きっと何者にもなれない私の話

「廻るピングドラム」というアニメをご存知であれば話が早いが、その中に出てくる女王様的なひと(伝われ)が、「きっと何者にもなれないお前たちに告ぐ!」と決め台詞を言うシーンが度々ある。
きっと何者にもなれないお前たち。あぁ~私もきっと何者にもなれない。その時から、その言葉が折に触れて脳内をぐーるぐる廻るときがある。

正直言うと、何者になりたいわけではない。自分にそういう属性を与えたいわけでもない。と、思う。多分。
ただ、自分の周りにいるすごい人たちがキラキラ輝いて(傍から見れば)過ごしている中で、劣等感、コンプレックス、自己嫌悪、そういった感情に苛まれることもあるよという、割とよくあるお話。

高校での同級生がまずそれに当たる。
私はひょんなことから都内の国立小中高一貫校に高校から通うこととなり(どこのことか大体絞られてしまうかと思いますが)、そこはクラスのうち5~6人くらいが毎年東大に合格するいわゆる進学校であった。
大体の傾向として、成績という点では入学時点が高~中~小の順に悪くなっているものなので(なので小学校受験をしても意味ないかもな~と思っちゃう要因でもある…)、高校で入った私は頭がいい部類に属されてしまうが、実際は全然そんなこともなく、そもそも中学時代に通っていた塾の他都市含めた成績一覧の、1位とか10位以内にバンバン名前が出てくる子がいたりして、私はたま~に後ろの方に名前が載ることがあったりなかったりだったので、おぉ貴方が1位の○○さんですか…と最初から末席根性であった。
そういえば中学でSAPIXに通っていたとか鉄緑会に通っている子もいたけれど、どちらも茨城の民には初耳だったので、そうなんだ~(鉄緑会って何やねん…ほうれん草みたいな名前やな…)?と適当に返していた。笑
ただ思うに、実力がある子はそんなの関係なくサッサとハイレベルなところに受かっていたし、明らかに実力不足なのに鉄緑会の宿題ばかりに注力してそれでも振るわない、という子も見たので、進学塾その他へのこだわりもどうも希薄になってしまう…合う子には合ってスクスク伸びるとは思うけどね。
まぁでも、蓋を開けてみたらやはり特に高校からの子はキラッキラ。医者、公認会計士、財閥系商社で駐在女子、裁判官、GAFAで法務、官僚、IBDで海外駐在、建築事務所主宰、エトセトラ、エトセトラ。
それとはまた別のカテゴリとして、特に小学校からの子は親が金持ちパターンも多く、さらっと私立医学部に行って医者になったりしている。私大医者か…すごいな…。
おぉ、きっと何者にもなれない私よ。それともSAPIXや鉄緑会に通っていたらどうにかなっていたのか?なっていた気がしないな~。なんというか、そもそものスペックが違う感じだった。

ただ、割と同級生同士で似たようなことは感じているらしい。
卒後もそうだろうけれど、高校時代においても中学まで成績良くてちやほやされてやってきた先でみんなそんなの関係ない(成績の公表や順位付けすらもそういえば一切なかった)、プラスアルファの芸当はないの?という雰囲気(主観です)な高校なので、自信を失って心のバランスを崩す子も何人かいた。
私の場合は、そりゃたまに落ち込んだりもしたし、そもそもうちのクラスにいた高校からの子はみんな顔も可愛くて、ちょっと恵まれすぎじゃない?となったけれど、元から末席根性だっただけでなく、中学時代に意志に反してクソミソにバレーしたせいで、ボールが来たら全ての感情を排して全身を投げ出してレシーブする身体になってしまい(後から「特殊な訓練を受けてきたんだろうな…と思った」と言われた。軍隊か?)、そこまで強くない部活だったのもあって茨城から来た変な奴として入部当初から試合に出させてもらっていたのでまぁバレーがあるからいいかと思ったりしていた。マジでバレー嫌だったけれどこんな感じに身を助けるとは。

それからあとは、就職してからこれまたひょんなことで行った研修旅行。
アカデミアの有望な研究者の方々を複数名招集し、米国の研究や規制や企業の最前線を色々と見て回る二週間の旅。
これは、私の働いていた組織で研究者とは別の専用枠が毎年設けられていたのだけれど、まだ始まったばかりで認知度も低く、そもそもみんな忙しくて二週間も仕事を開けられない!と誰も応募していなかった。
逆に私は仕事が閑職部署でやりがいも理念もなく迷走と鬱々とした日々を過ごしており、時間だけはたくさんあったので逃げるように応募してみた。
これが楽しかった~。
こんな適当にすり抜けて潜入してきた輩とは違い、まぁ~みんな優秀。。私が最年少で、同い年の子と1個上の子がヤングチーム、その他はもう少し上の年齢の先生方だったけれど、まぁ~優秀(二度目)。
ヤングチームの子はどちらも東大の研究者で、ほんと頭が良かった…(月並み)。頭がいいし、面白いし、優しいし、英語もすらすら出てくる。訪問先で大体質疑応答があるけど、池上彰さんが唸るであろういい質問が続々。
1人の子は留学経験ありだったけど、もう1人の子は留学経験もないのになぜそんなに喋れるんだい…聞けば地方の公立進学校出身、一切塾へ行かず東大現役合格。あぁ天才型。
余談だけれど、もう1人の子も5人姉弟(!)らしく、末の弟さんはずっと囲碁棋士を目指して奨励会に入っていたけれど、規定の年齢までにプロになることは叶わず学歴は中卒、でもそこからササっと公認会計士になったそうな。うん、なんか頭がいい話だ…。
他もみんな各々の専門領域から唸る質問続々。英語も下手、これといった専門領域も経験もない私、明らかに場違い。最初の数日は人見知りもあってすごく落ち込んだ。でもほんとみんな優しいので色々と話しかけてくれて本当にいい人たちだったよ~。
劣等感を抱えながらも、その時は一番下っ端である気楽さもあって旅の恥はかき捨て、と途中から開き直って頑張ってそれっぽいことを聞いたり聞けなかったりした。やっぱ英語しゃべれるようになりたいな。
なぜかボストンでカラオケに行くこととなり、外国籍の方もいたので何となく英語の歌が望まれていた感じだったところ、1人の先生がEMINEMをドーンと歌いだして(大ファンらしい)一同テンション爆上げになった。
英語でラップ!そしてまさかのWithout me!超かっけ~
ホテルの部屋に戻っても興奮冷めやらずyoutubeでしばらくEMINEMを聴いていた。他の先生もそうだったらしく、しばらくEMINEMの視聴回数が我々だけで上がったことだろうと思う。
なお私はプレイバック・Part2を歌ったりしていました。英語とは。笑
そしてその方は後に異例の速さで教授になりました…一芸二芸と与えすぎでしょう、神様。

というか、そういうのに選ばれる方はやはり優秀なので、帰国後は各々それぞれ活躍されていて、何もしてなくてもお名前が出てくるパターンが多い。
ヤングチームも、今近況を知ったところでは、1人は産育休を経て准教授、1人はMITでポスドク、うぉぉぉぉ…というところ。

きっと何者にもなれない私。夫にも「そんだけ周りがすごいのにどうして君はその程度なんw」と茶化されることがある。それ~!
でもなんとなく要因も分かっている。まず単純な能力が足りてない。キラキラしている人たちは、もともと高い視座の人たちで、私はその隙間でたまたま彼らの世界が見られる状況が二度ほどあっただけ。
あと、多分、努力が継続されていない。どうなりたいのかが明確でもないし、そのために努力もなされていない。
なるべくしてなっている。

だから劣等感に苛まれる資格すらも本来はないのだ。
そもそも過去の色んな経験にすがっている時点で、今が全く輝いていない証拠といえる。そもそも輝いている時期があったかも微妙だけれど。
ちなみに子供の有無はそんなに関係してないな。子供を産んでいようがいなかろうが、すごくはなれなかった気がする。根性がないので…。
ただまぁ、たまに、そういう人たちのまぶしさに目をくらませながら、その世界を垣間見える場所にはいたわけだし、自分も一歩一歩やっていくか…と思う日があったり(調子がいいとき)、なかったり(悪いとき)する。
そんなもんですよね~(謎エンド

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