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筑波大は本当に他学類をとれるのか~学類別/大学別/年代別データを通じて~

はじめに

お世話になっております、shiromiです。
さて、筑波大学は本当に他学類の授業をとれるのかという問題にお答えします。

はい、とれます。

いかがでしたか?この情報があなたの参考になれば幸いです。ではここまでお読みくださりありがとうございました。



お急ぎの方は目次から"まとめ"だけでもどうぞ(少し暇な方は"各大学間での比較"から、もっと暇な方は全てをお読みください)

本稿では、実際にデータの比較をしながら、筑波大が実際に他の大学や時代に比べて他学類の科目を履修しやすいのかを議論していきます。
もともと、本稿を書こうとしたきっかけは以下のツイートです。

筑波大は他学類の授業を履修しやすいという趣旨のツイートですが、この引用RTには、自分の大学でも普通に履修できるけど?みたいな主張も少なくありませんでした。しかし、大学生は基本的に自大学についてしか詳しくありませんので、比較検討を行っているものは見つかりませんでした。そこで調べました。

筑波大学生以外の読者はあまり想定していませんが、一応軽く筑波大や大学の基本的な仕組みについて説明します。以下筑波大生はこの段落を飛ばしてください。普通、大学は、下部組織の学部、またその下部組織である学科を有しており、学生は○○学部○○学科(○○専攻)に所属します。筑波大学では、学部の代わりに学群を、学科の代わりに学類を採用しており、以降これを用います(体育、芸術は専門学群ですが比較のため学類と以下扱うことにします)。大学の授業は各教員が担当し、科目の代わりに単位と呼ばれることがあります(筆者はこの呼び方は正確ではなくあまり好みませんが、通例として用います)。大学を卒業するには指定された単位を含んで、最低124単位修得する必要があり、これを卒業単位と呼びます。

筑波大学内での比較

学類間の比較


図1

では、まずは筑波大学内の学類間の比較をしていきます。筑波大は他学類の授業をとることをほとんど必須としています。図1に学群毎にまとめて各学類の卒業単位となる他学類の下限単位数と上限単位数を示しましたが、比較には向かないので降順に並びなおしたものを図2に掲げます。


図2

上限単位数でグループ分けを行い上位1~3, 4~10, 11~16,1 7~20, 21~25の学類に分けました。ただし生物学類のみ専門基礎科目相当が加算されているので議論から除外しています。
最上位グループは卒業要件の1/3相当の38~45単位まで含める太っ腹な学類で人間学群の障害化学類と教育学類、加えて比較文化学類が相当します。中上位グループは32~37単位まで含め、これは生物学類と地球学類を除きすべての文系学類が属しています。文系と、理系ではありますが、地球学類の履修の柔軟性が示されてます。中間グループは20~26単位で、文理融合系や体育、芸術が含まれており、理系としては物理と社工が特徴的に含まれています。中下位グループは15,16単位で残る多くの理系学類が含まれています。最下位グループは4~11単位で、医学群と情報科学、化学類で構成されています。医学群は履修に殆ど選択はなくぴったりとることを要求しています。

学類、特に文理によって履修の自由度の違いが大きいことが分かりました。では、この学類による自由度の違いはなにによるものなのでしょうか。ひとつは教職の存在です。図3に卒業単位になる教職単位数と、教職修得率のプロットを示しました。


図3

右上グループは他学類卒業単位で上位2学類である教育、障害科学で、教職修得率はおよそ半分かつ教職関係単位を多く卒業単位に加算しています。よってこの2学類の他学類卒業単位の多さは教職に起因するところが大きいように思います。一方、右下のグループの比文、心理、地球では教職修得率が低いのにも関わらず、卒業単位加算が多く、これらの学類は教職に関係なく自由度の高い履修設計になっています。また左上のグループの体育、数学では教職修得率が高いのにも関わらず、卒業単位になる教職単位が少ないです。もっとも、教職をとるために追加でとる単位は20~30単位程度ですから、体育はその実情に合わせたものとなっています。数学類はちゃんと専門をやってねという感じです。

年代間の比較

では、これらの学類毎の他学類の卒業単位は昔から変化がないものだったのでしょうか。
筑波大学が第一学群/第二学群/第三学群から現在の学群制に変わったのは16年前の平成19年のことで当時の他学群他学類の単位数を図4に示しました。


図4

ぱっとみた感じ現在と比べ、各学類の差が小さくなっているように見えます。また全体的に現在と比べ他学類卒業単位が少なく、下限が0に設定され、とらなくてもよいとしている学類が目立ちます。では実際に比較するために、令和5年度と平成19年度の他学類卒業単位数と、その増減率を図5に示します。


図5

心理、数学、化学を除き全ての学類が現在に至るまでに、他学類卒業単位上限数を増加させています。例えば、日日では+240 %、社会学類では+200%の増加を見せています。
どうやら現在のカリキュラムは平成19年と異なり、他学類卒業単位必要数が上がっているようです。

ではいつ、なぜあがったのでしょうか。
令和5年度における他学類卒業単位数でグループ分けされたグループごとに2学類ずつ抽出し、年度ごとの16年間の他学類卒業単位上限の推移を図6に作成しました(図書館にいっぱいある履修要覧をみたよ)。


図6

これをみると大きくその卒業単位が変更された時期がH23, H25, H31の3つあることに気づきます。例えば、化学、数学、物理ではH30まではほぼ同一の約18単位ですが、H31の変更によって、物理は増加し、数学、化学類は減少し、現在の他学類卒業単位について物理学類の多さ、化学類の少なさを生み出しています。
H23の1度目の変更、H25年度の2度目の変更はH31に比べて比較的局所的なもので、これの直接的な言及はあまりよく調べていないので見つからなかったのですが、H25年度からの二学期制移行、GPA制度、永田学長就任(このひとなんかずいぶん前からいるなぁ)などの改革によるものだと推察します。直近のH31の変更の理由は筑波大新聞(H30, 10月)に発見できて、総合学域群の創設にむけて、当時あった総合科目II, IIIの廃止と専門導入科目の新設がなされました(学問の誘いはこの時できました)。当時は全学類で他学類の修得は必須ではありませんでしたが、この変更から必須になりました。当時の総合科目は全学類生に向けて教養課程的な科目でしたが、そのすべてを各学類へ任せる形になり、それに伴い他学類卒業単位上限も拡充されました。この変更は全学類におよび、多くの学類はここで他学類卒業単位上限数があがりました。

各大学間での比較

ここまで、筑波大学内での話に終始しているので、別の大学についてもみたいと思います。
比較検討する大学は総合大学で、教養学部を除き少なくとも理系学部と文系学部を有している必要があります。また、そんな全部はとてもみれないので関東近縁のなんかよく知られている国立私立大を選びました(東北大/茨大/埼大/群大/千葉大/横国/筑波/早慶/立教/明治/中央/法政)(ごめん、青山集計するの忘れてた)。(東大は勝てないし違うので無し。農工大や一橋は単科。)

卒業単位の比較

各大学に大体存在する工学部と文学部(とそれに類するもの)を抜き出し、Web上に転がっている履修要覧を確認し、他学部/他学科の科目を算入できる卒業要件区分の下限と上限を確認し、表1にまとめました。


表1

結論から言えば、筑波大と同様に、他学部からほぼ制限なく単位を修得し卒業要件に加えられるのは、表の色付きの茨大の人文社会科学部、千葉大の人文学科、立教の理学部化学科、文学部文学科だけであって、他の大学は指定されている教養課程科目一覧から修得させる履修要件でした。また、他学部の科目の修得を義務付けている学部は筑波大以外にはありませんでした(千葉大人文学科は余った別の区分の科目を他学部科目含めて算入できる仕組みで、他学部算入を基本としているわけではない)。
たしかに、筑波大学が他学部の授業を履修/修得することが他の大学よりも推奨され容易であることがわかると思います。また、多くの大学/学部で規定にない他学部の授業を履修するには申請書を提出したり、もしくは履修ができない規則があったりしました。

学部の比較

次に学部数の比較を図7に示しました。


図7


まあ、私大の学部数は目を見張るものがありますが、筑波大も少ないというわけではありません。注目すべきはその他の数であって、芸術と体育の学部が両方ある大学は大変珍しく、これらに加えて医学の学部の科目がほぼ制限なく自由にとれるのはとても良いです(欲を言えば薬学類ほしかったかも)。

キャンパス数の比較

では、最後に各大学のキャンパス数の比較を図8にして大学間の比較を終わります。


図8

東京の私大に比べて筑波大のキャンパスは極めて少なく東京と筑波の2つのキャンパスしか存在しません。しかしこれは不利な点ではなく他学類の履修に有利に働くと思います。多くの都内の私大では、土地の関係からか、学部によって特に文系と理系でキャンパスを分けている一方で、筑波大ではほぼ全学類の授業が単一キャンパスで行われています。これは、我々が様々な学類の授業をとりやすい要因のひとつです(ただ、自転車で最大15分くらい離れていますけど)。

さて、筑波大学は本当に他学類の授業をとれるのかという問題にお答えします。
はい、とれます。
いかがでしたか?この情報があなたの参考になれば幸いです。ではここまでお読みくださりありがとうございました。

まとめ

筑波大内で比較した結果、学類による違いが大きいこと、平成30年以前は他学類の科目単位が必修でなかったこと、総合学域の導入によって他学類履修が拡充したことを確認した。
大学間で比較した結果、筑波大学以外に他学部を必修としている所は殆ど見つからず、また他学部の履修に制限をかけている大学も少なくなかった。筑波大学の学部数は多くは無いが、体育専門学群、芸術専門学群、医学群の授業を履修でき、卒業単位にできるのは珍しい。また制度が整っているのみならず、単一キャンパスであることからも他学類の授業を履修しやすい。
以上より、現在の単一キャンパスを持つ筑波大学は、他学部履修/卒業単位加算の制度がそろっており、様々な学類の授業を制度的にも物理的にも受けやすい事が分かった。

感想

筑波の卒業要件は15年前と大枠は変わっておらず面白かった。他大学の卒業要件は筑波と違って結構自由がなかった。文科省が定める卒業最低単位は124単位なので、勝手に大学が増やしてもいいのだが、慶応の理工の138単位は流石に引いた。
やはり総合大学の中でも進学振り分け制度を有すると他学部履修に強くなるという感想を抱いた。教養課程が2年間ある東大は自由にとりまくれるので、次は興味ある人は北大とか調べて見てくれ。
あと、結構ちゃんと履修要覧読んだつもりだけど、実情に即してないとか、ちゃんと読めてないとか、最新じゃないとか、各大学のみなさんは気付いたら教えてくださいな。ふーんって思ったり追記をしたりするかもしれない。

僕は趣味で全学類の科目を修得しようとしていて、既に19学類を修得してて、あと国際、教育、障害科学、知識、看護、医療科の6学類を今年度無事に修得できれば全学類制覇できるのでこれを達成したらまたnoteで報告します。んじゃんじゃ。おやすみ。


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