角野隼斗さんの韓国仁川公演の大感動が教えてくれたこと(2022.12.7)

※この文章はものすごく長いです(1万字以上あります)。正直この仁川公演の遠征で得たものが大きすぎて短くまとめられず、長くなってしまいました。読まれる方は大分端折って読むか、お茶でも入れて小一時間ほど作るか、イライラしない広い心の準備をなさってくださると幸いです。

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昨年のショパンコンクールが終わったとき、角野隼斗さんはその繊細な音色と素晴らしい演奏で世界中を魅了したうえで、結果としてセミファイナリストになった事にとどまらずYouTubeでの圧倒的なショパコン動画再生数を記録したことからも、幅広い音楽ファンに世界的な人気のある唯一無二のピアニストであることが証明されたと思う。

そのために、角野隼斗さんの魅力にそこから気がついた多くのマスコミにも数多く取り上げられ、その後の活動においては演奏会のレポートが音楽ライターの方々によって専門的かつ的確なものが世の中に発表されていたので、正直なところ、しっかりとしたクラシックの知識もなく専門家でもないわたしに、書くべきことや書く必要というものは、もう無いなと思っていた。

むしろ良く分かっていない自分のような人間が書くことで、事実誤認につながったり、誤解を招いてしまったら、それこそ角野さんの足を引っ張ってしまうのではと思った。書くこと自体がおこがましいのではないかと。
なので、もうこれだけ魅力が知れ渡った角野隼斗さんの事は世の中が放っておかないだろうと、今後は公的に発表される記事やレポートにお任せすることにして、自分は『未来』以降のnoteは、もう書かないつもりでいた。

その間も演奏会に行ってはたくさんの感動を得て、ワクワクや音楽の美しさなど前向きなエネルギーを角野さんの活動から得続けてきていて、本当に本当に有難かった。
それがなかったら、本当にこんなに頑張れなかった。
だけど、あるとき(数か月前)限界が来て。どうしようと世界で1人きりのように、出口のない悩みの中で頭と膝を抱えてしゃがみ込んでいたら、やっぱりそこから救い出してくれたのはかてぃんさんの音楽だった。

生き延びることができたのは、間違いなくかてぃんさんの音楽があったからだ。それを機に思った。
別に音楽の専門的知識がなくてもいい。自分が感じた事を、的外れでもかまわないから、そのまま描けばいいんじゃないかと。

ご本人に聞いたわけじゃないから感想や解釈が間違ってても、もう仕方ない。追い切れていない情報やインタビューや何かで、語られている角野さんの心情と違ってしまっていたら本当に申し訳ないと思うけれども、そんな誤解を生んでしまう覚悟も含めても、こんな小さい極東の国でひっそり書いている日本語のnoteが与える影響など微々たるものだろうとも思うし。

というか、それより何よりもう自分が極限で、せめてこの世のなかで心から美しいと思えるもの、心底好きなものについて自由に書いて、生きるための前向きな力を得ることくらい、それ位良いんじゃないかって思って、自分自身に許すことにした。

前置きだけで長くなりましたが。
そんなわけで初めての海外遠征、韓国の仁川公演に行った事について、角野さんファンの方には全く必要ないパートも多いと思うけれど、私自身がこの旅を通じて、体験したもの体感したもの、感じた事思った事、受け取ってきたものについて、すべて自由に書きたい。
今の私の状況が大いに反映されてしまうので、雑記パートが多くなるかと思いますし、超絶長くなると思いますが、これはあくまで自分のための文章なので、温かく見守ってくださるとさいわいです。


仁川公演当日。7日の朝早くに家を出たら、冬の雲一つない澄みきった空に、川鵜の群れがV字飛行で空を次々横切っていくのが見えた。
美しいV字の陣形を作りながら、何隊も何隊も数えきれない数の隊列を組んで、空を覆いつくすほどの大所帯で一斉におなじ方向へ飛び立っていた。
風に煽られて崩れてしまってもすぐまた立て直して、いつの間にか美しい陣形をまた作って、一斉に空を横断していく。
数えきれない美しい形の大行進に、生物の生存本能や生きる知恵を思った。そのV字の造形を自然に生み出すこの世界の奇跡的な美しい有り様にも、なんだか胸を打たれてしまった。
その光景があまりに美しくて1日の始まりからこんなに感動したから、この旅はなんだか特別なものになる予感がした。
そしてその通り、この仁川公演の旅は物凄く私の人生に刻まれる印象深い経験になった。一生忘れないと思う。


韓国に行くのは二度目で、とは言えだいぶ昔に行ったっきりで、そのときは明洞とか東大門とかそんな大発展したエリアしか行ってなかった。
仁川空港からアートセンター仁川近くのホテルまで、鉄道を使う勇気がなくタクシーに乗ったのだけど、まず違和感があったのは英語がなんだかあまり通じないという所だった。
前回は英語がかなり誰にでも通じたのでコミュニケーションにあまり不自由しなかった(私は片言しか話せないけど向こうが話せるのでリスニングさえできればなんとかなった笑)のだけど、タクシー運転手さんに英語が通じない、街中の人にもあまり通じない(声をかけた人がたまたまかな)ので、韓国語を一切分かっていない私は「あぁ少しくらい勉強してくるべきだった!」と後悔した。

でも、人間同士なんとかなるもので、スマホの地図を見せたり、ジェスチャーや単語やなんかでやり取りしているうちに無事仁川市街に着いた。
仁川はおそらくだけどここ最近急激に開発されたエリアかなと思われる(完全に推測)感じで、ビルが面白くて、同じ形同じデザインのビルが等間隔に三つ子のように立ってて、そのとなりには別の同じデザインの双子ビル、また横には別の四つ子ビル、みたいに並んでいて、なんかゲームの中とかSFとか、そんな迷路に迷い込んでしまったような不思議な景観をしていた。面白かった。

仁川のホテルの部屋にはとんでもなくでっかいテレビがついてて(もはや壁みたいなサイズ)、そこでYouTubeが見られたので「Hayato Sumino」を検索したら、がっつり最初にトップで出てくるのが【7 levels of "Twinkle Twinkle Little Star"】だった。コメントもいまだに新しいコメントが英語や日本語で次々と寄せられ続けていて、この動画は本当に世界の隅々にまで広まって、愛されているんだなと改めて感心してしまった。

そんな大画面のテレビで角野さんのYouTubeを色々堪能し続けていたら、「公演終了後にサイン会を行うので18時から先着300名で整理券を配布する」というツイッターの情報に完全に乗り遅れてしまっていて(そもそもまめでなくボーっとしているので)、気づいたときには17時45分だった。
そこから追いはぎにあった人みたいに服をはぎ取って(オーバーサイズのパーカーにジーンズだった)、メイクしてワンピースに着替えて1年ぶり位にヒール履いて、アートセンター仁川まで走った。その道のり1キロ以上。我ながらヒールでよく走ったと思う。ダンスをやっている事に感謝した。
会場に着いたとき18時15分で、遠目に列を見た瞬間「終わった…」と思った。けど、神様はなんとか見捨てずにいてくれたようで、おかげさまでありがたい事に、運良く整理券を手にすることができた。


会場には大きな角野さんの看板があって、そこで写真を撮る人の長い列ができていた。全体的に日本での客層よりも若い客層な感じがした。小さな子の親子連れもいて、家族で来た方も、カップルもいて、だけどやっぱり女性が多かったかなと思う。開場前からドアの前に集まって待つ方も多くいて、仁川の皆さんのわくわくが伝わってきて、国境性別年齢関係なく今ここで同じ気持ちでいられることを嬉しく思った。

かなりぎりぎりまで会場に空席が目立って、どうしたのかなと思っていたら、開演時刻くらいにどっとお客さんが入ってきて、見る見るうちに客席が満席に埋まって始まった。私は幸運なことに二列目、やや左側で、角野さんの弾かれる手元がよく見える席だった。

角野さんはいつも通りの気負わないあの空気感で、すっと現れて、一礼してピアノの前に座って、弾いた。
けど、弾いたとたんに衝撃で心臓ふっ飛ぶかと思った。
全然受け取るものが違った。
弾いた瞬間から、角野さんの心の中が伝わるような、音自身が角野さんの感情を載せて聴き手の聴覚だけでなく五感に流れ込んでくるような、そんな圧倒的な感覚だった。
演奏がのびやかで超絶に魅力的で、とてつもなく美しくて、ずっとのめり込んで聴いていたくなるほどの圧倒的存在感で、素晴らしかった。

色んな国で演奏会を大成功させて、NYでたくさんの刺激を受けてきた後に、大阪城ホールというとんでもない広い会場で公演されたばかりだからか、演奏はもちろん角野さんご自身の存在感、オーラみたいなものがとてつもなく大きくて、角野さんの音楽が流れ込んでくる感覚がものすごくて、めちゃくちゃに圧倒された。
1部のショパンは全体を通して、私が今まで聴いてきた中では体感では一番という位、ものすごく角野隼斗さんの色というか心情がより一層くっきりと表れていた最高の演奏で、「今角野さんはこういう気持ちで心持ちで弾いてるんだな」とまるで自分のことのように、心の内側から、内面から演奏を“体験”、”体感”するように音楽が伝わってきて、魔法みたいに不思議で、最高に最高すぎる時間だった。何度も書いてしまい陳腐になるのが申し訳ないけど、素晴らしかった!

ここからは感動のあまり細部がうろ覚えですが、ハイライト的に覚えている一部の曲目についての自分のためのメモと感想です。(注意:文体が荒くなります)

子犬のワルツ、めちゃくちゃ素晴らしかった。こんなに踊りたくなる子犬のワルツ聴いたことない! 子犬、もうめちゃくちゃ跳び跳ねていて、鍵盤の上で指が踊ってるみたい。と思ったら角野さんご自身もまるで踊るように弾かれていて、それがとても豊かな表現力を生み出すのか、本当に七色の音色が生み出されていた。演奏がすごく自由で緩急も音色も自由自在で、角野さんご自身がのびのびと翼を広げて、強く大きく羽ばたいて弾いている気がした。私はこの『子犬』が大好きすぎて、録音が本当にめちゃくちゃ欲しい……。大好きすぎる。

ノクターンも、めちゃめちゃ胸をかき乱されて、最後にかけてテンポががっつり速くなって、高まっていく焦燥感や悲しみ、やりきれなさを演奏の全身全霊で体現していて、もう物凄く切なくて苦しくて胸に響いた。悲壮感と焦燥に満ちて、ものすごかった。……これも素晴らしすぎて大好きな演奏で、やっぱり録音が欲しい……。

英ポロは、角野さん自身がとても楽しんで弾いているような気がした。良い意味で余分な力が抜けていて、その分とても余裕があって、後半たたみかけて最高潮に盛り上げていく隼斗節がそのぶんすさまじく光って輝いていた。
途中のブリッジみたいな最後の爆発の前の静かめな所も余裕があって、狂おしい美しさとか、演奏に色気があったりして、たくさん心情を歌って表現して魅せてくださって、めっちゃくちゃ素敵だった。。。

ショパンを聴いて本当に思ったのだけど、全体的に一年前よりさらに磨きがかかって洗練されて、それでいて羽が生えたように自由で表現力が物凄く豊かで、遥かに、とてつもなく魅力的だった。少なくとも私はそう感じた。
最高にエモーショナルで、角野隼斗さんという存在がより一層大きく感じられるほどに、音色に演奏に色濃く感情が表れていた。
その姿は生き生きとしていて、なんて水を得た魚のようなのだろうと、ものすごく自由で美しくカッコいいなぁと思いました。めちゃくちゃ力をもらいました。


2部は、うって変わって角野隼斗さんの多彩な魅力が全面に出まくった、とてつもないワクワクと熱狂に満ちた時間だった!
アイガットリズムが始まったとたん、会場の雰囲気や空気感ががらっと変わって、客席にいた観客全員が「2部はこんな風に魅せてくれるんだ!」と1部との明確な違いを一瞬で理解したと思う。一曲で聴衆をノリに乗らせたその演奏にかてぃんさんは改めて多彩過ぎて凄いなぁと心の底から思った。

カプースチン、1~3番まで全て雰囲気の違う曲だけど、以前に角野さんが弾いていたのを機に全て予習済みで頭に入ってて、それ以後も何度か聴く機会がYouTube動画を含めてあって。
でも、今回もそれをさらに上回る衝撃だった。
まとう雰囲気が、その場の世界の色が、曲目ごとにがらっと変わって、1,2,3と演奏するたびに、カシャンカシャンと目の前の世界がほんの一瞬で違うフィルターに切り替わるようで。その表現力、集中度、音色の操り方にどきどきした。手にジェットエンジン搭載してるみたいに本当にもう信じられない程くるくる動く指にも驚嘆!! 感動……。

大猫のワルツはずんちゃっちゃが重めだったり笑、ところどころ絶妙にリズム(タイミング?)を揺らして、それがまんまるなプリンちゃんの動きを完全に彷彿とさせる感じで、もう曲も演奏も最高にかわいすぎて終始にやにやしてしまった。マスクがあってよかったとしみじみ思う。そうじゃなければニヤつきがとまらなくて完全に不審者だった。

追憶は、アップライトじゃなくてもあんな音が出るんだというくらいソフトタッチで、本当に微かに音をふわっと鳴らす技術に感嘆した。
水面にほんのわずかに微かな波紋を立てるように繊細な力加減で、鳴るか鳴らないか分からない程の弱音をかすかに響かせる。あるいは、小さくなめらかなさざ波を次々生じさせるように繊細にタッチして、浮遊するような幻想的で夢のように美しい音を生み出す。
または、たんぽぽの綿毛を飛ばさぬように、そっと、そっと触れるだけのような極めて柔らかく優しいタッチで弾いてみたりと、その音色は様々で、ひたすらに美しくて虜になった。
こんなに柔らかく包み込むような音色が出せるのは、タッチの繊細なコントロールの能力が特別に秀でている角野隼斗さんならではの表現力なんじゃないかと思う。美しすぎてただひたすらため息がもれた。

胎動は、ものすごく壮大すぎて圧倒されてしまった。左手のメロディーと右手のきらきらした光のようなものがすばらしくて、力強くて、美しくて、かっこよかった。
後半部分楽曲が一層盛り上がる所での、広がる展開する世界と、どこまでものびゆく希望の光のような音が凄く響いて、まるで宇宙から見る地球の夜明けのようだと思った。
角野さんの生み出す演奏が、エネルギーの塊そのもので、超新星みたいな巨大な波のかたまりがぶつかってくるみたいに感じられた。大学院時代量子化学を専攻していて、教授の口癖が「人も何もこの世にあるすべては波だ」だったのだけど。卒業して相当経つけど、それを久しぶりに思い出すくらいに、強烈な波がエネルギーの塊が生まれてぶつかってくる、そんな圧倒的な衝撃と感動だった。

Sleigh Ride では、……書いていいのか、ネタバレになるのでソウル公演ご覧になる方はこれ以上読まない方が良いと思うのですが。。
会場が赤と緑でライトアップされて、それとは別に、小さな水玉のいくつもの光が小さくゆれうごいて、まるで雪が降るのを模したような演出もあって、クリスマスプレセントを一足早めにスミノサンタからおすそ分けしてもらってしまった。演出が微笑ましくて、会場が一気にクリスマスムードだった。

ラプソディインブルー。もう…やばかった……!!!
アレンジの仕方が最高なのはもう角野隼斗クオリティーでして、もうそれ自体が最高オブ最高なのはすでに慣れつつある、いつもの神業(「いつもの神業」って言葉が既に前提としておかしい)なのですが、インプロでハンガリアンラプソディーを入れ込むのを、わたしは今回初めて生で聴いた。
ぶわっ‼‼‼って全身に鳥肌立った。今までも配信で見たり聴いたりしたことあったはずなのに、関係なく、完全にクリーンヒットで食らいまして、めちゃくちゃ衝撃を受けた。
今も思い出すと全身の熱が湧き立って、熱狂の渦につつまれる。今もこの感想を書く手が震えてしまうくらいにドキドキが蘇ってくる。あとで公演の感想をぱらぱらと見ていたら、”情熱的”と表現した人がいたけれど、まさにその通りで、本当に情熱的で聴いてて熱に浮かされるくらい魅力的だった。
例えて言うなら、アメリカをヒッチハイクで横断したみたいな、ディズニーワールドを超絶スピードで回りきったみたいな、めちゃくちゃ楽しすぎる盛り沢山な旅のような、ラプソディインブルー。
楽しみも幸せも切なさもワクワクも冒険もスリリングさも喜びも笑いも満足感も載せた、長い長い旅の終わりにはとてつもなく大きなカタルシスがあって、大感動だった。演奏が終わったときに何故だか胸にもの凄いとてつもない大きな達成感があった。
そしてその終わった瞬間の大感動たるやもうすさまじくて、最後の音が弾き終わった直後、もう客席もみんな同じ気持ちなのが分かって、うわー---っっっ!!!すげー---っ!!!最高っ!!!!!って大歓喜の渦に包まれた。
言語なんかわかんなくても熱狂し感激したときのリアクションはやっぱ一緒で、会場みんな「すげーもんを聴いた!!!」という熱狂で、万雷の拍手で、ヒューヒュー!わーーーー!!!!っとマスク越しの歓声もいっぱいだった。

私は何でスタンディングオベーションしなかったんだろう……‼‼‼と、死ぬほどの後悔に苛まれている。
心境としてはスタオベどころか、立ち上がって飛び跳ねて両手振り上げて「ウォー!!!!」と絶叫する心持ちだったんだけど(ライブハウスなら間違いなくモッシュ&ダイブがそこかしこで発生するレベルの大熱狂)、クラシックコンサートはまだ行儀良くせねばという癖がしみついてて、感情を表に出せなくて完全に人見知りモードに入ってしまった。大後悔……!!


アンコールは拍手が本当にずっと鳴りやまなくて、「ヒューーー!!」「オォーーー!!」という声に押されるように3回も出てきてくださって、感謝でいっぱいだった。
3回目出てこられた時には、角野さんご自身『わっ、まだこんなに大声援で拍手してくれるんだ?!』という感じで、嬉しさ半分驚き半分な感じで、記憶が正しければ最初ちょっと小走りで出てこられたので、会場も嬉しさとその仕草のかわいらしさのあまり笑って、温かくどよめいた感じがした。

子犬のワルツ、かてぃんバージョンはさすが角野さん!って感じで、元の曲の素敵さは失わせずに、途中に絶妙にスパイスを振りかけるように仕上げて下さって、アレンジの仕方が本当に素敵だなぁと思った。しかし、演奏が本当に好きすぎて参る。
木枯らしはめちゃくちゃ美しかった。素晴らしすぎて本編に入ってたんじゃないかと思うくらいの、さすがの演奏だった。
きらきら星は、やっぱり皆さんが誰もが知っている曲だというのと、かてぃんチャンネルを見ている方が多いのか、レベル1のシンプルなフレーズが始まったとたん「ああ!」という感じで声が上がった。最後まで一音も手を抜かない、素晴らしい演奏だった。

全てを通して、率直にいえば
【 映像があるのならば、ぜひとも、円盤化を希望したい!!! 】
と思う所存です。有料で良いからもう一度見たい、聴きたいコンサートだった。

角野さんの存在が太陽みたいに圧倒的だった。圧倒的なエネルギーを発して、聴く者をあたためてくれる。
実際会場は体感としては、コートを脱いだ薄手の長袖だけでは少し肌寒いくらいだったけど、1部終わって、なんか感激と感動のあまり体がぽかぽかしてきて熱くなってきて、2部に入る前に下ろしていた髪を結って上げたんだけど、それでも2部終わったら全身熱狂しすぎてぽかぽかだった。

あと、変な意味じゃなくて、音に演奏に色気というべきなのかちょうどよい言葉が見つからずあれだけど、ご本人の発する色気というか、人間的な魅力が増したなぁと感じた。深みというか人生経験を積んでこその多彩さ、経験値の多さに裏付けられた深みというか。
私なんかより、よほど大人としての色気のセンスがあるなぁと思ってしまう。そういう、子どもの無邪気さ純粋無垢さと、老成した達観した部分が共存する所も角野さんの底知れぬ凄さであり魅力だと思う。
音楽に投影される感情がとても雄弁で、いつもより凄く凄く響いてくる魔法のような音だった。魔法というか奇跡というか。
全身全て包み込まれる迫力の演奏、感情の表現が豊かで聴いてるとまるで角野さんを通して楽曲の世界に入り込んだかのように感じられる伸びやかな音楽、繊細で多彩な虹みたいに美しい音色と、……もはや私の文章力では語りつくせないし語彙力が壊滅するほど、とてつもなく素晴らしかった。
1日でこんなにすばらしく心が動く体験ができるなんて、生まれて何十年も経つけど生まれて初めてだと思う。凄かったなぁ……。

どこまで進化されるんだろう。この一年でも軽々とやっているように見える裏側で、とてつもない量のインプットや、日々試行錯誤やアウトプットをものすごく重ねて、見せない努力を相当されてきたのだと思う。
新しいものを吸収して自分の表現への血肉として凄まじい速さでどんどん習得していくから、演奏や音色の進化が一向にとどまることを知らず、どんどん洗練されて深みも味わいも魅力がさらに増していく。改めて物凄い。
だけど、何度も言うけど、忙しすぎるスケジュールのなかで軽々とやっているように見えて、きっとひとつひとつ必死になって掴んだ音色だったり、演奏のアイディアだったり、アレンジのフレーズだったりするんだと思う。
そうしてやっと紡ぎだした音楽を、いつも何事もなかったように軽々とやってみせて届けてくれているのかもしれない。そう思うと、私はやっぱり角野隼斗という人を心の底から尊敬せずにいられない。


角野さんが細い体でこんなに頑張ってるのを、道を切り拓こうと、忙しすぎる日々のなかで多分無我夢中で闘っているのを思ったら(ご本人そんな悲壮感みじんも出さないし全然とんちんかんな見方だったら申し訳ないけど)、そうして進化していく姿が眩しすぎる程眩しく光って、とても人間として美しく輝いていて、凄く人間としてかっこいいから。
翻って、私は【変わりたい】と、強く強く思った。
なんだろう、私は私のことをもっと強い思いで主張しなきゃ、状況は変わらないし私自身も弱いままで変われない、と思った。
この公演を体感して、守りに入らず進化していく姿勢や、角野さんの自由に挑戦していく在り方の美しさに鼓舞されて、見習いたいと強く思った。
間違っても失敗しても何度壁にぶつかって形がバラバラに崩れてしまってもいいから、めげずに、自分を失わずに、自分を自分で殺さずに、自分の思いを伝え続けないといけない。自分を大切にして、強く自由に前に進みつづけることの大切さを、この公演から、角野さんの姿から熱く深く教えてもらった。

旅費、滞在費すべて含めてもお釣りが来るくらい、幸せな時間だったし、私の人生にとっても大事なことを教えてもらった公演だった。
絶対に一生忘れない、心の奥深くに消せない体験として確かに刻みこまれました。


サイン会の事は、もうあれです。。。
私は常にコンサートでは手元が見える席を可能な限り取るのですが(なんか見たい)、当たり前ですがサイン会はご本人が正面を向いているので、お顔が見えてしまう訳です。そして、ご本人は本当に目が大きくてかっこ良すぎて、さっきまであんな奇跡みたいな最高の演奏していた人なのに、なんでこんなかっこいいんだろう神様の配合がおかしくないかと訳の分からない事を本気で考えていて、目の前に立つのも恐縮するし緊張しすぎて何を言ったかもはっきり覚えてないというかほぼ何も言えんかった(もったいない)。めちゃくちゃ最高でした、みたいな、何も具体的に伝わらない感想をやっとこさ振り絞って伝えた気がする。ありがとうございます、と言われた気がする。いや、こちらこそですから!!!と心の中で思いました…。
つかの間の神との邂逅でしたが、私にとっては一生ものの宝物です。
あと、私よりずいぶん前の方にいた方で、おそらく韓国の方かと思うのですが、サインをもらった後で、めっちゃ嬉しそうにリアルにスキップして帰る親子連れをみて、「あー!気持ちわかる!!!」ってめちゃくちゃ共感しました。壮絶に可愛らしかった。小さい子もサイン会に参加されていて、角野さんがとっても笑顔で嬉しそうにサインされていたのを見て、こちらも壮絶にキュンとしまして本当に微笑ましかったです。


日本に帰ってきたら夕方で、私は成田空港に降り立って、そのまま車で高速をひたすら西へ西へと走らせるのだけど。
ちょうど正面がオレンジ色の夕陽に空一面を照らされて、木々や街並みやすべてが影絵のようにシルエットだけになる、あの時間帯で。

送電線があって、それを支える鉄塔が道の横側に等間隔にずっとずっと先の方まで伸びて立っていて。そのお揃いで立つ鉄塔の姿が夕陽に照らされて影絵のようになってて。
それが、細かい鉄骨の骨組みまであまりにも繊細に整ったシルエットとして空に浮かび上がるので、まるで美しい切り絵のようだなと、その精密な造形の美しさに今改めて気づいて。今まで見えてたのにそんなに整ったシルエットをしている事に気づいていなかった。
だから、新しく発見したその美しさに物凄く胸を打たれてしまった。

何かに強烈に感動する、ということは、その人を変えるんだ、と確信を持って思う。
その人の見ていた世界、感じていた世界、考えていた世界を打ち壊して、新しい視野を授け、より細部まで生まれ変わったように世界がよく見えるように感じられるようになる。
本当に心の奥底から、全身全霊で震えるほど大感動したら、そのあとの世界は違って見えるものなんだ。体験する前には見えていなかったものが、感じとれなかったことが、『その体験』に触れた途端、心が生まれたてのように目覚めて、色んなことを感じ出す。
そんな風に思いました。
やがて日が傾いていって、夕焼けのオレンジ色が夜の紺色と混じりあってグラデーションを作るその空の色は、今までも綺麗だと思ってきたけど感じたことがない位に美しかった。そしてその空に浮かび上がる鉄塔や木々の影絵は、もう泣きたくなるほど綺麗だった。すこし泣いた。


以上で私の仁川公演の旅はおしまいです。
終わったけど、終わってない感じがするくらい、自分の中で大事なパーツになった体験だった。心のバケツの穴がとてつもなく巨大な隕石でふさがれた、圧倒的な人生の1ページでした。

今の私が見失っていたものを、言葉も言語も超えて、その音でその演奏で、その勇姿でその歩みで、大感動とともに教えてくれた角野隼斗さん。
本当に本当にありがとうございました!!!
心からの感謝と敬愛を込めて。

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