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おなかにセットされたモード

夕食後のお風呂くらいがケイくんの疲れのピークのようで、ほぼ毎日同じ内容で言い合いになってしまう。
お風呂から先に上がろうとするケイくんに「(湯船に浮いた)おもちゃ片付けてから出てね」と言うと、「なんでオレが…!」と途端に不機嫌になる。
そして、わたしが顔を洗っている蛇口のお湯を急に止められ「はい、体ふいて!」とタオルを渡され、「ちょっと…!いま洗ってるんだけど!」と言うまでが負のルーティンである。

ところが、今日はお風呂前の2時間、ずっと黄昏泣きっぱなしだったスミレちゃん対応により、精魂尽き果てたわたしは無言で淡々と顔を洗っていた。

すると、顔を洗い終えたことを確認したケイくんから「体ふいてー」とタオルを渡され、ふと浴槽を見ると、おもちゃはすでに片付けられていた。

「え…すごい!えらいね!!」と驚くわたしに、
「いつもはね、ケイくんお風呂では”怒りモード”がおなかにセットされてるんだけど、今日は”やさしいモード”がセットされてるんだよね」と穏やかに説明を始めた。
「そうなの?毎日やさしいモードがいいんだけど…どうしたら怒りモードからやさしいモードにできるの?」
「ケイくんのおなかをそーっとなでながら、『やさしい きもちに もーどれー♪』って言えばいいんだよ」
「そうだったの?!今度からそうするよ」
「ほかにも”メソる(メソメソする)モード”と”泣くモード”と”すぐお腹いっぱいになっちゃうモード”があるから気をつけてね」
と注意喚起され、思わず苦笑いしてしまった。ケイくんなりに、日常の中で困らせているモードを把握しているらしい。

そもそも、ケイくんは日中わたしが洗面台を掃除すると、帰宅時に手を洗う際すぐに気付き、「お掃除してくれて、ありがとう」と、さらっと言うような子なので、細かなことによく気付き、覚えていることも多い。

だから、お風呂から出るときはおもちゃを片付ける、お母さんが使っているお湯を急に止めたら困らせることは重々理解しているはずだ。
それなのに、あえて片付けず、お湯を止めるのは、予定している行動に対して先に促されてモヤっとした腹いせのような部分があったのかもしれない。

わたし自身も把握していることを言われることが本当に苦手だ。それにもかかわらず、ケイくんに対して口うるさいな、差し出口だな、小うるさいな…と思いつつ、ついつい負のルーティンのゴングとなる「おもちゃ片付けて」を言っていた。
おなかの中を”怒りモード”に差し替えていたのはわたし自身だったのかもしれない。

疲れてひざの上で寝転がるケイくんの髪をドライヤーで乾かしながら、明日からは小うるさいことを言う前に、一旦深呼吸して、相手をまだ待てないか自分に問いかけようと思った。モードを意図せず変えてしまわないように。

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