アメリカンフットボールの素晴らしさがわからない日本死ね

Q. アメリカンフットボールと聞いてどんなことをイメージしますか?次の中から選んで下さい。

A
1.ガチムチマッチョの汗臭いヤローどもがぶつかり合う、なんかラグビーっぽいスポーツ。
2.マイク・キンセラ率いる伝説のエモ/ポストロックバンド。
3.世界最高のスポーツ。
4.よくわからない。

皆さんはどれを選んだだろうか。
答え合わせをしてみよう。

1を選んだあなた。わかります。が、先入観と無知で人生を損するタイプです。
2を選んだあなた。素晴らしい!音楽の趣味が合いそうですね!友だちになってください!
3を選んだあなた。正解です!友だちになってください!
4を選んだあなた。……4という数字から察してください。

いかがだっただろうか。
2や3を選んでくれた人が一人でもいてくれれば、私はそれで満足だ。

バンドのアメリカンフットボールについても語りたいのは山々であるが、今回はスポーツの方のアメリカンフットボールについて思う所を書きたい。

正直なところ、私はアメフト、特にNFLが好きだが、まだまだ歴の浅いニワカに過ぎない。真のアメフトファンからすれば、私のこと言うことなど、まだまだケツの青いガキの戯言のように感じるかもしれない。

だがしかし、私は大を声に、いや、声を大にして言いたいのだ。

「アメフトこそ、世界一面白いスポーツだ!」と。

念のためここで断っておくが、私はアメフトをプレーしたことはない。ただ観戦するのが好きなだけだ。特に現在、スーパーボウルを前にして現地では最高に盛り上がっているであろうNFL。死ぬまでに一度は生で見てみたいと本気で思っている。

もともと私は野球もサッカーも、観戦するのが好きだった。スポーツ観戦はいい。素晴らしいプレー、素晴らしい試合には、本当に感動させられる。

だが、アメフトに出会って、私は変わってしまった。野球もサッカーも、全く見れなくなってしまったのだ。

アメフトに比べれば、残念ながら野球もサッカーも児戯に等しい。こんなことを言えば、野球好き、サッカー好きからは怒られるかもしれない。だが、それほどアメフトは素晴らしくよくできたスポーツなのだ。

ではアメフトのどこがそれほど素晴らしいのか。

それはまず、アメフトは決してガチムチマッチョのスポーツではないということだ。

いや、もちろんアメフト選手は軒並みガタイがいい。それは当然だ。
彼らはアスリートなのだから。

だが、決してそれだけではない。
何よりも、アメフトは実に豊かな戦略に溢れている、知的なスポーツなのだ。

何百とある戦術の中から一つのパターンを選択し、11人のプレイヤーがそれを共有する。そしてそのパターンをまずは忠実に実行する。これがアメフトの基本だ。

だから選択されるであろう全ての戦術を、まずは理解していなければプレーが成り立たない。頭が悪い奴はアメフト選手にはなれないのだ。

そして選手一人一人はいろいろな専門に細分化されている。

攻撃チーム、守備チーム、スペシャルチーム。さらにその中で、攻撃チームの投手、投手を守る壁役、ボールを持って走る役、投手が投げたボールをキャッチしてボールを前に進める役、ボールを蹴ってゴールを決める選手などなど、一人ひとりがそれぞれの役割をしっかりこなすことが要求される。

特に投手はクォーターバック(QB)と呼ばれ、花形とされる。
QBというだけでモテる。それがアメリカだ。

だがアメフトはよくわからないという人もいるだろう。私もかつてはそうだった。だが、ボールを持った攻撃チーム、そのボールを追いかける守備チームにわかれて、チームで鬼ごっこをしていると考えると良いかもしれない。

ボールを持つ攻撃チームは、とにかく前(ゴールライン)を目指して、ボールを前に進める。ボールは前方に一度だけ投げてパスしてもいいし、持ったまま前方に走っても良い。ゴールラインまでボールを運べば、タッチダウン。6点(+1点or2点)が獲得できる。守備チームはそのボールを持つやつをとにかく止めるのが仕事だ。
攻撃チームには4回の攻撃権が与えられ、その間で10ヤード以上進めれば、もう一度4回の攻撃権が与えられる。守備チームは4回の間に10ヤード進ませないように守りきれば、攻撃権が移ってくる。だから、とにかくボールを持つやつを捕まえることが使命だ。
攻撃チームはボールをより前に進めることができる方が有利なのだから、なによりも前にパスを投げたい。守備側はそれを止めたいわけだから、とにかくQBを潰したい。攻撃側はQB潰されてはお終いだから、QBを守る。攻撃なのに、守りの選手がいるのだ。そして守備側なのに、より攻撃的に、相手を潰しに行く。

そして投げるばかりが脳じゃない。ボールを持って走ること=ランも重要な攻撃要素だ。パスほど一気に距離が稼げるわけではないが、距離を刻んで獲得できる。あるいは足が早く、守備側に捕まらないように走れる選手がいれば、一気に前に進むことだって可能だ。

攻撃側はその守備をいかにいなして、ボールを前に進めるか、というところで、戦術が多様化する。パス一つとっても、短いパス、長いパス、そしてパスを受け取るレシーバーの動きも様々だ。まっすぐ走るのか、斜めに走るのか、まっすぐ行くと見せかけて戻るのか。
さらにレシーバーの数を変えれば、無数のパターンが出来上がる。

ランもまたしかりだ。
左右、真ん中、相手の守備の穴を見つけて、大きな選手の間を、すり抜ける。あるいは大柄の選手が、壁をぶち破って進むこともある。

その作戦を選手たちは全て覚えていなければならない。

そして守備側は、相手の戦術を読み、いかに相手を進ませないかに心を砕く。
QBを襲い、ランニングバック(走る専門の選手)を潰し、レシーバーへのパスをブロックする。

あるいは、攻撃がうまくいかない時、次の相手の攻撃が有利にならないように、4回目の攻撃ではパントといって、ボールを蹴って遠くに飛ばし、相手の攻撃開始地点をよりゴールから遠ざけるということも行われる。あるいはゴールポストめがけてボールを蹴って、3点を獲得できるプレーもある。

パントを蹴る選手をパンター、ゴールキックを蹴る選手をキッカーといい、これも選手が違っていたりする。実にニッチなプレイヤーだが、このパント一つで試合展開が変わることもあるし、3点のゴールで試合結果が左右されることも多々ある。

ガチなアスリートたちの競い合いはもちろん、戦術と戦術のぶつかり合い、読み合いが最高に面白いのだ。

攻撃チームの美しくデザインされた戦術がハマった時、見ている側も最高に興奮する。デザインから外れても、その場の判断で変化したプレーがビックプレーとなった時もまた興奮する。

攻撃が上手くいかないときだってある。
だがそれは守備が素晴らしいのだ。
守備が光るからこそ、攻撃が停滞する。
そのいぶし銀の守備にもまた、興奮せざるをえない。

試合時間の使い方、タイムマネジメントもすごい。
いかに自分たちに有利に試合を進められるか、時間の管理すらきっちりと行われるのがアメフトのすごいところの一つだ。
このタイムマネジメント次第では、一見すると負けのような試合でも、最後にひっくり返ることだってあるのだ。

いろいろ書いたが、まだまだ語り尽くせない。
それほどアメフトは、エキサイティングなプレーに満ちているのだ。
どのプレーにも一瞬たりとも目が離せない。
こんなスポーツが、他にあるだろうか!?

特にNFLはアメリカのアスリートの粋のような選手が集まっていて、そのプレーの質は言うまでもなく最高だ。そこに、実に豊かな戦術が加味され、試合が進んでいく。

選手のパフォーマンスも、タクティクスも、これほど優れているにも関わらず、日本ではあまりこのアメリカンフットボールというスポーツの素晴らしさが伝わっていないのは、本当に歯がゆいことこの上ない。

そんなにアメフトが好きならアメリカに行けばいいと思う人もいるだろう。他人を変えるよりも、自分が変わるほうが簡単だ、と。

そんなことは百も承知だ。
それでも、私は多くの人にこのアメフトの素晴らしさを知ってほしいと思っている。だからこそ、こんなクソみたいな文章を書いているのだ。

この2月4日、日本時間では5日の午前8時から、今年の優勝チームを決めるスーパーボウルが開催される。

悪いことは言わない。仕事を休んででも、この試合だけは見るべきだ。

私はこの日のために有給を使う。
有給を使うのだ。

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