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STEAM教育とは?意味や目的・実践例など、わかりやすく解説 (2)

前回の記事では、STEAM教育の目指すところやSTEM教育との違いについて述べました。今回は、より詳細に STEAM教育の特徴について見ていきましょう。



STEAM教育の特徴は?

STEAM教育の特徴は?

【文献 3 pp.168-179., 23】

STEAM教育は学習者が主体

STEAM教育は、児童や生徒といった学習者が主体となるのが特徴です。
学習者が、自活的な学びの中で自ら問題を発見・設定し、試行錯誤しながら解決に向かい、その経験から知識を再構築して発展させていくようなプログラム、そして複数の科目を横断するような体験的なカリキュラムが組まれます。

STEAM教育は「探求型」の学びが基本

STEAM教育は、学習者が自ら問題解決をする「探求型」の学習と密接な関係にあります。
探求型の学習として、プロジェクト・ベース学習、プロブレム・ベース学習、デザイン・ベース学習などが挙げられます。

プロジェクト・ベース学習(PBL)

プロジェクト・ベース学習は、学習者が少人数のグループとなり、自ら課題を設定し、リサーチや実践を通して解決に向かう学習法です。
これを受けた学生は、事実を正確に理解する力や、批判的に思考する力、さらには自信が向上したと報告されています。

プロブレム・ベース学習(PBL)

プロブレム・ベース学習では、学習者グループに課題が提示され、チームで解決に向かう過程で、解決策が一つではないことを学習します。
医学教育の分野で多く行われている学習法で、ハーバード大学の医学部がこの学習法を導入したところ、問題解決能力と臨床でのパフォーマンスにおいて、いずれも向上がみられました。

デザイン・ベース学習

デザイン・ベース学習は、学生が持つ知識や発想を、デザイナーが使うメソッドを用いてものづくりに繋げ、そのプロセスから学習する方法です。
「定義→創造→評価→再デザイン」というプロセスを反復する中で、課題を取り巻く要因を理解する力や、知識の応用力、また社会問題への意識が向上するとされています。

PBLにおいて、教師はファシリテーター(学習支援者)やチューター(助言者)となります。適切な事例の提供や基本的な解説などを行い、学習者の学びをサポートしていく役割を担います。

STEAM教育は複数の領域を横断する

STEAM教育では、違う科目や異なる分野でも、各科目の中で関連する要素を意識しながら教育を行うのが特徴です。
例えば、歴史の授業で特定の機械の発明について学んだ後、学びの場を工場に移し、実際にその機械のプロトタイプを作成してみるといった取り組みです。
このように、STEAM教育では各教科の領域を超えた視点から多くの学びを得ることが可能となるのです。

STEAM教育と従来の教育法との違い

STEAM教育では「学習者」が主体であるのに対し、従来の教育法では「教育者」が主体でした。

学校教育と聞くと、先生が黒板の前に立ち、教科書に沿って授業を行い、生徒達はその内容を学習し習得していくという光景がイメージされるのではないでしょうか?
そのような教育法は「系統学習」とよばれ、戦後日本の高度経済成長を支えてきた方法です。
系統学習は、知識を短期間に子どもに習得させられるというメリットがあります。

しかしその一方で、生徒が必ずしも授業内容に興味・関心を持てるわけではなく、生徒主体の学習が成立しにくいというデメリットがありました。
STEAM教育では、学習者自身の興味・関心、社会的な問題意識が根底にあり、学習者はそれを基に自ら学んでいきます。
従来の教育と比較すると、その違いはより明白となりますね。

STEAM教育がどのようなものか、段々と理解が深まってきたのではないでしょうか。
続いては、STEAM教育は何歳から開始できるのかを解説していきます。


STEAM教育は何歳から開始する?

STEAM教育は何歳から開始する?

【文献 8、9、10、11】

STEAM教育は幼児から実践可能

結論として、STEAM教育は幼児のうちから実践できます。
日々の遊びの中に取り入れるなどして、自宅でも行うことができるのです。
近年ではSTEAM教育を意識した玩具や絵本、教育玩具の開発が進められており、通販や街の玩具屋さんでも購入することが可能です。
さらに本やインターネットでは、身近なもので手作りできる教材や、実際に教材を使用する方法、さらには実践してみた体験談レポートなどがいくつも公開されています。
STEAM教育は、意外と身近なところでも実践できるということが分かりますね。
STEAM教育の主体は学習者自身ですので、幼児期のSTEAM教育においては、子ども達が自ら取り組めるということが重要です。
子どもの知的好奇心やワクワクする気持ちを大切にして、楽しみながら実践できるとよいでしょう。

幼児期の教育の必要性

幼児期の教育に関して、近年その重要性の認識が高まってきています。

幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり、近年の国際的な研究成果等により、その重要性の認識はますます高まっている。

Society 5.0 に向けた人材育成|文部科学省

また、幼児期の教育においては、「自発的な『遊び』を中心とした生活を通して、各個人に応じた総合的な指導を行うこと」、そして「屋外での子供同士の関わりや自然との触れ合いを経験できる環境構成を行うこと」が重要とされています。(参考:Society 5.0 に向けた人材育成|文部科学省)

これより、幼児へのSTEAM教育は、生涯という長期的な目で見ても有意義であることが分かります。
しかし、幼児教育分野のSTEAM教育は、まだあまり浸透してはいません。
そのため実証研究が進められており、例えばお茶大こども園ラボは、「幼児期の教育・保育探求プロジェクト開発」という未就学児を対象としたプロジェクトに取り組んでいます。

STEAM教育は幼児のうちから実践できるものの、今はまだ黎明期にあることが分かりましたね。
今後より一層研究が進み、さらに活発化していくことが期待されます。

次回は、STEAM教育の具体的な実践例を詳しくみていきます。



【参考文献】

  1. STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進, 文部科学省, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/mext_01592.html

  2. 21世紀の教育・学習, 経済産業省, https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mirainokyositu/pdf/001_09_00.pdf

  3. ヤング吉原真理子ほか. 世界を変えるSTEAM 人材, シリコンバレー「デザイン思考」の核心. 朝日新聞出版, 2019.1.30

  4. NRI未来創発, 野村総合研究所, https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf

  5. GIGAスクールとSTEAM教育, JSTEM 日本STEM教育学会, https://www.j-stem.jp/features/column_20221006/

  6. 統合イノベーション戦略 2019, 令和元年6月 2 1 日 閣議決 定-内閣府, https://www8.cao.go.jp/cstp/togo2019_honbun.pdf

  7. 長野大学紀要, 第34巻第 1 号 27-39頁 2012, 27, 27 *社会福祉学部講師 我が国の戦後教育史における学習指導過程の特徴

  8. Society 5.0 に向けた人材育成, 文部科学省, https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/06/1405844_002.pdf?_fsi=GYvFjkEo

  9. 【編集部体験】6/24新発売のSTEAM本掲載のアクティビティをやってみた!, STEAM JAPAN, https://steam-japan.com/practice/7169/

  10. トイザらス、遊びながら学べる「STEAMトイシリーズ」を7月15日に発売, こどもとIT, https://edu.watch.impress.co.jp/docs/news/1423386.html

  11. お茶大こども園ラボ, 幼児期の教育・保育探求プロジェクト開発, https://www.learning-innovation.go.jp/verify/z0051/

  12. 「未来の教室」と EdTech 研究会 2 第1次提言(案) 3 (2018年6月4日時点版), 経済産業省, https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mirainokyositu/pdf/004_02_00.pdf

  13. STEM/STEAM教育をどう考えればよいか, 諸外国の動向と日本の現状を通して, 大谷忠 東京学芸大学大学院, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssej/45/2/45_93/_pdf/-char/ja

  14. 高等学校学習指導要領, 文部科学省, https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/11/1384661_6_1_2.pdf

  15. 国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業, https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/gakkou/1309941.htm

  16. 科学の甲子園-国立研究開発法人 科学技術振興機構 次世代人材育成事業, https://koushien.jst.go.jp/koushien/

  17. 兵庫型STEAM教育について, 兵庫県教育委員会, https://www.mext.go.jp/content/20210716-mxt_kouhou02-000016510_01.pdf

  18. 未来の教室, 経済産業省, https://www.learning-innovation.go.jp/about/

  19. 「未来の教室」ルーム 経済産業省「未来の教室」・「STEAMライブラリー」交流サイト, https://foresta.education/learning-innovation

  20. 20学校教育情報化の現状について, 初等中等教育局情報教育・外国語教育課, https://www.mext.go.jp/content/20210908-mxt_jogai02-000017807_0003.pdf

  21. 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)のポイント, https://www.nier.go.jp/timss/2019/point.pdf

  22. Society 5.0とは, 内閣府, https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

  23. L.ダーリング-ハモンド著.深見俊崇訳.パワフル・ラーニング, 社会に開かれた学びと理解をつくる. 北大路書房,2017.5.10

【画像出典】

  1. NovelAIhttps://novelai.net/


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