事業会社における「改善」と「改革」の違い~現場思考と経営思考~
直近2回、チーム組成に関しての記事が続きましたが、今回は異なったテーマで、セオリー的なお話を書いてみようと思います。
事業会社においてBizOpsは、「改善」と「改革」両方を担当し、事業会社全体の事業成長及び組織の成長をミッションとします。
しかし、BizOpsから見た「改善」と「改革」両方の用語が指す具体的な活動内容や、組織に与える影響について書かれた記事があまり見当たらないように思います。
今回の記事では、事業会社における「改善」と「改革」の違いやそれぞれの重要性を、現場思考と経営思考の観点から説明していきます。
「改善」と「改革」ー言葉の違いから考えるOpsの違いー
まず、「改善」と「改革」言葉の定義を確認してみたいと思います。
この定義を踏まえると、
業務「改善」は現状の業務プロセスを残す前提で、より効率的になるように業務の方法を変えていく取り組み
業務「改革」は現状の業務プロセス自体を見直す前提で、根本的・抜本的・劇的にプロセスの根底にある考え方を変えていく取り組み
ということが言えそうです。
また別の言い方をすれば、
業務「改善」は業務フローの一部を見直す取り組み
業務「改革」は業務フローそのものを根本的に見直す取り組み
業務改善が業務フローの一部のみを対象とするのに対し、業務改革は業務フローそのものを根本的に再構築することが求められる、とも定義できそうです。
う~ん、言っていることは分かるけれども…
理解はできるが、納得ができない。自分の中に落とし込めない…
なのでBizOpsの視点から考え、大雑把にこんなふうに解釈してみました。
業務プロセスに閉じた(=部署のKGIを跨がない)、現場のマネージャレベルとのすり合わせで実行できる現場が喜ぶ内容ならば「改善」
業務プロセスを超える(=部署のKGIを跨ぐ)、上層部の意思決定が必要な内容ならば「改革」
The Model型の営業組織を例に考えてみます。
各組織におけるOpsのミッションと例を整理すると、このようになります。
SalesOps・・・営業に閉じた改善ミッション (例:受注数/率を上げる)
ISOps・・・・ ISに閉じた改善がミッション (例:アポイント獲得数を上げる/商談案件化率を向上させる)
CSOps・・・・CSに閉じた改善がミッション (例:継続率を上げる)
MOps・・・・マーケティングに閉じた改善がミッション (例:リード獲得効率化/ナーチャリングの自動化)
SalesOps、ISOps、CSOpsは各部署のKGIを上げるために改善をし続けることがミッション。
MOpsも同様なことが多いですが、マーケティングの言葉の範囲が広いので各社によって違うので一概には改革なのか改善なのか分類が難しいことはご留意ください。
上記を包含しつつ、横断的に事業プロセスを中心に改革や改善を実施していくのがRevOps。
さらに請求プロセスや経理、管理会計、未回収債権回収などバックオフィス部分のプロセスも包含するのがBizOpsとなります。
後者に行けば行くほど、飛躍的に難易度が上がっていきます。
「改善」と「改革」の狭間で…Opsの苦悩と乗り越え方
さあ、ここまでの内容を読んで、
どうせやるなら事業全体に貢献したいので、改革をやるでしょ!
と考えましたね。
言うは易し、行うは難し。
改善と改革の間には大きな隔たりが存在します。
Ops最大の負荷、それは…
Opsにとって一番の負荷は何でしょうか。
課題解決をするためにシステムを構築する手間がもう・・・ね・・・
違います。
Opsにとって最大の負荷。
それはコミュニケーションにおける反発やネガティブの感情を受けることです。
「さあ改革に取り組もう。抜本的にプロセスを見直すのだ!」
と鼻息荒く、着想した内容を対応部署等に持ち込み、提案し、アドバイスを求める。
最初の何人かの感触は悪くない。
「良いですね」
「一旦やってみましょうか」
しかし、何人か聞いたところでネガティブな反応が出てくる。
「それだと〇〇に影響するので困ります。」
「こちらの意向通りにだけ変えてほしいです。」
「現場のことわからないのに、勝手なこと言わないでくれませんか?」
一旦ネガティブな意見、反発が出始めると、それまで反発していなかった人たちまでもが自分たちへのデメリットに目を向けはじめ、反発の声が強まっていく…
Opsを経験されたことのある方は、一度ならず経験があるのではないでしょうか。
上述のように、
業務プロセスに閉じた(=部署のKGIを跨がない)、現場のマネージャレベルとのすり合わせで実行できる現場が喜ぶ内容ならば「改善」
業務プロセスを超える(=部署のKGIを跨ぐ)、上層部の意思決定が必要な内容ならば「改革」
とするならば、「改革」には「現場的には全然嬉しくない取り組み」が含まれる可能性があるのです。
抜本的な、「改革」的な取り組みであればあるほど、現場レベルではこの「現場的には全然嬉しくない取り組み」に目が行き、反発やネガティブな感情をもろにぶつけられます。
そしてそんなネガティブな反応を受けて、
「あんまりよくない案なんだな」
「まぁいいか」
と、せっかくの着想をなかったことにしてしまうのです。
探せ!経営思考の後ろ盾!
では、そんな反発を受けるOpsが「改革」に取り組むにはどうしたらいいか?
自分が矢面に立つからそういうことになるのです。
「現場メンバーでもなく、偉いわけでもないOpsの〇〇さん」が言うから反発されるのです。
そう、後ろ盾を見つけて担ぎ上げるんです。
まず、着想した内容に関係するステークホルダーを洗い出し、そのステークホルダーの思考のタイプを見極めます。
現場思考タイプ
近接する部署(営業ならISやCS)を考えつつ、自部署のKGI向上に思考が非常に強い思考。
自部署の定量化を好み、声が大きかったりもする。P/Lが好き。
経営思考タイプ
部署など関係なく、ボトルネックはどこか?を会社全体を俯瞰して、自部署の役割からできることを推進する人。
顧客のためや会社全体のためならば自部署にネガティブな要因を突き付けられたとしても何とかしていく人。B/Sが好き。
現場の方で経営的思考もいますし、経営のポジションにあって現場思考の方もいらっしゃいます。
※ちなみに現場は現場思考!経営は経営思考でなければいけない!と言う話では無いので、ご留意ください。
ステークホルダーとそれぞれの思考タイプを念頭に置いて、
今回の着想を実現するに当たって後ろ盾となってくれそうな、経営思考の人は誰か?
巻き込むべき相手を見定めます。
抜本的な「改革」であるほど現場思考タイプの人よりも、経営思考タイプの人の方が味方につけやすいのです。
後ろ盾を獲得したら、着想した改革に関するメッセージングなどはすべてその人から現場に発信してもらい、自分はあくまでその人の構想を実現する手足として立ち回ります。
「改善」だけではどこかで限界が来る
Opsの対峙するカウンターパートは、現場を知っている人であることが多いので、現場思考が強い傾向にあります。
よってOpsは部署を跨がない継続的な「改善」を実施していくことがベースとなります。
しかし、「改善」にはいつか限界が来ます。
焼き鳥屋のタレなら、継ぎ足し継ぎ足しの秘伝のタレで先代と変わらぬ美味しさを維持できるかもしれませんが、日進月歩変化し続ける企業の業務フローにおいてはそうはいかないのです。
一つの目安として
システム減価償却である3年~5年を超えた
部署を跨ぐ内容が増えて、コミュニケーションコストが増えた
各部署からの悲鳴が多くなる
(通常運用が滞るような、即対処が必要な案件が増加)バグや設計漏れが頻出し、対応に追われる
何かしら要望を受けて変更を加えるときの影響度合いがわからなくなる
といったことが出てくると「改善」ではなく、抜本的な「改革」が必要となってくるでしょう。
「改革」の邪魔になるサラリーマン的思考
経営の目線で、経営思考の人を巻き込んで横断的に行うのが「改革」である以上、「改革」を行うときにはOpsも経営思考を求められます。
しかし、経営思考を持つにはOpsの「サラリーマン的思考」が邪魔をしてくるのです。
サラリーマン的思考
今後のことを考え、現場に嫌われてまで、成果を出したいと思っていない。
失敗したときのリスク「あなたのせいですよね?」って言われたくない
安定した月給が入ってくる状況を鑑み、失敗しなければ減らないので、わざわざ面倒な「改革」をする意味が個人的に存在しない
これが現場から「改革」案が出てこない理由だし、「経営視点を持て!」と経営者が何度も口酸っぱく行っても伝わらない本質的な理由だと考えています。
そうは言ってもサラリーマン。
人事制度を変えるのはとんでもなくハードルが高い…
さあ…「改革」に乗り出すOpsになろう
ではOpsとして、改善者として信用を得て、その後「改革」していくことをが可能となるのか。
どのように個人としての打撃を最小限にとどめる受け身を取り、どのように「改革」の着想を実行に移すのか…
次回以降順次記事にしていきたいと思います。
次回は「事業会社におけるXOps(改善者)からBizOps(改革者)へ~まずは改善者になろう~」をテーマに記事を書く予定です。
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