【宅建試験を通して学ぶ】地価公示法

概要

宅建試験ではあまり比重が大きくない地価公示法ですが、知っておくと生活には非常に役立つので簡単に解説しておきます。
「地価」なのでその字のごとく、「土地の価格」と言うことですが、この法令のポイントはおよそ全ての土地に関する価格を定めているわけではない、と言うことです。なぜなら、この法律の目的は、

第一条 この法律は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。

と決まっており、あくまで「一般の土地の取引価格」に主眼があります。マニアックな土地=市場流通性の低い土地は買い手も限定されるのでお互いの合意の下で独特の基準で価格を決めれば良い。具体的には、

第二条 土地鑑定委員会は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第十二条第一項の規定により指定された規制区域を除く。以下「公示区域」という。)内の標準地について、毎年一回、国土交通省令で定めるところにより、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行つて、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。

とあり、基本的には土地計画区域などの「土地取引が相応程度見込まれ区域」に限定されています。

国土交通省のHPには「標準地・基準地検索システム」というリンクがあり、ここで各々の土地の地価を調べることが出来ます。一度見ておくとイメージが掴みやすいと思います。
http://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=0&TYP=0

宅建試験に関して言えば、細かい点は択一問題をこなしながら覚えていけば十分だと思います。

一つだけ、この法律には「規準」(基準ではなく)という独特の概念があるので、それだけ押さえておきたいところ。一一条です。

第十一条 前三条の場合において、公示価格を規準とするとは、対象土地の価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして成立すると認められる価格)を求めるに際して、当該対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一又は二以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行ない、その結果に基づき、当該標準地の公示価格と当該対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。

要は、出来る限り価格算定に客観性を持たせるために、比較を行いなさい、ということ。

択一問題から

問1:標準値の正常な価格とは、土地について自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格をいい、当該土地に地上権がある場合には、その地上権が存するものとして通常成立すると認められる価格を言う。

答:「×」。後半が違い、「地上権が存しない」として成立する価格が正解。地上権や賃借権等の土地の利用を制限する権利は当事者間で勝手に決められるわけです。もちろん、そうした権利が付いていると実際の価格には影響するとは思いますが、公示価格とは国が示す一定のガイドラインなので、そんな当事者間の変化し得る事情を一つ一つ考慮するわけがありません。

問2:地価公示は、土地鑑定委員会が、毎年1回、2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、標準地の正常な価格を判定し、公示する。

答:「○」。そのままです。1月1日を基準日として、例年新しい決算期が始まる4月の前=3月下旬に発表されます。

問3:公示区域内の土地を対象とする鑑定評価においては、公示価格を規準とする必要があり、その際には、当該対象土地に最も近接する標準地との比較を行う必要がある。

答:「×」。ひっかけです。「規準とする」のは価格の決定に妥当性を見出すために他の事例と比較することでした。角部屋とそうでない部屋の価格が同じでない様に、その価値は距離では決まりません。「最も近接する」かどうかは関係ありません。

問4:地価公示の標準地は、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が最も優れていると認められる一団の土地について選定するものとする。

答:「×」。ガイドラインを示すだけですから「最も優れている」必要はありません。「通常」で十分です。

問5:土地の取引を行う者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行わなければならない。

答:「×」。問1を振り返りましょう。地上権等の権利が付いていても、公示地価上はあくまでガイドラインなので、それは無いものとして計算がされるのでした。と言うことで、取引を「行わなければならない」ほどに力の強いものではないことが分かると思います。あくまで指標とするのは努力義務で、その後の実際の価格決定は当事者間に委ねられています。

問6:公示区域とは、土地鑑定委員会が都市計画法第4条第2項に規定する都市計画区域内において定める区域である。

答:「×」。都市計画区域以外でも住宅地等、一定の取引が見込まれる地域には地価が付きます。国土交通省は毎年地価動向に関する発表をしており、三大都市圏と地方圏に分けて地価の動向を分析しているので一度ざっと読んでおくとイメージしやすいと思います。

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