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平尾山とタイムトンネル

平尾山は、長野県佐久市の東部に位置する関東山地の一部で、最高峰の平尾富士は標高1,156mである。
信州百山の一つに選ばれている。
関東山地とは、関東地方と中部地方を隔てる山地であり、関東平野の西側にあり、
群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、長野県、山梨県にまたがる。
第三紀層を基盤とする成層火山で、成立は荒船山より古いとされる。
頂上から北側、西側にかけては複輝石安山岩、南側は溶結凝灰岩で主に構成されているようだ。
この山は、物心ついた頃から気になっていた。
その理由は家の庭からも、保育園からも東方向に見え、それは手をグーにした形によく似ていたからだ。
平尾山の向こうは群馬県との県境であり、妙義山や荒船山など険しい山々が連なっており、深い森が続いている。
1986年小学校3年生の秋の遠足では、その平尾山に登ったのだ。
平尾山の山頂からは、北には浅間山、南には八ヶ岳、西には飛騨山脈が聳えている。
佐久平盆地を一望できる展望台である。
その平尾山頂上からの帰り道、群馬県側へ走る小さな道を見つけた。
次の日曜日、友達と3人集まり、自転車でその道の先へ探検してみることにした。
軽自動車一台がやっと通れるほどの細い道であったが舗装してあった。
最初はすぐに引き返す予定だったが、舗装道路ということもあり、どんどん友達とその道を下って行った。
やがて、山の稜線に挟まれた小さな集落が見えてきた。
こんな山の中に村があるとはびっくりである。
しかし私と友達はその集落を見た途端、お互いに顔を見合わせた。
日本の景色であることは間違いないが、時代がおかしいのだ。
どうみても江戸時代以前の風景が広がっていたのだ。
まるで、時代劇の風景であった。
小さな川を挟んで家々が2列に並び、そのすぐ川の反対側は山の稜線が迫っている。
家は木造で、屋根には漬物石のような石が乗せてあり、窓はガラスでなく障子であった。
見たことのない木製の農具が置かれており、不思議なことに人影は全く見えなかった。
ただ、庭や畑は手入れがされており、人は間違いなく住んでいるようではあった。
私と友人はしばらくその集落を眺めて立っていた。
その時であった。
川の向こう側から年配の男性の叫び声がしたのだ。
怒ったような表情で私たちに何か言っているようだ。
しかし何て言っているか全くわからない。
日本語の発音に非常に似ているが、間違いなく現在の日本語ではなかったのだ。
ただ言えることは、その男性は私たちが来たことを歓迎していない様子であった。
怖くなったので三人は、来た道を長野県側へ必死になって駆け上がった。
しばらく数人の男性が追いかけてきたようだが、幸い相手は老人だったため何とか逃げ切ることが出来たのだ。
そして無事に家の近くまで帰ることが出来た。
私たちはその日あったことを秘密にすることを誓い、それぞれの家路についた。

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