2019.03.29 THE VERGE :BEHIND THE SCENES WITH PERFUME, JAPAN’S MOST FUTURISTIC POP GROUP_日本語訳

THE VERGE

カテゴリー:APPLE
BEHIND THE SCENES WITH PERFUME, JAPAN’S MOST FUTURISTIC POP GROUP
The ‘Future Pop’ tour is a dazzling collision of technology and choreography
By Sam Byford@345triangle  Mar 29, 2019, 7:10am EDT

掲載元はこちら↓↓

ビハインドザシーン ”Perfume”

日本で最も未来志向のポップグループの舞台裏

ー”Future Pop"ツアーは、テクノロジーとコレオグラフィーの華麗なる衝突

Perfumeは日本で10年以上に及んで、スタイリッシュで未来的なイメージに裏打ちされた際立ったエレクトロポップサウンドによって、露出度が高く且つ数多いセールスを誇るアーティストで在り続けている。しかしながら音楽性のアウトプットはPerfumeを語る上で方程式のほんの一部分の解に過ぎない。彼女たちのライブショーは眩しいほどのテクノロジーとコレオグラフィーの衝突であり、だだ広いアリーナがSFの世界のワンダーランドに様変わりする。

PerfumeのWT4 Future Popは明日ニューヨークのHammerstein Ballroomで幕を開ける。私は昨年の横浜アリーナ公演へ行き、メンバーに ーそしてライブ制作の背後にいるキーマンにもー 話を聞いて、Perfumeのテクノロジーとポップカルチャーの融合の裏側にあるものを見出そうと試みた。

Perfumeはミレニアム時代の幕開けとともに広島のアクターズスクールで結成された。そしてJ-POPの近代史に多大なる影響を与えた2008年のGAMEの発売で人気に火がついた。プロデューサー中田ヤスタカは自身のCapsuleの渋谷系から派生したエレクトロニカをベースに、革新的なテクノポップの非の打ち所が無い楽曲群を制作した。

Perfumeは世界的なEDMのブレイクのずっと前に名前が知られるようになったので、中田の手がけるエレクトリックな楽曲にそのフューチャリスティクなイメージがはまった。「若い時は、ディーバのように歌い上げる練習をしていましたから」とあ〜ちゃん(西脇綾香)は振り返る。「中田さんに初めて会ってエレクトロな曲をやるようになった時には、ロボットか何かみたいだと思いました。」とのっち(大本彩乃)が続ける。

「ポリリズム」のような初期のミニマリズムを表したMVが、後に注目を浴びたPanasonicやNHK、NTT Docomoといった大きなコラボレーションの空気感にも影響している。「常にファンの皆さんとの繋がりは感じていますが、テクノロジーによって本当により近く思えるんです」とかしゆか(樫野有香)は言う。「例えば、ステージ上の3DイメージにTwitterで投稿されたメッセージを重ねたり、そうすることでファンの方はテクノロジーを通して私たちのショーを一緒に体感することができます」そして、あ〜ちゃんはこう付け加えた「テクノロジーがPerfumeを形作るのではなくて、テクノロジーがあるから、Perfumeがそれを一番いい形で活かしたいんです。」

Perfumeは、おそらくもうそれを叶えている。彼女たちのライブは、他に類を見ないものだ。最先端の3Dスキャンされたビジュアルそして複雑な透過スクリーンの演出によって、どの楽曲も先鋭的にコレオグラフィーと音楽を昇華させ、この上ない審美性を手に入れている。

この最先端のライブプロダクションは、その大部分が真鍋大度らによって2006年に設立された実験的アート集団ライゾマティクスによるものだ。真鍋はPefumeの楽曲”1mm”のインタラクションデザインとプログラミングも担当した。

私は真鍋氏と彼の東京のスタジオで1時間にわたり話をし、その多くを彼のMac Book Proから進行中の心動かされる仕事を見せてもらうことに時間を割いた。ライゾマティクスは、数多くのプロジェクトが同時に動いていて、真鍋はどのようにプロジェクト間でテクノロジーが共有されているかを、まるで300年後の東京メトロの路線図のような複雑なフローチャートで常にトラッキングする必要があるようだった。

ライゾマティクスは、PerfumeのコレオグラファーでありダンスカンパニーELEVENPLAYの主宰であるMIKIKOと密接に共同制作を行なっている。「先ず、いくつかの実験的な試みをELEVENPLAYでやってみて、それからその技術がうまく機能すれば、Perfumeに使います」と真鍋。「リサーチと開発をELEVENPLAYでやって、より大規模にPerfumeに当てはめていく。Perfumeのコンサートでは多くの人が関わっていて本当に失敗が許されないので、まずたくさんテストをしています」

ライゾマティクスのテクノロジーのほとんどが自前のものだ。例えば、2014年の大晦日のNHK紅白歌合戦で彼らはPerfumeの”Cling Cling”のパフォーマンスに合わせて動く、9つの点滅するランタンを搭載した自家製のドローンを開発した。

「どこにも絶対安全なドローンは売っていないので。普通に市販されているドローンを使った場合、怪我が心配です。うちのドローンなら、誰かにぶつかっても、ドローンが壊れて、誰も怪我をしないようになっています。バッテリーは十分な光量を得ようとしたら3分しか持たないので、そんなのは売ってないんです。でもライブパフォーマンスに使うなら、こっちの方がいい。市販のドローンをライブパフォーマンスで使って、怪我をしてしまうことは少なくないです」

しかしながら、FUTURE POP ツアーでは、ライゾマティクスは初めて市販されているガジェットを演出の一部に使用した。 “Tiny Baby”で、マイクスタンドにセットされたiPhone Xの前で3人がそれぞれパフォーマンスしている。Perfume3人の顔はステージ後方のメインスクリーンに映し出され、IPhoneのTrueDepthカメラが3人の口から言葉が飛び出すような多彩なエフェクトのために使われている。

このビジュアルエフェクトのソフトウエアはライゾマティクスの2人のエンジニアが開発した。
真鍋「現状ではiPhoneが一番フェイス・トラッキング機能が安定していると思います。とても使いやすくて、API(※機能を使用してアプリケーションなどを開発するために必要な手順をまとめたもの)もきちんとしています。同時にたくさんのライティングもコントロールしていくので、もし(※TrueDepthでない)(※一般的な)RGB方式のカメラを使っていたら十分に機能しないと思います。」

驚くことに、Perfumeのメンバーはいつも自分たちがどのようなパフォーマンスをしているかの全貌を知らないという。「まだ自分たちでプロダクションを見ていないので、今、お伝えできることが何もないんですけど」のっちは、私がFUTURE POPツアーでどの曲の演出を気に入っているかを尋ねるとこう答えたのだ。
「私は、選ぶならTiny Babyかな。まだ見てはいないけど、振り付けがシンプルで、口からテキストが出て来るなら、お客さんは見ていて楽しんでくれるかな」とかしゆかが答えてくれた。

Perfumeの側からすると、もっとも大変なパートは往々にして彼女たちがステージに足を踏み出す前にやって来るという。「大度さんが私たちのために本当にやりやすくしてくれているんですけど、私たちがやるべきことは、ただ振付を完璧に踊ること。そうすれば、あとは全部お任せしています。」と、のっち。「でもライゾマさんの演出を実現するためには、私たちは3Dの振付データを(32台のカメラで)グリーンバックで何度も何度も撮影しなくてはいけなくて、それが一番大変な部分です。」

FUTURE POPツアーのアメリカ公演とは別に、Perfumeは必然的によりそぎ落とされた形での演出となるであろうコーチェラでの2回の出演も控えている。私が初めてPerfumeを見たのは、2011年大阪でのサマーソニックだった。その時も想像に難くないけれど、とても難しい環境で、限られた転換時間、日中という条件の中でできることは限られていた。

「フェスはPerfumeをまだそんなに知らない人や初めて見る人もいて、私たちにとってはチャレンジの場所なんです。」とかしゆか。「現実世界でのパフォーマンスにテクノロジーを足して、願った形でより良く音楽や振付を表現できます。テクノロジーが助けてくれるんです。」

「フェスでは、名前だけでも覚えて帰って欲しいから、よりアグレッシブに行きます。」とあ〜ちゃん。「ツアーのようなワンマンライブだと、最後の最後までお客さんに楽しんでもらう責任があります。だから、リラックスもしているんだけど、どこかではプレッシャーも常に感じています。そのプレッシャーを超えた時の満足感がこの上なく最高なので、だからステージに立つことをやめられません。」

知名度と未来的なそのイメージを持ちながら、Perfumeのメンバーは日本の芸能人の平均的なイメージに比べると、公共の場において比較的低調な存在感を醸し出している。個人レベルではソーシャルメディアも使っていない。「マネージメントの方針なので。」とのっちは笑った。彼女はiPhone SE世代のタイミングまでスマホを使っていなかった。「こんな風にソーシャルから距離をとっているのは、珍しいねって言われるんですけど。でもできないんです。プラーベートの生活のセキュリティを守るためでもあって。自分たちのアルバムのこととかは投稿できるしスタッフの公式アカウントでも発信はしていますが、個人のレベルでは、していません。」

それでも、最近、PerfumeはTik Tokアカウントを開設したし、3人ともiPhoneXSにアップグレードしているということも付記しておきたい。かしゆかはiPhone3G世代からスマホを使い始めて、日本では極めてアーリアダプターな方だった。「本当について行けてなくて、”え、携帯に私の顔がわかるの?!”ってびっくりするくらいなんですけど」のっちは言う。「でも、そんな風に世界が動いているので、ついて行きたいなとは思います。」

アルバムとしては、Future Popは音楽的に中田の初期の作品ほど画期的には見えない。それは多分、EDMとエレクトロポップが世界的に台頭していることを考えると避けられない評価かもしれない。しかし、彼女たちが言うには、中田はこのアルバムをPerfumeの回帰だと見ているようだ。「中田さんは、考えがあって、タイトルを付けたんです。」とかしゆか。「中田さんがPerfumeのプロデュースを始めた最初の頃から、Perfumeの音楽は”Future Pop”だね、と言われていました。そのタイミングではまだ中田さんにとっては未来的なものとは思えていなかったんです。もっとやるべきことがあるって。でも、今、Perfumeとやってきたこと全てを振り返って、ようやく”これはFuture Popだったんだ”と言えて、これがアルバムとしての最終的な答えになったと言ってくれました。」

ここでお決まりの質問をしてみた。「Perfumeの”Future Pop”にとっての”フューチャー”は何?」
「中田さんのみぞ知る!」あ〜ちゃんが答えた。「中田さんを信じているので、導いてくれる方について行くだけです。」とのっちが頷いた。

一方、真鍋は常にアートプロジェクトとライブパフォーマンスに使えるテクノロジーについて思索を続けている。今はfMRI(functional Magnetic Resonance Imaging-※MRIを利用して、脳や脊髄の活動に対しての血流を可視化する方法)での脳のスキャン結果を用いて映像を生成することに興味を持っている。これはコンサートホールで使う類のアイデアではなくて、自らの研究課題だと言う。

より短期的には、5Gネットワークがライゾマティクスにとってはホットだ。「5G に期待しているのは、観客のスマートフォンからステージに映像を送れることです。」と真鍋。「SAYONARA国立競技場という旧国立競技場でのイベントで、スペシャルwebサイトを通して、サーバーに写真をとって送信してもらいました。その写真を使って、スタジアムの3Dモデルを組みました。でもそれはリアルタイムではなくて。Wi-Fi環境や4G回線を使って写真を送らなくてはいけなかったので、時間がかかってしまいました。もし5Gなら、カメラからリアルタイムでサーバーに送れるし、その場で3Dモデルにできます。」

これがすでにライゾマティクスが取り掛かっていることだ。真鍋はコンセプトのデモビデオを見せてくれたが、まだ数少ない端末しかケーブルでつながっていない。Wi-Fiを使えば少数の端末なら圧縮されたビデオを送れるが、人で混み合うアリーナでは、5Gの配備なしには成し得ないと言う。

このインタビューの数日前に、真鍋がAppleのSVP Phil Schillerと会ったときの写真をインスタグラムに投稿していたことに気づいたので、どうしてもそこで何を話したかを聞きたかった。「ARについて、大まかな話をしただけです。もし5Gのネットワークが使えるようになったら、ARのテクノロジーは大きく変わる可能性があるので、その将来的なこととかを。」

Appleサイドは、iPhoneXが”Tiny Baby”のパフォーマンスで活用されていることを知っているかを尋ねると、こう返ってきた。「見てもらいましたよ。とても気に入ってくれました。」

<日本語訳以上>

<以下、参考リンク>

ポリリズム(2007)


Panasonic 4K(2014)

Panasonic AWA DANCE(2017)

【docomo×Perfume】 FUTURE-EXPERIMENT VOL.01 距離をなくせ。 BEHIND THE SCENE(2017)

NHK Perfume×Technology

ELEVENPLAY x RZM "fly" (dance with drones)

lantern drone (2014) daito manabe

”Tiny Baby"

Memory Our Stadium


Perfume GLOBAL LAB

**Rhizomatiks **

ELEVENPLAY