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不整形の建物が多いからこそ、木造は構造計算すべき

 私は、木造住宅は必ずしも構造計算は必要ないと思っています。しかし近年、複雑な建物が増えてきて、壁量計算では安全を確保できないケースも増えています。そこで上記の動画を作りました。

 プレカットの普及に伴い、技術がそれほどなくても上棟は可能になり、設計事務所や、施工会社の手間も減りました。しかし良いことばかりではありません。プレカットの仕口だと、柱は短ほぞで抜けやすいし、複雑な仕口もできません。基本金物でおさえないと抜けます。加工品質は高めですが、工場出荷後、現場で再加工を防ぐためゆとりをもって加工していることもあります。

 それはともかく、今回は構造計算ソフトHOUSE-ST1を使って、平面的に整形な建物2棟を計算して見ました。平面はまったく同じです。屋根が違い、片方は切妻で、もう片方は片流れです。一般に切妻は重さのバランスがとれてます。一方片流れは斜線制限との相性が良かったり、小屋裏収納を作りやすかったりで、メリットもあるのですが、重量バランスが悪いです。

切妻の例。両サイドに妻壁ができるので、寄棟よりは重くなりがちですが、バランスは悪くありません。


片流れの例。北側斜線の影響で、北側母屋下がりしているケースが多いです。南側2階は壁が高くなり、軒より上を小屋裏収納やロフトにしやすいです。
切妻の2階(南側にあるのは、左:バルコニー、右:ポーチやね)

まず、切妻の2階です。1階の上にはバルコニーやポーチ屋根がありますが、2階は完全に長方形の整形です。よって計算すると重心と剛心がキレイに建物の中心で重なります。偏心はなく、地震にも強そうです。

片流れの2階。

次に、片流れの2階です。南側の壁重量が重い他、北側が母屋下がりしていて剛性低減されているため、重心が大幅に南に移動してしまいます。重心は重さの中心なので仕方がありません。剛心は変わりません。これだと主に東西方向の揺れに弱くなります。片流れの設計は、注意が必要です。通常の壁量計算ソフトではここまで計算してくれないのです。

 建物の重量が均等であれば、気にすることはないのかもしれませんが、実際の建物の重量は不均等です。よって構造計算しないと実際のバランスはわかりません。壁量計算でも4分割法でバランスを検討しますが、平面的なバランスで重量は加味されません。また偏心率を求められるソフトも、構造計算のように個別の重量は加味されません。

総2階でバランスがよく、寄棟や切妻で、構造計画が明快なものは、そもそも耐震性は高いです。しかし上下階の壁や柱が揃っていない場合や、上下階の大きさが異なる場合、重量バランスが悪い場合などは、壁量計算でのバランスの検討はアテにならないことがあります。部材の安全や、耐震等級とかの前に、壁量計算では厳しいことがわかります。

2025年に四号特例がなくなるらしいです。どのように変わるかはまだ不明ですが、今のうちに構造計算をある程度マスターしておくことをお勧めします。

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