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「デスストランディング」考察その9:ヒト・クジラ戦争説#3

実際のところ「デス・ストランディング」の世界観が一筋縄ではいかないということは、だいぶわかって来たんじゃないか?

そしてもしかすると、あのBTの存在やボイド・アウトのような現象が、クジラの死生観を反映したもの、つまり彼らのDOOMS能力によるものじゃないかということもだ。

ただ本当にクジラたちが意志を持って人に戦争を仕掛けている、という考えには未だ懐疑的かもしれないね。そんなシナリオは荒唐無稽だし、第一そうするだけの理由がわからない、ゲーム中にも描かれていない。

もちろん僕自身もこの説が完全に正解だと自信をもって言えるわけじゃないけれど、少なくともそうだと考えられるくらいには、理由を考えてきたつもりだ。

まずこの「デス・ストランディング」の物語では、第六の大量絶滅期が起こりつつあるということが背景にある。

古生物学者に関するドキュメント。
この中にも現代が第六の絶滅期ではないかという説は語られている。もっともその主張する部分には、今の我々には眉唾と思えるような主張も含まれるが……。

以前の記事ではDS現象そのものと、この大量絶滅との関係は薄いと語ったかもしれない。しかしそれはあくまでDSによる人類絶滅という現象が、大量絶滅という概念における影響が薄いということである。

物語の背景としてはDS期前後で多くの動植物が絶滅したことが語られ、そうした動物の化石やサンプルを運ぶという依頼も存在する。つまり物語内の事実としては、多くの生物の絶滅という現象は起きていた訳である。

しかし実はこの第六の大量絶滅期という現象は、現実にも起きているのではないかと言われている。

まさかと考える人もいるだろうし、大量絶滅という現象の観測をどのように定義するかということでも、その意見は大きく左右されるだろう。ただしそうした動植物の絶滅の件数は毎年のように計上され、実際に半世紀ほどその動物が発見されないという観測からも、またある地域での環境変化による生物圏の消滅というような事からも、それは事実だと考えられている。

いったい地球上で、どのようなことが起きているのか。

おそらく現在の大量絶滅期は、おおよそ100年ほど前から起こったと推測される。

おおよそのあたりの時代から、あるいはさらにもっと以前の時代から加速度的に、地球上の様々な森林地帯で突如としてほとんどの植物が死滅し始めた。同時にそうした森林環境に擁されていた生物群も消滅したものの、なぜか遺伝子的に非常に限定された特定の種類の植物ばかりが大量に繁殖を繰りかえすという現象がいくつも起こった。

また山間部や高知などで、突然特定の鉱物を含む地層まで穴が開き、付近の下流水域へ鉱毒が流れ始めたり、その水脈のph値が変化してしまうという現象も頻発し始めた。特定の動物種が突然生活圏を追われたり、その場で捕食されたわけではなく、大量に連れ去られるということも起こった。

さらに大河のような大きな河川の沿岸部の環境が急速に変わりはじめ、そうした付近ではある時期、突如爆発現象が頻発した。また毒性を持つ物質が含有するスモッグが広がったり、ph値の偏った雨が降り始めた。

近年では世界各地の沿岸部で巨大な金属の構造物が座礁して付近へタール状の鉱油が広がるなど、不可解な現象は増えていった。

キャピタル・ノットシティ付近の死体焼却場。
この世界では死体を焼却するさいに多くのカイラル物質が煙に乗り、DS現象を活性化させるカイラル汚染が広がってしまう。したがって都市の近くにこのような施設を作ることは不合理だが、同時に人間の集落という脆い膜の内側を保護するためには、つねに壊死した細胞を外側へ運びその新陳代謝を活性させ続ける必要がある。
このDS以前の時代から、我々はこうした社会を守るための廃棄や、資源の発掘を常に行ってきた。

まったく自然の動物たちからして、これらの現象を予測や対処することは不可能に近かったと思われる。それまでの生物としての歴史をさかのぼってみても、また突然変異などの生化学的な変化を期待しても、これらに対処する手立てはなかったはずだ。

基本的には「デス・ストランディング」の世界の歴史も現実のそれに準じており、これらの歴史も当てはまるものと考えてもいいだろう。過去五回の大量絶滅に比類するこれらの現象が、それらと全く違う要因によって起こっていたということは、この作品を考えるうえで考慮に入れていい事実のはずだ。

ただしこのゲームの世界で違ったことは、こうした生物の死や誕生そして絶滅。そのようなある境界を生物の魂がこえようとするとき、ビーチを介して特異な現象が起こりうるということだ。

そしておそらく絶滅に瀕したそうした種の中に、ある特別な能力を持つ存在があらわれはじめる。

三葉虫、アンモナイト、恐竜。
彼らは結局絶滅してしまったが、どうやら臍のを持つ個体があらわれはじめ、彼らのビーチと繋がっていた。DS時代の他の生き物の中にも、こうした種があらわれているだろう、というのはおかしな推測ではないはずだ。

あらゆる生き物の中で死というものを理解するほどの知能を持ち、またその誕生をむかえる胎児に対してもコミュニケーションを行える種族が存在した。彼らは二度もビーチを越えて進化した種族であり、また自身も絶滅に瀕していた。

彼らはこの地球規模の絶滅期のおそらくかなり初期のあたり、おおよそ100年以前から、絶滅体やDOOMS能力に目覚めたはずだ。そして彼らは彼らの絶滅の原因をビーチによって探ろうと幾度も幾度もそれに挑み、その原因を見つけ出した。

第一次世界大戦の戦場のビーチに座礁したハクジラたち。
これらの背景オブジェクトは、あくまでこのシーンのテーマをふくませるメタファーだと考えられるだろうが、今回この考察においては率直な解釈を選択する。彼らは少なくともサムがこうして訪れる以前からこの戦場のビーチのたどり着いており、それにより人間という種族を学習したはずだ。ビーチの向こうの存在が何を行って、どのように世界を変えてしまったのかを。

これがおそらく「デス・ストランディング」ゲームの本編前に起こっていた、DSの真相だろう。

おそらく彼らはそのビーチの奥深くに繋がったことで、彼らにとってのビーチの外からくる存在(Beached Things)について知った。そして彼らは彼らのBTから学び、自分たちがどのようにそれに対処すべきかを考え出した。

戦争、爆発、縄や棒と言った道具。それらを学び、そしてそれらを駆使してでもこの世界を急速に変えてしまった存在をどうにかしない限り、彼らの種族に未来はないと知ったのである。

だから彼らは”ビーチ”へとつながる能力によって自らの絶滅を防ぎ、そして進化しようとしていたんだ。

 300年前,ホッブズやルソー, ロックらの近代思想家が, 社会契約という概念を発明した. <中略> 
 このようにして生命史を概観すると, 内部と外部を分離する【膜】と, 小自由度で大自由度を制御する【核】が, 繰り返し登場していることがわかる. 最初は単に単細胞レベルで, そして多細胞レベル, 他者レベル, 社会レベルと, この構造は反復的に起きている.

鈴木 健「なめらかな社会とその敵」

2022/12/20

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