臨床実習指導は得意ではありません

臨床実習指導は得意ではありません。
やりたくありません。
一人で仕事をして期待どおりの結果を出している。それに加えて指導もするなんて聞いていません。雇用条件に記載されていませんでしたよね?

過去に言った言葉を思い出して猛烈に恥ずかしくなることが結構ある。
そんな経験ありませんか?僕はしょっちゅうあります。
自叙伝とか書くことになったら、恥ずかしいことばっかり思い出してしまうから絶対に書きたくないです。

さて、昔はどうして臨床実習指導が苦手だったんだろう?
初めての臨床実習指導は確かサブバイザーだった。かな?
経験年数はある程度いっていたけど、学生の指導は初めて。
メインバイザーに指導について尋ねたら
「うーん。それは学生によってケースバイケースだから。ね?」

なにそれ?つまり何も決まっていないってこと?
ケースバイケースってつまりは発展ですよね?
僕が知りたいのは基礎なんですけど?

「まぁ、君は今回サブだから。僕が指導してるのを見ながらこんな感じなんだなって勉強してよ。」
本当に大丈夫なんかなと不安ばかりを抱えて実習スタート。

しかし、はじまってみたらメインバイザーは会議や委員会などで席を外すことが多く、指導は主に僕。

なにも知らないのに何を教えたら良いんですか?
「いやぁ、だから、それはケースバイケースだから。ところでレポート進んでるの?デイリーは見とくから。」

それ以来その先輩に実習指導はおろか業務のことも相談するのはやめた。

実習として何をどこまで教えるべきなのかに大きな不安を抱え、実習がうまく行かなかったら指導者に大きな責任がのしかかっているように感じ、そんなことにイライラしているうちに実習指導は苦手になっていた。
正確にはキライになっていた。

でも、このままで本当に良いのかなという思いも抱えていた。
職場では誰も教えてくれないなら、もっと詳しい人に聞いてみよう。
そう思い立って、三崎さんをはじめとした小樽臨床作業療法研究会のみなさんと出会った。当時は超マイナーだった協会主催の臨床実習指導者講習会も受講した。

特に小樽の皆さんとの出会いは衝撃。
そこで初めて診療参加型臨床実習の片鱗を理解できたように感じた。
同時に皆さんのこれまでの苦悩の連続も垣間見えた。

以前の僕のように実習指導に悩んでいた人ばかり。
様々な試行錯誤と様々な理論を学ぶことで、うすぼんやりとだけど明かりが見えてきた。
小樽の皆さんからは成人教育に関わる多くの理論と学生との具体的な接し方を教えてもらった。

日本作業療法士協会主催の臨床実習指導者講習会で講師が言っていた。
「臨床実習指導は、未来の作業療法士を育てる機会です。作業療法士の免許を取得するためには規定時間の臨床実習を行わないといけません。あなたが指導者になってくれることで学生は作業療法士になれる可能性があります。あなたが指導を断ることで学生は作業療法士になれないかもしれません。作業療法士という仕事は楽しいですか?未来に残したいですか?もしそうであれば、未来の世界にも作業療法士という仕事を残したいと思っているのであれば、あなた達の後進を育成することはあなた達やあなた達が関わるクライエントの未来にとって有益なことだと思いませんか?」

クリニカルクラークシップを療法士の世界に持ち込んだ第一人者はこう言っていた。
「方法論としてのクリニカルクラークシップの普及には成功した。だけど本当の意味でクリニカルクラークシップを使いこなせている指導者はまだまだ少ない。指導者講習会に出席したからと言って直ぐに指導が出来るようになるわけではない。あなただって、作業療法士の資格を取得したからといって次の日から十分な作業療法が出来たわけではないでしょう?」

先日、日本作業療法士協会主催の臨床実習指導者実践研修会を修了し、修了証書が届いた。
認定番号は100番台だった。

まだまだ学びたいことがいっぱいある。
まだまだ失敗することがいっぱいある。
まだまだ知りたいことがいっぱいある。
作業療法の未来にほんのちょっとでも貢献できているのだろうかと毎回不安になる。
でも、初学者に「ケースバイケースだから」と言うことは無くなった。

来週から、長期実習の学生を受け入れる。
最初に聞くことはいつも同じ。

「君はこの実習を通して、どんなことを達成したいですか?どんなことを目標にしたいですか?」
今までの実習でそんなこと聞かれたこと無い?
そうだよね。目標設定って難しいんだよ。
CLもきっと同じ気持ちかもね。
難しいけど、目標が明確であればあるほど自分はどんな行動をしたら良いのかが見えてきそうでしょ?
明確な目標が設定しにくかったら、時間はあるから一緒に考えてみようか。
君にとって、やりたいこと、やるべきこと、やることが期待されていることはどんなことだろう?

来週から、未来を背負った相棒がやってくる。

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