開図の見え方は次のようになります。
簡単なマテリアルを当てたレンダリングビューとしています。
寸法、文字、レベル線は手作業での入力です。

Rhinoceros7 レンダリング表示

レイアウトの作成手順は次のようになります。

  1. 壁オブジェクトに平行なCPlaneをつくる

  2. 1で作ったCPlaneに合わせてビューを「プラン」に設定する

  3. 2のビューを名前の付いたビューとして保存する

  4. レイアウトビューの各ビューポートに3で作ったビューを設定し、表示範囲を調整する(幅・高さ)

  5. 1のCPlaneに平行なClippingPlaneを作る

  6. プロパティーから、ClippingPlaneの対象範囲を対応するビューポートのものに限定させる

大まかに6つの工程を踏みます。1つの展開図に対してこの操作が必要なので、1部屋で4面作成する場合は4回これを繰り返します。
Grasshopperを組むことで1~3の工程はバッチ処理で自動化することが可能なので、手作業の工程は4~6に抑えることができました。

Revitの場合

Revitで作成した展開図の見え方は次のようになりました。
今回、マスターモデルをRhinocerosで作成しているので、マテリアル未設定のシェーディング表示としています。レベルは自動生成されたものです。

Revit シェーディング表示

レイアウトの作成手順は次のようになります。

  1. 展開図を作りたい部屋に「展開図ツール」のオブジェクトを配置する

  2. 展開図ツールの矢印をクリックして、展開図を作成したい方向にチェックを入れる

  3. 立面図(展開図)ビューで各ビューポートの表示範囲(幅・高さ)を調整する。奥行きは平面ビューで調整する

  4. 展開図用のレイアウトシートを作成してビューポートをドラッグアンドドロップで配置していく

Revitの展開図作成フロー

ARCHICADの場合

ARCHICADで作成した展開図の見え方は次のようになりました。
今回、マスターモデルをRhinocerosで作成しているので、ARCHICADに取り込んだ時にオブジェクトがブロックオブジェクト化しています。曲面部分が多角形のメッシュ状になっています。

ARCHICAD

レイアウトの作成手順は次のようになります。

  1. 展開図を作成する部屋に、「展開図ツール」を使って、部屋の角度と形状に合わせて展開図用の切断面を作図する(単一、ポリゴン、矩形、回転矩形から選択)

  2. 展開図を作図する方向(部屋の内側から壁面を見るか、外側から見るか)を決めるのと同時に、壁面からの後退位置を指定する

  3. プロジェクト一覧の展開図の部分に、部屋毎にグループ化され、壁面毎に展開図のビューポートが作成される

  4. 各展開図の名称の部分を右クリックすると「現在のビューを保存」とあるのでそれぞれの展開図を保存していく

  5. 「レイアウトブック」から展開図用のレイアウトを新規作成する

  6. 保存し終わったら、「ビュー一覧」から各展開図の名称の部分を右クリックして「レイアウトに配置」を選択し、5で作成したレイアウトに配置していく

ARCHICADの展開図作成フロー

比べてみた結果

RhinocerosとARHICADに比べてRevitは手順が最もシンプルである一方、展開図ツールが基本的に4方向までしか設定できないようになっているため、部屋の形状が複雑な場合には、断面図ツールを使うか、どこかで図面表現を妥協する等の運用方法の工夫が必要そうです。
RhinocerosはGHを組んでビューを作成するまでがほぼ自動化できるため、展開図を大量に作成しなければならない場合には便利ですし、他のソフトに比べて曲面表示は得意そうです。しかし、そもそもがあまり作図に特化したツールではないので、レイアウト後の寸法や文字配置と調整はAutocadにデータを送る等した方がスムーズかもしれません。
ARCHICADは、作成手順はRevitとそう変わりはないようですが、展開図ツールでポリゴン形状を設定できるため、展開図データの構成はRevitよりも分かりやすく作れそうです。展開図ツールの配置は完全に手作業になってしまうので、もしARHICAD Live Connection等を使って自動化が可能であれば、最も効率よく見やすい図面化ができそうです。

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