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とあるフリーライターの台本の作り方~依頼をこなしたらゲーム化された件~

星影ラピスさんに依頼されまして、配信用の企画台本を製作したらゲームになってしまいました。

配信で視聴者にアンケートを取り、アンケート内容によって展開が変わるゲーム風台本という依頼だったのですが……
まさか、ゲームとして画面まで作りこまれるとは思っていなかったのですよね。
こちらが実際に私の台本を使っていただいた配信になります。

実はご依頼の時点では『ゲームにする』というお話聞いていなかったので珍しい体験をしたなぁ……と。
そして、珍しいついでに思ったのですが、ライターがどのような形で依頼を受けて、どんな風に台本を書いているのかというのはあまり語られることがありませんので……
星影ラピスさんに了承をいただいた上で、メイキングについて記事にまとめることにしました。
誰かに台本を依頼したい~という方だけでなく、物書きを仕事にしている人でもスタイルがそれぞれに異なりますし、同業他者や雑学としての情報あった方が良いかなと。
あくまで『私の場合は』という話になりますが、物書きの裏側についてまとめていきます。

深夜2時に舞い込んだ依頼

3月2日午前2時、深夜に仕事をしていたのですがDMでラピスさんから問い合わせが来ました。
個人クリエイターあるあるですが、深夜に活動している人も多く、時間帯問わずにメッセージが届くことは珍しくありません。

メッセージの内容を要素でまとめるとこんな感じでした。
・ギャルゲ風台本の作成依頼
・YouTubeのアンケート機能を用いて選択肢を選んでいく企画配信
・企画配信から誕生日配信へ誘導を行うこと
・配信の予定時間とそのうち台本読み上げに充てるであろう時間
・基本的なストーリーと要望
・希望予算
・希望納期
・実際にこのような企画台本の執筆は可能か
・配信に利用するキービジュアルの共有

ラピスさんの誕生日配信は3月15日、納期は10日まで、可能であれば9日には納品して欲しいということで急ぎの案件と判断。
普段あまり深夜にメッセージは返さないようにしているのですが、1時間経たずに返信を行いました。
仮に他の人探すにしても時間がかかってしまいますので……
正直、確認が必要な情報はほとんど書いてあったので、書くべき情報も少なく済みました。

・納期内で作成可能であること
・提示された予算の場合アナザー展開など別台本を作成可能なこと
・企画台本のみを作成する場合の価格
・追加の要望がある場合は都度追加金額の見積もりを行うこと

回答後、すぐに返信があり、アナザー台本も作成することを含めて契約が成立しました。
流石に深夜もいい所ですので、詳しい内容は改めて送ることをお伝えして、次の打ち合わせに繋がっていきます。

余談ですが……

見積もりの価格に関しては『依頼の内容がわかればおおよその作業量が推測できるので、拘束時間や必要な手間・リテイクなどの回数を踏まえて提示する』だけです。
人によって見積もりの感覚は違いますし、スケジュールの調整が必要であれば特急料金などを追加したりとか色々ですね。
依頼が絶えずに常に時間に追われるような状況であれば、作業あたりの単価は上がっていきます。
価格の調整・見積もりの出し方もフリーランスに求められる技術の一つです。
不慣れな人は作業の見積もりを誤って納期に間に合わなかったり、労力の割に稼げなかったりするので、見積もりまでの速度や事前の打ち合わせの内容、文面である程度相手の力量がわかったりします。
私は依頼があれば何でも(犯罪行為や人を貶める行為は除いて)引き受けるタイプなので、ただ台本の費用を提示するだけではなくて「販売用の音声・ファン向けの限定コンテンツ台本も作成した場合のセット価格」も含めた提案をさせてもらっています。

台本作成前に出来ること

3月2日夜。
一般的な人たちが活動して起きてる時間帯に、台本作成前の確認メッセージを送りました。
内容はこんな感じ。

・配信中にアンケートを取る回数はどれくらいか?
・台本にラピスさんの気持ちの描写などを混ぜるか、台本上の登場人物(視聴者想定)で目線に統一するか
・台本上でのラピスさんと登場人物との距離感
・それぞれの質問を行った理由の説明と台本と配信に組み込める仕掛け
・一部質問に伴うサンプル文章

アンケートの回数で工数(作成の手間)が変わってきますし、視点の入れ替えなどを台本に入れた場合もあまり回数が多いと手間がかかります。
また、台本を作成する場合は『読む人、聞く人の感情』が大事になるので、認識にズレが無いように確認しないと後々台本の大幅な修正が発生する恐れがあるためです。
今回は企画配信用の台本なので、事前に台本と配信を繋げるための工夫やアイディアも提案させていただいています。
あくまでラピスさんとラピスさんの視聴者が主役なので、台本だけで完結させてコミュニケーションが取れないようだと本末転倒ですので……

サンンプル文章を添付するのは、イメージして貰いやすくするためですね。

それぞれすぐにラピスさんから回答いただけたので、今度は配信中に行うアンケートのサンプル(質問のタイミングと選択肢)を送り、ラピスさんの要望をうかがった上でアンケートの調整を行いました。

メッセージを送ってからやり取りして、大体1時間くらいで台本の基本仕様が決まっています。
後は条件に合わせて台本を仮組し、台本をチェックしていただいた上で修正などを行います。
私の場合、普段の依頼は音声販売用・YouTubeなどの動画サイトで利用するための台本作成で、数字を取るための仕組みをタイトルや文章内に組み込んで作るので、修正要望をいただくことが稀です。
今回はリアルタイムで視聴者とのやり取りすることが前提になるので、念入りに仕上げるつもりで作業をしています。
当然、この工数も事前に見積もりに入れていたりしますね。

仮組された台本と変更点を踏まえた完成

3月4日午前11時頃。
仮組した台本をラピスさんに送付しました。
台本とセットで、ファン向けコンテンツの相談を行っています。
ここで一番大きな転機になったのは、キービジュアルのアイテムをどこに組み込むか?です。
キービジュアルを事前に共有いただいていたわけですが、キービジュアルに含まれるアイテムを台本に組み込めば視聴者の感情移入の度合いが変わってきます。
強力なアイテムほど使いどころは選んだ方がいいという個人的な考えがあり、企画台本には組み込みませんでした。
キービジュアルがどういったものであるかは誕生日配信のサムネイルや、公式オンラインショップのグッズで確認が出来ます。

今だと、ラピスさんのチャンネルのヘッダーにも設定されていますね。
誕生日プレゼントとして使うという方法も選択肢に入るので、アナザー台本に組み込むか、企画台本を修正して組み込むか確認したわけですが……

ここで話題が盛り上がってしまい、企画台本を大きく修正することになりました。
キービジュアルに含まれたアイテムを、誕生日プレゼントとして生かすことになったのです。

ラピスさんの希望をうかがって、それを台本に落とし込むための調整を提案する→次のアイディアがわいたラピスさんから、こういうのはどうでしょうか? と確認される→それだと、こういう風な調整をすることが出来ます……みたいなやり取りが高速で展開されます。

結果として、DMでの打ち合わせ30分ほどで『ラピスさんの意向を最大限に盛り込んだ修正案』が出来上がり……

そこから約1時間後の3月4日午後0時半ころ、修正版の台本が出来上がりました。

変更のポイントは打ち合わせの過程である程度掴んでいたので、一部選択肢の変更、アンケート結果によって変わるセリフの追加、展開がより自然になるように各種調整を行っています。

これで、台本は納品、配信で使われることになり……
セットの台本を企画台本のアナザー展開と、企画台本のラピスさん視点での話にするか要望をうかがったところ、『企画台本のラピスさん視点』で作られることになります。

ラピスさん視点の台本は第一稿がそのまま納品となり、ラピスさんご自身が各部の調整を行って作品化されることになりました。
星影ラピスさんのオフィシャルストアから購入可能です。

……そして、後日、「誕生日シナリオがゲームになります!」と、ラピスさんから連絡があったと。
どんなゲームになったかは、記事冒頭リンクからの配信のアーカイブを見ていただければ。

ところで、台本の依頼受けたのが3月2日、出来上がったの3月4日、ラピスさんのご本人の配信でもお話が出たからあれなんですが、スライドとか用意して配信するよりもゲームにした方が面白いと思いついて、配信3日前にゲーム化の依頼受けて納品した人がいるってマジですか?

台本は割と『慣れ』の問題なので、ストーリーが決まってれば結構な速度で執筆できるんですが、ゲームにするのって工数が多いような……

なお、ラピスさんは本当は自分でゲーム化するつもりで、知り合いに相談したら作ってくれるという話になったということ。
世の中にはすごい人いるなぁっ……て、ものづくりに携わってると良く思います。

それぞれのこだわりポイント

若干のネタバレを含む内容になりますので、先入観無しで配信を見たい、どういったこだわりが込められているか知りたいという人もいらっしゃるかもしれませんので、少しスペースをあけてからそれぞれのこだわりポイントを書いていきます。
いわゆる裏話ですね。
では、少し行間を空けますよ。






ラピスさんの誕生日配信のキービジュアルは青いバラの花束をもって涙を浮かべた姿が使われています。
ゲーム配信でも使われていますが『星影ラピスを泣かせたい』というタイトルも依頼の時点で決まっていました。
ラピスさんとしては基本的なコンセプトなどが守られていれば問題ないという認識での依頼でしたが、青いバラの花束をプレゼントに組み込むというアイディアをお話してから『青いバラの花言葉、花束の本数の意味を組み込みたい』という希望を受け、実際に台本に組み込むことになりました。
実際にキービジュアルに使われているバラの本数を教えていただいた上で、本数を視聴者にアンケートで取るというアイディアを提案、矛盾が生じないように見せ方まで含めてお話を詰めていったと。
なお、配信では使われていませんが、アンケートのバラの本数でセリフが変化するように台本を作ってます。
物語のキーアイテム、意味にはラピスさんのこだわりが込められています。

なお、私のこだわりポイントですが、自然に作る部分とあえて不自然に作る部分に分けていたりします。
自然に作る部分は、物語の時系列の調整や登場人物の関係性など、あまり気づかれない部分です。
例えば、主人公(この場合は視聴者視点を想定)とラピスさんは『過去に文化祭で作業を共にしたことがあり、作業の連絡のためにクラスのグループLINEに登録した』という設定になっています。
プレゼントを渡して泣かれてしまうという結末は決まっていたので、何かしらの接点があって両片思い状態が続いているものの、積極的に話しかける機会がないという距離感にちょうどいいと判断したからです。
グループLINEに登録しているという設定があるのは、学校の帰りに誕生日会を開くと視聴者が想定した場合、青いバラの花束を渡すタイミングや二人きりになるための時間的猶予があまりなく、直接連絡する手段も選択肢(アンケート)に含めた方が良いと判断したからです。

なお、プレゼントを渡すタイミングを作るために教室で話しかけるという選択肢を入れたのが不自然に作った部分です。
恋愛関係で色々考えすぎて空回って目立つ行動をとってしまうのはラブコメの基本ですし、最初に依頼を受けた時のギャルゲ風というコンセプトにもあっているかなと。
当然ですが、コメディ要素が強い選択肢が選ばれた場合の専用セリフも用意しています。
まぁ、本当にギャルゲーになっちゃいましたが。

後は、書かなければ気づく人いないだろうなーと言うところだと……
男性視聴者がメイン層、しかし女性視聴者もいるという前提で『登場人物の性別を特定するワードを使わない』という縛りを入れています。
恋愛を壁として見守りたい人もいれば、感情移入したい人もいるので……
性別は明確にしませんでした。
あと、ファッションアイテムについて用語だすとわからない人が出るかも?という懸念から、コサージュのことを台本上ではアクセサリーとして表記、ラピスさんの感覚で選択していただくことを提案しています。

私の場合は『ライター業といっても人から依頼を受ける以上はサービス業の側面が強く、クライアントに満足してもらうことが第一』と考えているので、細かな部分に力入れてたりします。
企画台本は裏方仕事なので、目立たないことが大事という認識。
まぁ、宣伝する時は目立たないとクライアントの実績がプラスにならないので、それはそれ、これはこれでしっかりやりますが。

誰でも依頼できるの?

これは、新規のご依頼者、リピーターの方向けの情報になりますが、『こんな配信用の台本が欲しい!』『YouTubeで再生数を狙う台本が欲しい!』『ファン向けの特典台本が欲しい!』のような依頼であっても見積もりをいたします。

フリーランスやってると他の人やサービスと価格比べられて話が流れるようなケースも珍しくないので、見積もりや相談だけで終わっても怒るようなことはないです。
料金表にも記載ありますが、私の場合は

1分尺=200文字=300円

の換算で台本を書いていて、ラピスさんの依頼のようにこだわりや仕掛けを持ち込んだ場合は手間に応じた技術料が加算されることになります。
後は極端に短い台本などは見積もりとやり取りの手間がかかってしまうので最低500円にはなる程度の話でしょうか。

自分でYouTubeチャンネル作ってシチュエーションボイス投稿してデータ取ったり、色々な方の作品作りのお手伝いはしているので、ご相談いただければ結構色々出来ます。
長尺のR18の販売音声台本とかでなければ、単価が1万円超えることはほぼないと思っていただければ。
なお、『推しに台本を読んで欲しいのでリクエスト用の文章を作って欲しい』とか、『推しに音声の仕事を振りたいから台本を作って欲しい』とかもできます。
なんなら依頼交渉用の文章から作成可能です。

改変可・商用利用可の状態でお渡しできますし、朗読用台本作ったりも出来ますので……
投稿媒体の提案、狙える再生数などの事前コンサルティングなども可能ですので、文章以来で困ったら気軽にご相談いただければなと。


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