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コミュニケーションでめちゃくちゃ失敗した元サッカー選手が引退後に学んだ、絶対にやるべき3箇条

我々はあまりにも多くの壁を造るが、架け橋の数は十分ではない。
アイザック・ニュートン

あなたの周りにこんな人はいないだろうか?

実力が飛び抜けているわけではない。何か尖ったものを持っているわけでもない。にも関わらず上司や偉い人にやたらと可愛がられ、何かと目をかけられ、気づいたときには遥か彼方まで出世している。

最初は同じぐらいの実力だったはずなのに、良質な機会と環境、サポートを与えられ、失敗を重ねながらもどこかで成功を手にし、その成功を自信に変えさらに成功を重ねる。いつしかやることなすこと全てが結果に結びつき、もはや彼の実力に疑問符を付ける人はいない、文句なしのエースに育っていく。

片や自分は、嫌われているわけではないけどそこまで誰かに好かれているわけでもなく、決して悪くはないがどこか無難で、リーダーを務めることはなく、人をリードする経験や右か左かを意思決定する機会に恵まれず、良くも悪くもない"普通"という評価に終止する。

いったいどこで差がついたのか。元々埋められないほどの才能の差があったのか?負け惜しみに聞こえるかもしれないが、そこまでではなかったはずだ。

チャンスに恵まれたのだ。上司の引き合いや人脈も含めて、運の要素が非常に大きい。そうだ。これは運だ。あいつに実力がなかったとは言わないが、これほどまでに称賛されるほどのタレント性があるわけではない。

人生はほぼ運が左右する。チャンスが回ってくる者と、回ってこない者。その少しの差が、結果的に見ると埋められない差として表面化するのだーーー。

どうだろう?誰しも一度は身に覚えがあったりどこかで聞いたことのある話ではないだろうか。

人から評価されたり、引き上げてもらったりするのは本当に運だけなのだろうか?めぐり合わせによるものだけなのだろうか?

結論から言う。答えは否だ。

人間が感情の生き物である以上、好き嫌いという軸は人の評価にも必ず存在し、そして人はその感情にほとんどの場合従う。

つまり、あなたが評価されたい誰かは、評価の少なくない部分を好きか嫌いかに委ねている。これがサッカー選手を3年、ビジネスマンを10数年やってきた私の結論だ。

私はサッカー選手時代、人間の好き/嫌いを判断する上での重要な要素、コミュニケーションに大きな問題を抱えていた。

家から練習場までの移動はいつも一人だったし、ランチも一人。パス練習も決まった相手がおらず、オフもほとんどを自分の家で過ごしていた。お世辞にもチームの輪に入れているとは言えなかった。

そんな状況だったので、コミュニケーション面では損しかなかった。練習では批判の的になり、言い返すと言い訳するなと言われる。かと言って何も言い返さないと攻撃がエスカレートするし、自分を持っていないのかと別の角度からの批判もやってくる。

ここでずば抜けた実力や才能があればこんなことは誰も気にしない(むしろ長所にさえなる)のだが、全てを吹き飛ばすほどの実力は僕にはなく、コミュニケーションの負の側面を2年半見つめ続けた(最後の半年に何があったかは前のnote参照)。

こういった、社会の中でのコミュニケーションを「社会的コミュニケーション」と呼ぶとしよう。僕は社会的コミュニケーション能力を全く持ち合わせておらず、能力で挽回することもできないままサッカー選手人生を終えたのだった。

一方、そんな僕を尻目に、社会的コミュニケーション能力に天才的に長けた先輩がいた。年上・年下関係なくみんなに好かれ、監督に愛され、会社に愛され、ファンに愛され(まだ試合にも出ていなかったのに!)、チームの中での居場所を早々に築いた。

彼と僕の実力は、(若干のバイアスはかかっているにせよ)入団当初はそこまで開きがなかったと思う。

ところが1年もすれば、期待の若手としてレギュラーになりチームを引っ張る先輩とベンチにも入れない僕で、途方も無い差になった。

彼のコミュニケーションは一体何が優れていたのだろう?彼は決して媚びたりしているわけではなくいつも自然体だった。気付いたら懐にすっと入っており、何を言っても許される存在になっていた(そして僕もまたそんな彼のことが好きだった)。

サッカーを引退後、ビジネスの世界に入っても僕は社会的コミュニケーションの罠に嵌りそうになった。許されるキャラと許されないキャラ。僕は後者に入りそうになっていた。一体何が悪いのだろう?

コミュニケーション論の学術的な論文や文献を片っ端から漁ってみた。でも僕が望んだものはそこにはなく、「コミュニケーションは社会を生きる上で最重要な要素だ」とか「コミュニケーションは幼少期の過ごし方により決定される」とか、肉にも魚にもならないものだった。

そんな時、先輩のことを思い出した。社会的コミュニケーションの天才の彼の行動を思い出せば、もしかしたら自分にも真似できるかもしれない。

僕は先輩や周りのコミュニケーション上手の1日の行動を事細かに洗い出し、何をしているのか、それによって相手が抱く感情はどうか分析してみた。すると僕が今まで全くやってこなかったようなコミュニケーションパターンが浮かび上がってきた。

僕は早速その手法を自分のコミュニケーション術として取り入れた。すると今までが嘘のように、周囲の自分に対する接し方が変わった。

わからない時はサポートしてくれ、有益そうな情報はシェアしてくれた。特にその組織のトップ層の人間関係やパワーバランス、金の話といったコンフィデンシャルな情報は、信頼関係がしっかりと築かれたクローズドなコミュニケーションでしか明かされないことを僕は身を持って知った。

情報を制す者が勝負を制すこの世の中において、クローズドな情報を得ることができないまま戦うのは、極寒の地で裸で戦うことぐらい不利であることを僕は引退後にようやく知ったのであった。

また情報的な優位性だけでなく、キャラクターとしての優位性も手に入れた。「他の人がやると怒られるのになぜか許される人」「なぜかわからないけど人に好かれていつも得をする人」は社会的コミュニケーションの産物だった。

こうして僕は組織の中で相対的に、"コミュニケーション強者"に転換することになった。性格やパーソナリティは一切変わっていない。ただコミュニケーションの方法を少し変えただけだ。にも関わらずこれだけの果実を手にすることができた。

様々な良い機会が与えられ、いくつかの失敗を経て、アドバイスを最大限に活かしながら小さな成功を得た時、僕の評価も上がっていた。まるで最初から皆が僕の能力に気付いていたかのように。

良質なコミュニケーションという土台がある上で、何かしらの実績が掛け算された時、大きな評価に変わることもここで知った。実績があることで評価することの言い訳ができのだ、と僕は思った。

そして僕は、先輩と自分の差が運であると考えていた自分を恥じた。機会を与えられるのも、サポートを受けられるのも実力のうちなのだ。サッカーが(おそらくはビジネスも)集団で行うゲームである以上、コミュニケーションをどう取っていくかというのもプレーヤーの技術の一つだと思うようになった。

前置きが非常に長くなったが、コミュニケーションの重要性はわかってもらえたと思う。

ではここから、僕が社会的コミュニケーションの天才たちから学んだ、「絶対にやるべき3箇条」を伝えていく。

【絶対にやるべき3箇条】 その1. 自分から話しかけるべし

コミュニケーションが苦手だと感じている人は、自分発信でコミュニケーションを取ることをしない。むしろ、話しかけられることさえ最小限で済むように避けている。自分がそうだったからよくわかる(チームが使う食堂もわざわざ遠い方を選んで出かけていた。誰かに会いたくないから)。

しかしそれはものすごく悪手だ。あなたがコミュニケーションを普段避けていることによって、誰かがあなたに話しかけてくるのは、どうしても何かを言いたい時だけになる。つまり、鬱憤が溜まって自分で抱えられる閾値を超えた時に話しかけてくるのだ。だから言葉が強くなるし、批判めいた言動になってしまう。

あなたはそこで批判されたと感じる。たまに取るコミュニケーションで批判されるのなら、もう取らないほうがいい・・・。そうやってますますコミュニケーションを取らなくなっていく。コミュニケーションを取ることの心理的障害・不安が大きくなっていく。つまり1回あたりのコミュニケーションコストが高くなっていくのである。

そこで、である。勇気を持って自分から話しかけてみる。これはやってみるまで知らなかったのだが、コミュニケーションというものは、話しかけた方が主導権を握る。コミュニケーション力は関係なく、最初に話しかけたかどうかでその会話のイニシアチブが決まるのである。

これは相当にでかい。自分発信でコミュニケーションを取ると、自分がイニシアチブを持っているので、自分が話したい話題を話せる。自分が終わりたいタイミングで終わることができる(たまに乗っ取られる場合もあるがw)。

内容は何でも良い。本当に何でも良い。週末の海外の試合は見たか、先週の自チームの試合をどう思ったか、どストレートに自分の印象を聞いてみてもいい。

そしてその自分発信の会話の頻度を増やす。これも重要である。心理学用語で「単純接触効果」というものがあり、要は人は接触回数が多いほどその人のことを好きになっていくのである。

これは相手から自分だけでなく、自分から相手でもそうだ。単純接触効果は自分にも効くのである。最初はあれだけ怖かったコミュニケーションが、1ヶ月もすると苦痛じゃなくなる。1回あたりのコミュニケーションコストが下がっていくからだ。こうしていつでも話せる関係を築くと、重要な情報が入ってきたり、困った時に助けてくれたりする。

コミュニケーションコストが下がることは、特に悪い事実を報告する際に威力を発揮する。

普段からコミュニケーションを取っていないと、悪い報告をした際に「なぜ問題がこんなに大きくなるまで言わなかったのか」という追求が始まる。信頼は損なわれ、評価も必然的に低くなる。

自分からコミュニケーションを頻繁にとっていると、いざという時に頭ごなしに否定されるのではなく、何かしらの解決方法を一緒に考えてくれる可能性が上がる。相手からすると、"You"ではなく"We"になっているからだ。

とにかくコミュニケーションは自分から、しかも高頻度で取っていくのが良い。この誰でもできる裏技的な手法を取り入れるべきなのだ。

【絶対にやるべき3箇条】 その2. 相談をするべし

人は相談されるのがとにかく大好きだ。それもあなたが若手であればあるほど。

相談をすると二重に得をする。ひとつは普通にアドバイスをもらえることによる得。もうひとつは相手から好かれることの得だ。

どれだけスターになろうが、重鎮になろうが、人は誰かに頼られたり認められたりすることが嬉しい生き物である。そして相談はその最たるものだ。

相談するということは、数ある人間のうち、自分を選んで、自分のアドバイスが有益になると思って聞いてくれているんだと相手は思う。必要とされているんだと思ってくれる。

サッカーだけではなく、プライベートなこともどんどん相談しよう。周りの人も自分の人生を歩んでいるので、その人生経験を自分のものとして活かさない手はない。さらにこちらを好いてくれるのであれば、もう良いことしかない。

昔、Twitterで「最高の親孝行は親に何かを相談すること」という言葉を見たが、これは真理だと思う。どんなお世辞を言うより、「言いづらいんですけど・・・」と相談することで、「あなたに価値を感じています」ということを伝えられるのが相談だ。

ちなみに、今の仕事でも相談は大いに活用している。対上司にも、対お客さんにも。例えば何かやってもらいたいことがあるときに、ストレートにお願いするのではなく「相談なんですけど」という言い方で持っていくことで、相手から乗り気で行動してくれるという本当に優れものなのである。

【絶対にやるべき3箇条】 その3. キーパーソンを味方につけるべし

これはより寝技というか、実利を追う泥臭いやり方になるが、最初に誰を狙うかというターゲティングの話で、絶対に「その組織で権力を握っている年の近い人」からいくべきだ。

人間も本質は他の動物と同じ、社会の中でボスがいて、そのボスが治める領域でボスが定めたルールの中で生きている。

つまりボスを押さえずしてその組織全体を押さえることはできない。そのボスに行き着くまでに、まずはボスに可愛がられている中ボスから攻略するべきだ。

先程述べたように、どんなに崇高な理念があっても人間は動物である。他のメンバーに嫌われるのは怖い。嫌われるリスクがあるのであれば攻撃しない。身も蓋もないかもしれないが事実そうだ。

よって、その組織の中で権力がある人から認められてしまえば、他方面から攻撃が来ることはなくなる。あいつに何かを言って、あの人に目をつけられてはまずい。人間は無意識的にそう考えるからだ。それどころか、あの人が認めているならすごい人なのだろうという錯覚資産も得ることができる。

そんな駆け引きのようなことしたくない。人の心はそうやって利用するものじゃない。そう思うかもしれない。

選手時代の僕は、孤立していて、誰の後ろ盾もない状態だった。今思えば、僕に何かを言って僕に嫌われたところで、何のリスクもないから彼らはそう振る舞えた側面が多分にあると思う。

集団から孤立するということはそういうことなのだ。あなたは"あちら側"だから、と無意識に思ってしまうのだ。それが動物である人間だ。

僕はこの経験があるので、そういった人間の感情があるということを理解した上で、コミュニケーションで損をしてしまわないためにこの文章を書いている。ほんの少しルールを知ることで、コミュニケーションの問題を取っ払って、自分の能力を見てもらえるように。あんな思いをしなくて済むように。

おわりに

以上が僕が自らの体験で得た「絶対にやるべき3箇条」である。コミュニケーションは奥が深く、決して何かの魔法を解き明かしたわけではない。しかし、このnoteを利用してもらうことで少なくとも何もしないよりは良質な社会的コミュニケーションを築けることだろう。

あなたも、私も、人間は多くの壁を造る。だからこそ、あなたの方から架け橋を造っていけば相手はあなたに価値を見出してくれる。

そして、僕の先輩のように、周囲のサポートを受けて、この世界を駆け上がっていって欲しいと思う。

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