Fate/Grand Order「轟雷一閃」ネタバレ感想・考察 怨の武者が語る「想い」とは

12月初頭より配信された、「Fate/Grand Order」第二部5.5章・轟雷一閃をクリアしました。
本シナリオにはPU1にて実装されたサーヴァント2騎に加え、更に新たな2騎のサーヴァントが登場しています。今回は、その片方に当たるアヴェンジャーについて、あれは一体何だったのだろうと思い、今現在で考えうる内容と感想を書いてみました。
当然ながら、シナリオのネタバレが多いに含まれておりますので、未クリアの方はくれぐれもご注意ください。

1.怨の一文字・その名は景清

今回登場したアヴェンジャーは、一応平景清という真名を与えられています。
その出自は複雑なもので、おまけに肉体は源義経のものを使っているという複合霊基ですが、恐らくは宝具名からして、実装時にもあくまで真名は景清となるのでしょう。

アルターエゴ・リンボの呼び寄せた刺客・八神将の一人として召喚された景清は、本来あるべき景清本人とは、在り方を大きく変えています。
本人の言を統合するなら、その肉体は第一部7章に登場した牛若丸が成人した姿の霊基を、主人公への嫌がらせとして見繕ったもの。更に景清自身の独白によれば、これを八神将・歳刑神として意のままに操るため、景清を名乗り源氏に抵抗した平氏方の武者達の念を植え付けたものであるといいます。
このあたり、実装後のマテリアルで覆る可能性はありますが、シナリオ中に本物の景清らしき意識がほとんど見られなかったことから、まずこの通りの内情と見て間違いないでしょう。
(類例としては、正体の説の1つとして語られている水子の霊達を、かき集め一固めにして生まれた、ジャック・ザ・リッパーの例もあります)

個人的に興味深かったのは、悲運の武将として知られる源義経は、本作においてはこうでもしなければアヴェンジャーとしては召喚し得なかったかもしれないということです。
逆に言うと、ここまでしてアヴェンジャーに仕立てられてしまったことが、自分個人としては少々残念だったサーヴァントでもあります。

2.牛若丸の見る義経像

実は選択肢によっては、牛若丸がサーヴァント・義経について、どのような存在になるだろうかと、自己分析し予想するくだりを読むことができます。
前述した第一部7章「絶対魔獣戦線バビロニア」によれば、牛若丸の予想する義経像は、以下のようになっています。

「自分は源頼朝の刀に過ぎず、他のものには興味も持たず戦っていた」
「そういう立場を得た頃の自分が召喚されるなら、多くの同胞を死に至らしめながらも、己の愚かさを改められなかった冷血な武士となるかもしれない」

のちのケイオスタイド汚染のことを思うと、敢えて可能性に目をつぶっていたのかもしれませんが、この時点での牛若丸は、成長後も頼朝に忠義した頃の精神をベースに召喚されるだろうと考えています。
生前を知る常陸坊海尊もまた、ケイオスタイド汚染された姿は、「本来の義経らしくないもの」と見なしていたようです。
彼女らにとって源氏一族への復讐というのは、それほどまでに縁遠いと思える考えだったようでした。
むしろ心のブレーキが壊れていると自認しているはずの牛若丸が、こうまで危惧していた義経という霊基は、あるいは景清よりも恐ろしい存在だったのかもしれません。
牛若丸以上に成長した肉体を誇る武者が、牛若丸以上の冷血さで敵を鏖殺する。それを突き動かすのが、牛若丸以上の兄への愛であり、他のものへは牛若丸以上に興味をなくしているのであれば、その愛情は危険とすら言っていいでしょう。
あるいはひょんなことから聖杯を得た義経が、「これを頼朝への手土産とし、和解しよう!」なんて考えて、特異点を発生させ人理を脅かす……なんてこともひょっとしたら、どこかで起こっていたかもしれないですね。
(奇しくもこの在り方が、自身が同章で直接対峙し嘲笑った敵・キングゥのそれと、近い方向を向いているというのは、不思議な一致でもあります)

個人的にはこの、アヴェンジャーにはなり得ない義経というのが、ものすごく刺激的なイフに思えて、長らく実装を待ちわびていたサーヴァントでした。
こういう危険な精神性を持ったサーヴァントが、現在の牛若丸以上に大人びた美貌を振りかざし、早見沙織さんの声で病んだ台詞を吐く! なんと素晴らしい可能性でしょう! と。
結果的にそのイフが叶わず、景清との複合英霊という形での実装になったのが、前述した「少々残念だった」というところです。

3.義経の「想い」は誰のもの?

一方で義経は第二部5.5章内にて、それとはまた違った形で、自らの復讐者適性を否定しています。
生前の英雄・源義経が、命尽きるまで戦い続けていた理由は、敵や裏切り者に対する「怨み」にあらず。自分が信じる何かへの、「想い」こそが理由であるというもの。
そしてそれを真とするなら、兄に追われた義経の「想い」は、兄だけに向けられていたものではなかったということになります。

五条大橋に辿り着いた義経は、武蔵坊弁慶との記憶を境に、数々の過去を振り返ります。
自らの命を繋いだ両親に、師匠や妻の静御前、そしてカルデアでも肩を並べている海尊など。
これこそが義経が自認していた以上に、義経が好意と関心を寄せていた相手は、多くいたことの証左になります。
事実、義経は対峙した坂田金時の振る舞いに対して、「弁慶を愚弄している」と激怒しています。
更に別のイベントを振り返れば、「レディ・ライネスの事件簿」では、牛若丸が海尊に尊敬の念のようなものを語る場面すらあります。
たとえ兄に裏切られても、周囲にいた者達を「想い」戦える情が、義経にはあったのだと明言されたのは、とても興味深い展開でした。

最終的に義経は、植え付けられた怨念を振り切り、本来の人格を表に出して最期を迎えます。
その時の彼女の語り口は、プレイヤーがよく知っている、牛若丸のそれそのものでした。
あるいは上述した、冷血武者としての霊基の可能性も、自らの情深さに気付いていなかったが故の、過小評価から生まれた憶測だったのかもしれません。
第一部7章でも、仲間達への情を残したためか、敢えてキングゥを挑発していた牛若丸。腕っぷしでは勝てないはずの神の息子をも言い淀ませたそれは、冷酷一辺倒であれば備わっていなかったはずの、「想い」の力の発露だったと言えるでしょうね。

4.終わりに

思っていたものとは全く違う形で、実装されることとなった源義経。
これは想像ですが、前言された想像図を、敢えて違える形で実装されたのは、プレイヤーの間で評判のよかったケイオスタイド牛若丸に近い姿を、何とかプレイアブル化するためのものだったのかもしれません。
(37人の怨念を思わせる分身宝具も、ケイオスタイド牛若丸の増殖スキルと酷似しています)

それ事態は少々残念ではありましたが、これまでの牛若丸とはまた違った、情の深さにクローズアップした結末については、大変面白いものだったと思いました。
何より特殊一枚絵! あそこで描かれた義経の美貌! これだけは予想と期待していたものが、バシっと画面に映し出されてくれた! 少なくともそこに関しては、純粋に嬉しかったですね。

今後実装されるであろう、アヴェンジャー・平景清こと源義経。今はまだガチャでは引けませんが、引けるようになる日が来るのが、何だかんだで楽しみになったサーヴァントではありました。
あ、でもできれば怨念武者景清としてだけでなく、再臨に合わせた台詞変化で、素面の義経としても戦えるサーヴァントになってほしいな。アルジュナ・オルタとかそういう鯖だったしさ。
あとは正気と復讐心を行き来するアントニオ・サリエリみたく、イベントではどっちの顔も見せてくれるような鯖になってほしい! とにかく、最期の義経像こそが好きだったから! 頼むねホント!

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