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最後の信越本線横川運転区

世の中の出来事

8月1日 - 航空機メーカーのマクドネル・ダグラスがボーイングに吸収合併される。
8月4日 - 世界最高齢のフランス人女性、ジャンヌ・カルマンが122歳で死去。
8月6日 - ソウル発グアム行きの大韓航空801便ボーイング747-300型機がグアム国際空港への着陸進入中に墜落、乗員乗客254名中228名が死亡(大韓航空801便墜落事故)。
8月6日 - マイクロソフトが1億5000万ドル相当のApple Computer株を購入し、両社は業務提携およびライセンス交換に合意する。
8月31日 - ダイアナ元イギリス王太子妃、パリで交通事故死。

最後の信越本線横川運転区

大学へ入学して独り暮らしをはじめてから早くも4ヵ月が経ち、前期カリキュラムが終了した。
7月末日には2週間に亘って続いた前期テストが終了し、8月は長野の実家に行くことになった。
長野の実家は北陸新幹線の佐久平駅近くにあるが、1997年8月当時は開業直前の為に在来線を利用した。
8月上旬ある日のお昼過ぎである。
大学の友人とコンビニで買ってきた冷やし中華を一緒に食べた後、居心地が良かったアパートを出発した。
高崎駅へ到着する頃には既に夕方になっていたが、高崎に来たついでにと思い、一旦下車し駅周辺を散策してみることにした。
子どもの頃お土産で頂いたことのある、懐かしの高崎名物だるま弁当がキヨスクで売られ、ベルギーワッフルの焦げたバターの良い香りが駅ビル入口付近を漂っていた。
駅前は賑やかであり、群馬県の若者たちが集まる”聖地”のような雰囲気だ。
VIVRE向かい側にあるサンテオレで大好きなコロッケバーガーとカフェラテを注文する。
窓際の席に座り、VIVREエントランス付近を眺めながらカフェラテを頂く。
窓から見えるカラフルな夏のファッションと、最近普及し始めた携帯電話で男女数人が待ち合わせ相手と電話をしているようだった。
やがて信越線下りの電車が発車する時間となり、サンテオレを出て再び駅構内に向かう。
信越本線2番線ホームから発車する。
高崎出発時は帰宅時間と重なった為なのか車内は満員であった。
大きなToys "R" Usの買い物袋を抱えた斜め向かいに座る女性側の窓から、外の景色を眺めていた。
その女性は次の駅”北高崎駅”で下車する。
さらに群馬八幡駅、安中駅でほとんどの乗客が下車した。
磯部駅を過ぎた頃から、急に電車の中は寂しくなった。
同時に窓の外の景色も市街地から離れるにつれて、寂びれた街並みに変わり、夕日に逆光となって浮かび上がった妙義山が、碓氷峠の険しさを予感させる。
横川駅に到着すると西に立ちはだかる県境の山によって、夕日の光は遮られて辺りは薄暗くなっていた。
ここではEF63という碓氷峠専用に魔改造された電気機関車を連結する作業が行われるため、数分間停車する。
この時間は横川駅の名物”荻野屋さんの釜めし”が販売されることで有名である。
翌月の北陸新幹線開業にあたり、横川と軽井沢間は廃線となり、このような風景も見納めであると考えると少し寂しい気持ちもあった。
ちなみに荻野屋さんの釜めしは、益子焼の駅弁として有名であり、地味ながらとてもおいしい。
ここからは連結された電気機関車の独特な振動を感じながら峠を上り、幾つものトンネルを通過する。
途中丸山変電所や、煉瓦製高架橋を通り過ぎていく。
横川を出発してから20分程走り軽井沢駅に到着する。
辺りはもう真っ暗になっていた。
まもなく小諸駅に到着。
駅に到着しホームに一歩踏み出すと、高原の草の香りと涼しい風が迎えてくれた。
駅を出ると父も既にクルマで迎えに来ているはずである。

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