版画製作に関するまとめ

過去にPIXIV FANBOXに投稿した記事をまとめています。

2021年の版画製作記録

版画製作メモ

2021年8月10日 11:09

毎年夏と冬に版画を彫っている。
元々自宅のプリンターが不調で印刷したものを外に出せる状態ではなかったため、印刷手段として版画を始めた。プリンターが動かなくなり今年に入ってから買い換えたため印刷で暑中見舞いを作ることも出来たわけだが、なんだかんだで版画製作は楽しいので版画になった。

半年に一度しか作らず毎回忘れては調べ直すので、ここにメモしておく。

①版
いつもはゴム版だが今回細かい模様があったため木を使用。どこで買った何の木か忘れたがもしかしたら山形の広重美術館で購入したものでは。木は柔らかで彫りやすい。さすがにゴム板よりは力が必要。ゆっくり彫れば曲線も出しやすい。
細かい線はとっておきの三角刀でゴリ押しせず切り出し刀を使うように。表面にやすりをかける、ニスを塗るなどしてから刷りに入ると良いらしい。ただしニスは絵具を弾いたりするのでかけないかニス→やすりの順番で。ニスをかけると目が詰まるので彫り直す部分も出てきそう。強度や保管を気にしないならそのままでも良いのかな。
ゴム板と違い水洗いはほとんどしないらしいので目詰まり対策が必要。絞った布巾で拭いたりしてみたが正しいのかどうか。
転写時は100均のカーボンは使わないこと。転写出来ていなくて泣いた。

②ローラー
今回からゴムローラーを使用。絵の具に足した水はほんの少し。入れすぎると滲むのでほどほどに。澱粉のりは未使用。入れた方が良かったのでは。部屋に転がっていた缶の蓋を絵の具入れ代わりにしたがローラーが滑る。ボコボコツルツルしない物を探すように。
筆で地道に塗るよりは早い。絵の具の量などもう少し慣れは必要だが今後もローラーに活躍して貰いたい。
表面の凹凸のせいか絵の具の量か紙との相性か、擦れが酷く、全部筆で線を引き直す羽目になったので次回何とかしてくれ。

③絵の具
版画用絵具の他、アクリル、ガッシュ、ポスターカラーなどもメーカーによるが使用可。今回はニッカーポスターカラーを使用。のりは入れなかった。乾燥すると表面がガサつくためデザインコートを吹く。デザインコートを使えば表面は落ち着くが、強度は要確認。定着し引っ掻き傷に強くなるとのことだがはたして。
デザインコートはパステルや鉛筆の定着用としても使用可のもの。

④多色刷り試作
今回多色刷りの版も作った。自分としては好きだが仕上がりのイメージからは離れており没にしたため送付はしない。
ポスターカラー、不透明水彩を使用。アクリルガッシュは後始末が大変なので次回は使用しない方向で。
多色刷りの場合はアテをしっかり作ってから作業すべし。版の彫る部分残す部分の境界は両端をしっかり決めるべし。多色刷りの場合何度も紙を擦るし裏面もだいぶ汚れる。葉書は不向き。
手元に何故かあったBFKが版画用紙なので使ってみる。

以上、今年の版画メモでした。

残暑見舞い混迷の製作過程

2021年8月16日 17:47

今年の残暑見舞いは三度の直しの果てに出来上がった。迷いに迷った軌跡を残しておきたい。残してどうなるかというと荒ぶり迷っていたことがよく分かるだけなのだが、まあ記録として残しておく。まず完成品……の一歩手前がこれである。実物に最も近い。実物は線を整え模様を金で描き足しているのだが、仕上がった物の写真を残さなかったので完成一歩前ということ。線で彫った模様がやや見える。

どのような模様を彫っていたのかというとまあこんな感じです。画像は下絵に色をつけた物。色分けするとなるほどなーと思える部分があるかもしれない。武者絵風のほがたろう。今年も中止となった夏祭りを想って一枚。そう、祭りが恋しくなって描いたのだった。例年極彩色の山車が練り歩いた街の、静かな夏、失意の二年。夏の色は青かったり黒かったり涼しかったりするが、暑さに立ち向かい踊る祭りの風景もまたこの時期の姿だよなあと。これまで涼を求めて残暑見舞いを作ってきたわけだが、今回は熱い方向に舵を切ったのでした。

さて、完成するまでの間に、この絵は本当に面白いのだろうか、葉書でお手元にお届けした時にパッと見て何の絵か分かるだろうかなどと散々迷った。以下に過程の絵を残しておく。

全ての始まりはこの版画だった。画像左、2019年の残暑見舞いで、灯台と星降る空。灯台のある風景が好きなので、灯台イラスト集などを作りたい。そんな勢いで描き始めて画像右が出来上がる。が、版画としてはなんか違うなと彫るに至らず。

夜と光のイメージを膨らませる。
月や太陽の光が落ちて道を描いている風景が浮かんだため、その方向のスケッチをあれこれ生産している。

改めて見てみると、これで良かったのではという気持ちになる。だがいけなかったのだ。夏だったから。暑くてなんにも決まらない。朦朧とする。七月が終わっていく。期限が迫る。
とにかく混乱していた。自分が描いていて好きな絵と見ていて楽しい絵は別だろうとか、いいや思うままに描くべきだとか、自分の中にあるものしか出力出来ないし、これまでもそうやってきたじゃあないかとか、まあ色んな人が常々向き合っているであろう問題と向き合っていた。

この辺りからテンションが上がっていき、脳内で祭囃子が流れ始めた。いや、実際に環境音として聞こえていた。毎年夏の夕方になると祭囃子を練習する音が街中から聞こえる。今年は祭りが中止だというのに何故囃子練習をしているのか。祭を恋しく思う人々が熱風の中に渦巻いている。祭りが無いと熱くならず夏が来ず冬も来ない。今必要なのは祭なのではないか。誰に必要無くても私に必要だ。夏の火祭、夜に輝く山車の色!などとヒートアップして夜、光のテーマが祭りに結び付いたわけである。地元の祭りが大好きなのである。

墨の書き割り、極彩色、蝋書きした部分から漏れる星のような電球の光。祭りのイメージと、これまでのスケッチを錬成したものが上の画像のもので、心が決まった(はずだった)ため彫って多色刷りまで試している。祭りの色合いやステンドグラスをイメージした配色。

やっと終わりだと思われたが、さあ出来上がってみると完成予定から離れた仕上がりになっている。当然だ、突然に舵を切ったのだから。自分としては面白いがいささか詰め込みすぎではないか。もはや何の絵だかよく分からない。
さらに前回の記事で書いた版画作業の面でも問題があったため没となる。ちなみにこの前に一枚版を作っていたため実質二枚目の没である。挫けてはいけない。
没にはなったが作っていて楽しかった。機会があればまたやりたい。次回やるならばもう少し詰めて拡げていきたい。

ここから祭り、山車の下絵である武者絵、単色、などと再設定して最終形態になった。

どう描くか、何を作るか、迷いに迷って出る答えはいつも「熱のままに」であるが、熱源がどこにあるのかを探すために右往左往するのである。誰かに手渡す物だから、熱のままに作った物を熱いうちに届けたい。流星みたいなもので、届いた方々、見て下さった方々も、そんなもんだと思って欲しい。
とにかく色々描いたなあという夏のお便りだった。

ところで、ほがたろうが葉書用の絵として登場するのは初めてではないだろうか。これまで風景や動物を版画にしていたわけで、自創作キャラクターは題材にしていなかった。ほがたろうをもっと活躍させたい。ツイッターの固定ツイート(漂流する天使譚企画)などで案内役を務めているためホームに飛ぶ方などはお馴染みなのだが知名度やいかに。とりのめくんなど、時々口にする創作キャラクターについての記事もそのうち書いておきたい。

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