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SSTR2020

#SSTR というイベントがある。
 もし君が興味があるのなら、詳しくは調べて見て欲しい。ここでそれがどんなルールで、どんなイベントなのか?なんて書いていったら多くの文章をそれに割く事になってしまうからね。

 だから今回はその魅力や、僕らが参加した事について書いてみたいんだ。
それでも大事な事だからひとつだけ言うと、太平洋で朝陽を見て、その日のうちに日本海で夕陽を見る #オートバイ のイベントなんだ。

 10月28日、僕は仲間達と茅ヶ崎のサザンビーチに朝5時30分に待ち合わせ、その場所で朝陽が上がるのを待っていた。
ところで朝陽が上がって行くのを君は見つめた事があるかい?

 あの、漆黒の闇がまるで絵の具が混じるように溶け出して、オレンジ色や青が混ざり合い、白んで行く美しい風景は、地球の自転速度がいかに速いか?を意識させてくれる。
さぁ、これから太陽と追いかけっこをするんだ、なんて考えて眺めていると、そのあまりの速さに愕然としてしまうんだ。

 片道500kmの旅路の終着点は、このイベントの約束の場所である石川県の #千里浜  だ。
太陽に追い越されないように、僕らは身支度を整えて急いで出発した。
 ラリーだからこそ、それぞれが自由に設定したルートを走り、チェックポイントをクリアして行かなければならない。
500kmなんて簡単に着くじゃないか?なんて思う人もいるかもしれない。
 だけど考えてみて欲しい。
 僕らは茅ヶ崎から圏央道に乗り、中央道に入り、談合坂SAで1ポイント、諏訪湖SAで1ポイント、松本で一般道に降り、そこから道の駅風穴の里で2ポイント、道の駅ななもり清美で2ポイント、そして厄介なのは最低一つ、各都道府県に一つ設置された道の駅を回らなければならない。
僕らはそれを道の駅上平に設定し、その後、ノルマである10ポイントを達成する為に、道の駅高松に寄り、千里浜にゴールする行程だ。
 確かにただそれだけの為に走るレースならば、体力があれば簡単な事だろう。
だが、朝6時から日没の17時まではおよそ11時間しか時間がない。
 余裕を持ってゴールするには16時に到着する予定をたて行動するのだから、だいたい10時間でポイントを制覇しつつ行かなければならない。
そこには渋滞もあるかもしれないし、トラブルもあるかもしれない。
 メンバーの中にはそれほど長い距離に不慣れな人もいるのだから、1人で走るよりも更に困難になっていく。
 まだ開けたばかりの空の下、走っていると寒く冷たい風の中、どんどん高度が上がり、気温が落ちて行くのを肌で感じる。
 諏訪SAに着いたのは8時56分。
 気温は一桁になっていた。
 松本で降り、道の駅風穴の里に着いたのは10時21分だった。
 この辺りからやはり焦りを感じはじめる。
 景色は赤や黄色の極彩色に染まった葉が山々の色を圧倒し、流れる川も落ちる滝の美しさも、アクセルを緩めてのんびりと走りたくなる衝動に駆られるのは必然で、僕らだけではなく、それは前を走る無関係な車の速度にも影響しはじめる。
 これだけの人数で走っているのだから、追い越しなど出来るはずもなく、良く言えば美しい #紅葉 を堪能しながら走ったとも言えるが、心のどこかでは焦りを感じはじめていた。
 通常の開催は5月の後半であり、日の出は1時間も早く、日の入りは2時間も遅い。
新型コロナの影響で、開催時期と期間が変わり、3時間も時間を失ってしまっているのだからのんびりはしていられない。
 安房峠を越える頃には心配した寒さは太陽の暖かさで緩和され、飛騨高山へと向かうにつれ、寒さを感じなくなってきていた。
 僕はこのイベントをレースや何かだとは捉えてはいない。確かに例えば九州の佐田岬や、青森の港から出たり、ポイント数を無限に稼ごうと思えばそれはそれで素晴らしい達成感を味わえる本物のラリーにもなるだろう。
 このイベントを走る「理由」と捉えている。
 通年通りならば数千のライダーが同じ日にゴールするし、その賑わいや、SNSで知り合ったまだ顔を合わせた事もないライダーや、しばらくぶりの他府県で知り合ったライダーと再会出来るイベントで、今回はそうはならないのだが代わりに今回の仲間と初めて泊まりがけでツーリングに行く良い理由になった。
 だが、それも #ツーリング リーダーとして、皆を安全に無理なく時間内にゴールへと導いて行く事が出来て初めて完成する僕らなりのイベントだ。
 相棒の #R1200GS アドベンチャーはそんな旅に最適で、風や振動などの体力を奪う全てを軽減してくれる。
 僕は今年の春先大きな病気を患い、未だに薬漬けと通院の日々で、距離としては夏の北海道で自信を付けたが、後ろを気にしながら走る先導役を通すには僅かな不安もあった。
車線変更をするには最後尾から順に入り、その指示を出し、合流では隊列が途切れないようなタイミングをよく見て、指示を出さなければならない。
そしてタイムスケジュールとルートをトレースして運行する訳だから最後尾には気心知れたお願いし易い仲間に頼んでいる。
 彼は実際おもう以上によくやってくれた。
 とにかく僕らは次々とポイントを取り、最後の道の駅高松まで来る頃にはゴール可能な時間、つまりなんとか先が見える状況になっていた。
 そこで最後の1人の仲間と合流し、一緒にゴールする事が出来た。


 千里浜は唯一日本で砂浜を様々な車両が通行出来る道路だ。その道を走るとまさにバハカリフォルニアや、パリダカールのような砂漠を走るような、そんな高揚感を感じる。

 また来れたよ。
 またこの景色に会えたよ。
 太陽に追い越される事もなく、太平洋で見た朝陽を、日本海で観ることが出来たよ。


 去年は #R9T アーバンGSが相棒だった。
 このようなゴールポストがあり、会場も盛り上がってはいたが、今回はそれもなく寂しくもあったが、この仲間と、この千里浜に来れた事が嬉しい。
 サンライズサンセットツーリング
 それは参加者それぞれのテーマや、理由があり、それを反映して誰もが楽しめる素晴らしいものだ。
 また来年もここに来るよ。
 そして来年はまた、多くのバイク乗り達と同じ太陽を同じ時間に追いかけたい。
そしてまだ見ぬこれを読んでくれた仲間達と喜びを分かち合いたい。


 後何年この愛おしくも無機質でいて心のある生きた機械に乗れるだろうか?電光石火に過ぎゆく時間軸は、走行中、写真など撮る事もなく流れてゆく美しい紅葉や風景のようで、それでも僕らは常にそれらを心に焼き付けて走り去って行く。
 ほんの少しだけ立ち止まって見たに過ぎないゴールの夕陽は、やはり僕らが茅ヶ崎で見た朝陽のようにあまりにも早い速度で水平線に吸い込まれて行き、それから空を、周囲を、漆黒に染めあげてゆく。

 心に刻んで行く想いやこの景色は、このイベントに参加した全ての人と共有出来るだろう。
 その意味や走る理由はそれぞれで、来た道も帰る道も異なるし、あるいは同じ景色もこの千里浜の夕陽だけなのかもしれない。

 だが、常にぼくらは同じ太陽を背にして走り続けていたのだ。
 また走ろう。
 また来よう、この約束の場所に。


#SSTR2020 完走。
See you next time ByeBye

そんな事より聞いてくれ。 君の親指が今、何かしでかそうとしているのなら、それは多分大間違いだ。きっとそれは他の人と勘違いしているに違いない。 今すぐ確認する事をお勧めするよ。 だって君と僕は友達だろ?もし、そうなら1通の手紙をくれないか?とても綺麗な押花を添えて。