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ようこそネオサイタマへ

ネオサイタマという街を知っているだろうか。ニンジャスレイヤーという物語における主要舞台、日本の中心たる街だ。

特徴を一言で語るならば、とても猥雑な街だ。

灰色のメガロシティの中で煌びやかに輝く卑猥で謎めいたネオン看板の数々。広告を垂らした大型飛行船(マグロツェッペリン)の飛び交う空。政府よりも企業(メガコーポ)の方が強い権力を有する世界である為、過剰消費を促進するコマーシャルが常日頃節操無く流れている。区画ごとの治安格差はおぞましい事になっており、悪い区画はとことん悪く気の狂った殺人鬼が横行している場合も多い。大気汚染も激しく、重金属酸性雨が当たり前のように降り注ぎ住人の身体を痛めつける。

金持ちもいれば貧民もいる。ヤクザもいればナードもいる。労働者もいれば浮浪者もいる。人間もいれば……当然、ニンジャもいる。


ニンジャという生物を知っているだろうか。それは普通の人間とは一線を画す恐怖の存在である。人間よりも優れた身体能力を持ち、風のように早く走り、繰り出すカラテ・パンチは文字通り必殺。出会い、戦いを挑まれればそれは死を意味する。まさにフィクションの怪物、悪の超人、怪獣、吸血鬼が如し者。だがニンジャは不死身の生物ではない。殺せば死ぬのだ。


ニンジャスレイヤーという男を知っているだろうか。妻子をニンジャに殺された残酷なる復讐者。家族を失ったその時から彼はニンジャとして、悪しきニンジャを殺すべく、日夜憎悪を燃やして戦っているのだ。このネオサイタマの街で。

「ウェルカム・トゥ・ネオサイタマ(ようこそネオサイタマへ)」

未だニンジャスレイヤーを知らないあなたに、自分はこのエピソードこそを最初にお勧めしたい。

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これまでのあらすじ

ニンジャスレイヤーは戦い続けた。ニンジャに生まれ変わったその日から、ずっと。傷だらけになりながら、ニンジャの敵に追われながらも、ニンジャを追い続けてきた。
敵は恐るべきニンジャ組織にして、妻子の仇たるニンジャを抱える「ソウカイ・シンジケート」。ネオサイタマの街を裏から支配し、犯罪と欲望の限りを尽くす悪の組織。ニンジャスレイヤーは組織の構成員を一人ひとり殺戮していき、一年以上にも渡る血みどろの戦いの末、ついには敵の首領「ラオモト・カン」の眼前まで辿り着いた。
連戦に次ぐ連戦で疲労しつつも、ニンジャスレイヤーは今までの戦いで培ってきた経験と、師匠から得た教え、そしてニンジャの身でありながら、人間であった頃の価値観、即ち「人間性」を保ち続けた事が力となり、ついに彼は、ラオモト・カンを倒した。


その3分後のエピソードが、このウェルカム・トゥ・ネオサイタマだ。


前述したニンジャスレイヤーの戦いのあらすじは、ニンジャスレイヤーの第1部に当たる物語である。ニンジャスレイヤーはこれから第2部へと続き、更に続いていく(現在でもだ)。

これまでに積み上げられたエピソード量は膨大なものだが、ニンジャスレイヤーは常に「どこから読み始めてもいい」と公言している作品でもある。世界観・時間軸にこそ連続性はあれど、その物語一つ一つは短編風に独立している傾向が強いからだ。だからこそこの記事内でもためらいなく、最も有名であろう第1部のあらすじを書いた形だ。

なので私は、第2部の第1話にあたるこのエピソードから読み始める事をお勧めしたかった。何故ならば、このエピソードは「カタログ」になるからだ。ニンジャスレイヤーとこれから付き合っていく上での、最初のフックとなる要素が多いと私は考えた。


好きな○○を選択してください

読んでみればわかる事だが、このエピソードは登場人物が非常に多く、またそのどれもが個性的だ。

ヒールとベビーフェイスの書き分けもわかりやすく、悪い奴はとことん悪そうにしているし、良い奴は本当に良い奴そうに動く。それぞれ所属する立場も明確になっていて、このキャラクターは何者なんだ?となる心配が薄い。

沢山のニンジャが登場したが、同時に多数の人間も登場していた事に気づいたであろう。ニンジャスレイヤーという作品はニンジャの存在と同じくらい、またはそれ以上に、ニンジャでない人間の存在も重要視される。言うなれば彼らは「怪物に立ち向かう人間」。古今東西の英雄譚が書き記す通り、物語における重要なファクターなのだ。

ニンジャという存在にも注目して欲しい。このエピソード内ですら、個々のニンジャの特徴はバラバラなのだ。特に目を引くのはコウモリのようなニンジャ、武士のような井出達の喋らないニンジャ、蚊のようなニンジャ、ゾンビのニンジャ、女子高生のニンジャあたりだろうか?

そう、この作品におけるニンジャの姿は、従来の頭巾に足袋、鎖帷子といったステレオタイプなニンジャ装束を纏ったものだけでは無い。読んだ者は一様に、己の中のニンジャという概念を疑い始めるであろう。このエピソードに出てくる登場人物ですらほんの一握りだ。他のエピソードに渡れば、更に際どく、より一層奇抜なニンジャが登場するのだから。

私自身が最もこのエピソードを好んだ点として挙げたいのが、このエピソードが持つ怒涛の勢いだ。

長きに渡る戦いに一つの決着が付き、だがしかし物語はまだ終わらない。一大決戦から僅か3分間で再開される新たな戦いの夜明け。巻き込まれていく登場人物。その大半は「何が起こっているのか」すら把握出来ぬまま翻弄されていく。最初のセクションに登場したソーンヴァインの存在はその象徴だ。

迫り来るニンジャの抱く巨大な陰謀、アイサツから始まる礼儀、血なまぐさいニンジャの戦い、ゾンビ、女子高生、カタナ、武装霊柩車、混沌渦巻くネオサイタマの街。

このエピソードを読み終えたあなたは刺激を受けたはずだ。ニンジャスレイヤーという作品が持つ多様な要素と、その可能性に。このエピソードを読み終えたあなたに、これから読んでいこうと決めたあなたに聞いてみたい。

あなたは、このエピソードに登場したキャラクター、設定、展開、どれに興味を抱いた?


もしキャラクターに興味を抱いたのならば、朗報が一つある。このエピソードに登場し、生存しているキャラクターは全て他のエピソードにて出番のあるキャラクターだ。安心してそのキャラクターの名前を検索し、登場するエピソードを読み進めていってほしい。

この第2部をそのまま読み進めていくのならば、ニンジャスレイヤーwikiなどにおける第2部時系列順のページなどがわかりやすいだろうか。


このエピソードは入り口であり、インフォメーションであり、カタログであり、チュートリアルであり、トレイラー映像であり、完成された一つのエピソードでもある。

ニンジャスレイヤーは何処から読み始めても良い作品。ここから読み始めてみても面白いはずだ。


ようこそネオサイタマへ。ニンジャスレイヤーはあなたを歓迎する。

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