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耐震等級3は本当に安心か?

 ネット上では、構造屋さんを中心に木造住宅には耐震等級3が必要!という意見が多いです。私も耐震性を上げるのは賛成で、耐震等級3を取得することは、良いことだと思っています。そして耐震等級3相当といって、ただの壁量計算の壁量を1.5倍にした、耐震等級3ですらないものはなくなって欲しいと思っています。しかし次の3点で疑義があります。

・果たして耐震等級3という指標が適切か?複数の強度が違う指標があるのは紛らわしくないか?
・耐震等級3で設計しても耐震等級3に施工でなっていなければ意味がない。
・数字だけで耐震等級3を満たすことが、本当に大切か?

ということです。耐震等級3のまがいものは、とりあえず置いておいて、正しい耐震等級3であっても、構造計算による方法と、品確法(壁量)の方法では強さが違うことは意外と知られていません。ネットなどを見て入ればわかるかもしれません。しかしそんなことより、同じ名前の耐震等級3に基準が複数あり優劣があることが問題です。これでは耐震等級3を勧めるのに躊躇します。そして、そのどちらの方法であれ、本当に耐震等級3が適切な耐震の基準なのですか?ということです。これは難しいです。過去も大丈夫だと思われてきた基準が、あとから不足している・・・ということはよくあったからです。今の段階では確かに判断できませんが、ただ単に基準法の1.5倍の地震力に・・・というだけでは根拠が弱いです。何しろ基準法の地震力に倒壊しない住宅を不十分といっているわけですから、その1.5倍という数字には何の根拠もありません。

ただ、それは仕方が無いことで、現在までに起こった大地震に対抗できる基準であるなら、問題は少ないかもしれません。しかしそれが耐震等級3なら安心という根拠の無いことなのに、もしこの先更に大きな地震で耐震等級3の建物が倒れたら・・・どう述べるのでしょうか?少なくとも私にはその自信はありません。

その次の施工が・・・これが結構悩ましいです。現行で耐震等級3を取得といっても計算方法以外にも複数選択しがあります。地震保険の割引を使うルールでも複数あるのです。そしてそのほとんどは「設計」までで良しとしているのです。本当はそれで問題ないのですが、もし構造計算だけ外注していて、施工会社が構造を理解せずに施工していたら・・・とか不安が無いわけではありません。いくら検査があるといはいえ、梁サイズ、金物、耐力壁がとりあえず合っていれば検査は通ります。

次に耐震等級3を取ることだけに専念したものに本当に意味があるのか?ということです。構造計算を行えば、梁サイズをギリギリまでそぎ落とすことも可能です。しかし木造ではある程度余裕をもって設計する必要があります。構造計算で耐震等級3を満たしているからといって、果たして本当にそれだけで良いのか?ということは、これから深刻なテーマとなりそうです。木造は、S造やRC造ほど、理論的に確立されているわけではありません。工業製品ではない木を使っていて、材料強度にも同じ樹種であってもバラツキがあります。木造特有のルールもあります。また構造計算といっても、すべてを計算できるわけではないので、設計者の独自の判断も必要になってきます。そんななか計算ソフトで出てきた最低値だけを使って計算していったらどうなるか・・・。そんな不安もあります。

そもそも耐震等級3を取得することに意味があるのではなく、耐震性の高い安心した住宅を建てて住むことに意味があるのだと思います。もちろんそのための手段として耐震等級3を取得することは近道だと思っています。ただそれだけではないことを知っていて欲しいです。


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